「納豆」摂取習慣と、高齢者の軽度認知障害・うつ傾向の少なさとの関連を確認

       ~鹿児島県垂水市の健康チェックデータを解析した共同研究~

株式会社Mizkan Holdingsのプレスリリース

 株式会社 Mizkan Holdingsグループイノベーションセンター(愛知県半田市、以下ミツカン グループイノベーションセンター)は、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科心臓血管・高血圧内科学分野 大石充教授との共同研究により、鹿児島県垂水市で実施された健康チェックデータ※1を解析し、週に2~3回以上の納豆摂取習慣がある高齢者では、軽度認知障害およびうつ傾向が少ない傾向にあることを明らかにしました。

※1 健康チェックデータ :「健康寿命の延伸」等を目的に、2017 年度から 40 歳以上の方々を対象に垂水市で実施されているデータ。https://www.city.tarumizu.lg.jp/kenko/kurashi/genkipro/index.html

 軽度認知障害は、認知症の前段階とされる状態であり、高齢期の認知機能を維持する上で重要な課題です。

また、うつ傾向は生活の質の低下に加え、認知機能や心血管疾患との関連も指摘されています。今回の研究成果は、身近な発酵食品である納豆の摂取習慣が、高齢者の認知機能やこころの健康に有益な影響を与える可能性があることを示唆するものです。

 なお、本研究は2019年度単年のデータを用いた横断研究であり、納豆摂取が軽度認知障害やうつ傾向を予防することを直接示すものではありません。今後、縦断研究や介入試験を通じて、納豆摂取と認知機能・精神的健康との関係をさらに検証していく研究成果がまたれます。

研究のポイント

1)65歳以上の高齢者616名の健康チェックデータを解析

 鹿児島県垂水市で実施された健康チェックデータを用いて、納豆摂取習慣と軽度認知障害・うつ傾向との関連を調べました。

2)週に2~3回以上の納豆摂取習慣がある人では、軽度認知障害とうつ傾向が少ない傾向

 納豆を週に2~3回以上食べる習慣がある高齢者では、軽度認知障害およびうつ傾向との間に負の関連が認められました。

3)年齢・性別・教育歴・身体フレイル※2・他の大豆製品摂取(豆腐や厚揚げ、味噌汁)などを考慮しても負の関連を確認

 認知機能やうつ傾向に影響する可能性がある複数要因を調整した解析でも、納豆摂取習慣と負の関連が確認されました。

※2 身体フレイル:加齢に伴って筋力や体力、活動量などが低下し、健康な状態と要介護状態の中間にある状態

4)今後の縦断研究・介入試験による検証が期待される結果

  本研究は2019年単年の横断研究であるため、因果関係の解明には、今後縦断研究や介入試験を通じた、納豆摂取と認知機能・精神的健康との関係を検証する、さらなる研究が必要です。

研究の背景

 高齢化が進む日本では、認知機能の維持やこころの健康を支える生活習慣への関心が高まっています。軽度認知障害は、認知機能の低下がみられるものの、日常生活への影響は比較的小さく、認知症の前段階とされる状態です。また、うつは精神的な負担だけでなく、認知機能の低下や心血管疾患などとの関連も指摘されています。

 日本で古くから親しまれている身近な発酵食品である「納豆」について、これまでにも、認知機能との関連を調べた研究はありますが、結果に一貫性がない部分がありました。また、納豆とうつ傾向との関連を調べた研究は、対象が妊婦に限られていました。

 そこで本研究では、鹿児島県垂水市で実施されている健康チェックデータを詳細に解析し、高齢者における納豆摂取習慣と、軽度認知障害およびうつ傾向との関連を検証しました。

大石充教授のコメント

 高齢社会の今日では認知機能障害と初老期うつ症は人生の質(QOL)に大きな影響を与える問題だと思います。医師としても認知機能とうつはデリケートな問題で、患者さんにテストをすることすらままならない現状です。そこで納豆を摂取するだけで軽度認知機能障害やうつを予防することができれば、これほどありがたいことはありません。もちろんメカニズム解析や介入研究で、本当に納豆が精神的健康に関与するのかを証明する必要がありますが、納豆は身体機能にも良いことは以前より示されているので、毎日の納豆摂取習慣で心身ともに健やかになることを期待しております。

<大石充教授プロフィール>

1990年大阪大医学部卒業、2007年同大医学系研究科講師、2013年から鹿児島大学大学院医歯学総合研究科心臓血管・高血圧内科学分野教授を務める。医師への高血圧治療の指導を行う循環器内科のスペシャリストであり、地域医療の底上げに尽力。2017年からは垂水スーパーバイザーに就任し、多職種によるチーム医療コホート研究を推進。さらに、産学行連携の共同研究体制を強化し、長期的な情報発信を目指している。

今後の展望

 今回の解析の結果、納豆摂取習慣は、高齢者の認知機能や精神的健康と関連している可能性が示唆されましたが、本研究は横断研究であるため、納豆摂取が軽度認知障害やうつ傾向を予防することを直接示すものではなく、今後、更なる縦断研究や介入試験を通じた検証がまたれます。

 ミツカン グループイノベーションセンターでは、これからも「人と社会と地球の健康」に貢献するため、納豆の新しい健康効果についての研究を続けていきます。

研究成果の詳細

■解析対象者
2019年※3に垂水市の健康チェックに参加した65歳以上の高齢者616名

※3 健康チェックは2017年度に開始され、2018年度以降本格実施されています。本研究では、解析時点で利用可能であったデータのうち、COVID-19流行の影響や、年齢構成の偏りが小さく、対象者数が比較的多い、2019年度データを用いました。

■研究方法

・「軽度認知障害」「うつ傾向」を目的変数とし、「週に2~3回以上の納豆摂取習慣の有無」に加えて、「年齢」、「性別」、「教育歴」、「独居」、「薬歴」、「身体フレイル」、「豆腐・厚揚げ摂取習慣あり(週に2~3回以上)」、「味噌汁摂取習慣あり(週に2回以上)」、「食事の多様性」を説明変数とする、多変量ロジスティック回帰分析を行いました。

・「軽度認知障害」は国立老年医学研究センターの機能評価ツールである、NCGG-FATを使用して判定しました。

・本研究では、年齢や教育歴による点数の違いを考慮し、複数の認知機能テストのうち1つ以上で、同年代・同程度の教育歴の人の平均より1.5標準偏差以上低い成績だった場合に、「軽度認知障害あり」と判定しました。

・「うつ傾向」は老年期抑うつ尺度を用いて評価し、本研究では5点以上の被験者をうつ傾向ありと定義しました。

■研究結果

・616名の参加者のうち、軽度認知障害の方は133人 (21.6%) 、うつ傾向の方は 125人 (20.3%)でした。また、週に2~3回以上の納豆摂取習慣がある方は351人(57.0%)でした。

・ロジスティック回帰分析の結果、週に2~3回以上の納豆摂取習慣は、「年齢」、「性別」、「教育歴」、「独居」、「薬歴」、「身体フレイル」、「豆腐・厚揚げ摂取習慣あり(週に2~3回以上)」、「味噌汁摂取習慣あり(週に2回以上)」、「食事の多様性」で調整後も、軽度認知障害と有意な負の関連性がありました([OR] :0.63, 95%CI;0.42-0.95, p=0.025)。また、納豆摂取習慣はうつ傾向に関しても調整後も有意な負の関連性がありました([OR] :0.63, 95%CI;0.41-0.97, p=0.037)。

■研究結果オッズ比図 

・図中の数字はオッズ比を表しています。
・オッズ比は、結果(本研究では軽度認知障害とうつ傾向)の起こりやすさがどのくらい違うかを表す数字です。
・オッズ比が1の場合、結果の起こりやすさが全く同じことを意味します。オッズ比が1より大きい場合、結果が起こりやすいことを示します。1より小さい場合、結果が起こりにくいことを示します。
・いずれの場合も、1より離れるほど、関連が強いことを示しています。

■出典情報

論文タイトル:

Habitual natto consumption is inversely associated with mild cognitive  impairment and

depressive symptoms in older Japanese adults: A cross-sectional study

著者: Yuki Araki, Shin Kawasoe, Takuro Kubozono, Joto Yoshimoto, Mikiya Kishi,

    Satoko Suzuki, Hyuma Makizako, Mitsuru Ohishi

掲載誌: Nutrition Research  

DOI:10.1016/j.nutres.2026.04.009

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