ロート製薬株式会社のプレスリリース
ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:瀬木英俊)は、お客様が日常的に感じる髪悩みに寄り添い、毛髪内部構造に着目したヘアケア研究を進めています。今回の研究では、「うねり戻り※」に着目し、3GeV高輝度放射光施設NanoTerasu(以下、ナノテラス)で毛髪内部構造を解析しました。その結果、日光照射により毛髪内部のCMC(細胞膜複合体)を含む脂質構造にダメージが生じ(以下、CMCダメージ)、さらに高湿度下で「うねり戻り※」が起こりやすくなることを確認しました。また、スキンケア領域で培ってきたヒアルロン酸研究の知見をもとに素材探索を進める中で、ヒアルロン酸カリウムが日光によるCMCダメージを防ぎ、高湿度下での「うねり戻り」抑制に寄与することを見出しました。この研究成果は、日光や湿度といった日常環境下で起こる髪悩みに対し、毛髪内部から髪のまとまりや質感にアプローチする新たな「質感コントロール」発想につながるものです。今後、この成果をヘアケア製品の研究開発に活かしてまいります。
※朝整えた髪が時間の経過とともに再びうねること

■研究成果のポイント
l 「うねり戻り」研究の新視点。日光による毛髪内部構造の変化を確認。
l 日光照射によりCMC(細胞膜複合体)を含む脂質構造が損なわれ、高湿度環境下で「うねり戻り」が生じやすくなることを確認。
l ヒアルロン酸カリウムが、日光によるCMCダメージを防ぎ、高湿度下での「うねり戻り」を抑制することを確認。
■研究の背景
朝整えた髪が、時間の経過とともに再びうねる「うねり戻り」は、多くのお客様が実感する髪悩みのひとつです。見た目の変化にとどまらず、髪のまとまりにくさやスタイリング維持の難しさにもつながる課題です。これまで、うねり髪に関する研究や、それを整えるためのヘアケア技術の開発は進められてきましたが、日中に再発するうねりの発生要因については、毛髪内部構造の観点から十分に整理されていませんでした。そこで本研究では、日光と湿度の影響に着目し、日光が毛髪内部構造に及ぼす影響、その変化と高湿度下での「うねり戻り」との関係、それらに有効に働く素材の探索を進めました。その中で、スキンケア領域で培ってきたヒアルロン酸研究の知見やお客様から寄せられた声も手がかりに、毛髪への応用可能性を評価しました。
■結果
1.日光照射により、IFではなくCMCに変化が見られることを確認
ナノテラスにて、放射光X線散乱測定を行い日光照射前後の毛髪内部構造を比較解析しました。SAXS(小角X線散乱)では、IF繊維(中間径フィラメント)のような大きなタンパク構造への顕著な変化は認められませんでした。一方、WAXS(広角X線散乱)では、CMCの脂質構造に由来するピークが日光照射後に消失し、日光照射によりCMCを含む脂質構造が損なわれることが確認されました(図1)。


2.日光ダメージを受けた毛髪は、高湿度下で「うねり戻り」が生じやすいことを確認
CMCは、毛髪内の水分移動を制御する重要な脂質構造です。日光照射の有無で毛束を比較し、高湿度条件下に静置したところ、日光照射毛束では非照射毛束と比べて、より強いうねり・広がりが確認されました(図2)。これは、日光照射によりCMCを含む脂質構造が損なわれることで毛髪内の水分バランスが乱れ、高湿度環境下で毛髪が膨らみやすくなるためと考えられます。


3.ヒアルロン酸カリウムが、日光によるCMCダメージを防ぎ、高湿度下での「うねり戻り」を抑制
日中の「うねり戻り」を抑制する有効な素材を探索するため、多種多様なヒアルロン酸を比較評価した結果、ヒアルロン酸カリウムを有効な素材として見出しました。
日光照射によりCMCを含む脂質構造が損なわれた毛髪は、高湿度環境下においてうねりや広がりが生じやすくなることがわかりました。本研究では、ヒアルロン酸カリウムを用いることで、日光によるCMCダメージが抑えられ、高湿度条件下においても「うねり戻り」が抑制されることを確認しました(図3、図4)。さらに、ヒアルロン酸カリウムのダメージ毛への浸透性と毛髪の硬さへの影響を評価しました(図5、図6)。その結果、ヒアルロン酸カリウムを処理した毛髪では、日光照射による毛髪の硬化が抑えられることが示されました。








■考察
今回の研究では、日光照射によるIF繊維の顕著な変化は認められなかった一方で、CMCを含む脂質構造に変化が見られました。この結果から、日中の「うねり戻り」には、日光によるCMCダメージと、その後の高湿度環境が関与する可能性が考えられます。さらに、ヒアルロン酸カリウムは日光によるCMCダメージを防ぎ、高湿度下での「うねり戻り」を抑制することが確認されました。本成果は、朝整えた髪のまとまりが日中に崩れてしまう「うねり戻り」に対し、表面を整えるだけでなく、毛髪内部構造に着目して髪のまとまりや質感にアプローチする、新たな「質感コントロール」発想につながるものです。
■今後の展望
今回の研究成果は、日光と湿度という日常環境の中で起こる毛髪変化に対し、毛髪内部構造からアプローチする新たな可能性を示すものです。今後は、ヒアルロン酸カリウムを活用した毛髪内部からの「質感コントロール」技術の研究をさらに深め、処方設計や製品開発への応用を目指します。スキンケア領域で培ってきた知見と毛髪研究を掛け合わせながら、お客様の実感に寄り添うヘアケア技術の研究開発に取り組んでまいります。
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用語説明
①CMC(細胞膜複合体)
毛髪細胞同士の間に存在する脂質構造です。毛髪内の水分移動や構造維持に重要な役割を担います。
②IF(中間径フィラメント)繊維
毛髪内部の大部分を占めるタンパク構造です。毛髪の形状や強度に関わる構造です。
③NanoTerasu
3GeV高輝度放射光施設です。高輝度の放射光を用いて物質の内部構造を高精度に解析でき、本研究では毛髪内部構造の解析に用いました。

④ヒアルロン酸カリウム(HA-K)
ヒアルロン酸の一種です。本研究では、日光によるCMCダメージの防御や、高湿度下での「うねり戻り」抑制との関係を評価した素材です。

