第62回日本循環器病予防学会学術集会 ランチョンセミナーにて発表
大塚製薬株式会社のプレスリリース
大塚製薬株式会社(本社:東京都、以下「大塚製薬」)は、2026年6月14日、「第62回日本循環器病予防学会学術集会」でランチョンセミナー「心臓リハビリテーションにおける栄養指導と栄養モニタリングアプリの活用可能性について」を共催しました。座長は大阪公立大学 生活科学部 食栄養学科 教授の由田克士先生、演者は国立循環器病研究センター 循環器病リハビリテーション部 心血管リハビリテーション科 医長の村田誠先生が務めました。講演では、心不全患者さんを支える心臓リハビリテーションの役割や減塩療法の課題とともに、患者さん自身の気づきと行動変容を支えることの重要性が紹介されました。

こうした課題への新たなアプローチとして、大塚製薬と国立循環器病研究センターは、2025年11月、心不全または高血圧症のある外来の心疾患患者さんを対象とする共同研究契約を締結しました。本研究は、心臓リハビリテーション参加中における栄養モニタリングアプリ「Vivoo(ビブー)」を用いた減塩介入の効果を検討する探索的臨床試験であり、現在、減塩への意識や行動の変化について検討を進めています。
栄養モニタリングサービス「Vivoo」とは
Vivooは、ヘルステック先進国アメリカで2020年に誕生し、2024年9月から大塚製薬が日本での展開をはじめた、尿を用いた栄養モニタリングサービスです。 Vivooは、専用の試験紙(ストリップ)に尿をかけ、アプリで読み取ることで、手軽に食生活の傾向に関わる6項目(水分レベル· 肉/野菜 バランス·骨の健康にかかわるミネラル·食塩摂取量·ビタミンC·酸化ストレス)を測定でき、その結果はすぐにアプリ上で確認できます。測定結果に応じて、管理栄養士が監修したアドバイスが提供され、健康的な生活習慣をサポートします。

※Vivooは18歳以上の健康な方を対象にしています。栄養状態のモニタリングを目的に設計されており、特定成分の慢性的な過剰・欠乏状態を評価するものではなく、疾病等の診断・治療・予防をすることはできません。
※本研究は医療機関の管理のもと、心疾患患者さんを対象に減塩介入におけるVivooの活用可能性を探索的に検討するものであり、心疾患患者さん向けに開発されたサービスであることを示すものではありません。
「Vivoo」の詳細情報は、(https://www.otsuka-plus1.com/vivoo/) をご覧ください。
Vivooアプリは、下記QRコードからダウンロードいただけます。



第62回日本循環器病予防学会学術集会について
2026年6月13日・14日の2日間、国立循環器病研究センターで開催されました。テーマは「心血管予防の未来:協力と挑戦が生み出す新たな可能性」。循環器病の予防に関する研究成果や実践的な取り組みについて、医療関係者や研究者などが幅広く情報を共有しました。大塚製薬は、会期2日目のランチョンセミナーを共催しました。
村田先生 ご講演内容
・運動だけではない、心不全患者さんを支える心臓リハビリテーション
高齢化に伴い、心不全患者さんは今後も増加すると予測されています。入院期間の短縮や院内死亡率の低下が進む一方で、退院後の死亡や再入院は依然として大きな課題です。そこで重要になるのが、心臓リハビリテーションです。

村田先生は、その特徴について次のように説明しました。「心臓リハビリテーションは、運動療法だけではありません。患者さんや家族への教育、栄養・食事指導、服薬指導、生活指導などを含む、チーム医療で成り立つ包括的なプログラムです」。
医師、看護師、理学療法士、管理栄養士、薬剤師、公認心理師などが連携し、退院後の生活管理に継続して関わります。

心不全患者さんへの心臓リハビリテーションは、ガイドラインでも強く推奨されています。しかし、参加率の低さや継続の難しさが課題となっています。講演では、急性心不全で入院した患者さんのうち、退院後に外来心臓リハビリテーションに参加できている人は、7%にとどまるとの報告が紹介されました。
外来では、患者さんが自宅で体重や体調を管理し、服薬や食事への取り組みを続けられるよう、具体的な方法をともに考えます。なかでも栄養指導は、こうした自己管理を継続するうえで重要な役割を担います。
・心不全患者さんへの減塩を、改めて考える
続いて村田先生は、心不全患者さんへの減塩は、高血圧治療とは分けて考える必要があると説明しました。
日本の高血圧患者さんは約4,300万人いると推定され、およそ3人に1人に上ります。高血圧の人にとって、日本人の1日平均9.8gの食塩摂取量を、高血圧の治療で目標とされる6g未満に減らすことは、血圧を下げるうえで重要です。これに対し、村田先生は、心不全患者さんへの減塩について次のように述べました。
「高血圧患者さんにとって、減塩が重要であることは大前提です。ただし、心不全患者さんへの厳格な減塩については、もう少し慎重に考える必要があります」
こうした考え方は、心不全診療ガイドラインの変化にも表れています。2017年版では、食塩摂取量を1日6g未満とすることが推奨されていましたが、2025年版では「塩分の過剰摂取を控える」という表現に見直されました。厳格な減塩によって入院や死亡が減るという明確な研究結果が、まだ十分に得られていないためです。
心不全で入院した患者さんに、食塩相当量が1日約3.8gまたは約7.6gの食事を12週間提供し、その後を含めて24週間追跡した予備研究※1では、目標とした塩分摂取量を守れた人は全体の52%でした。また、心不全による入院についても、2群間に明確な差はみられませんでした。この結果から、食事が提供される環境でも、決められた塩分摂取量を継続することは容易ではないことがうかがえます。
外来通院中の心不全患者さんを対象とした国際的な研究※2では、ナトリウム摂取量を1日1,500mg未満に抑えることを目標に、栄養指導が行われました。低ナトリウム食群では摂取量が減少したものの、通常ケア群と比べて、心血管疾患による入院や救急受診、総死亡に明確な差はみられませんでした。さらに、複数のランダム化比較試験をまとめた解析でも、総死亡や心血管疾患による入院を減らす効果は確認されていません。
一方、観察研究では、塩分摂取量が多い心不全患者さんほど、その後の入院や死亡が多かったとの報告もあります。厳格な減塩の効果は明確になっていないものの、塩分の過剰摂取を避けることは重要です。
・減塩で見落とせない「続けられるか」という課題
減塩には、血圧を下げたり、体内に水分がたまりすぎるのを防いだりして、心臓への負担を軽くする効果が期待されます。その一方で、食事量や摂取カロリーが減り、低栄養につながる可能性があります。
一般に、塩味を感じる機能は加齢とともに低下しやすく、とりわけ心不全患者さんでは、塩味を感じにくい傾向も報告されています。もともと塩味を感じにくい人がさらに塩分を控えると、食事を薄味に感じて食欲が落ちることがあります。特に高齢の心不全患者さんでは、低栄養がその後の経過に影響するため、食欲や食事量、栄養状態を確認しながら、その人に合った方法を考えることが大切です。
また、厳格な減塩によって、心不全に関係する神経やホルモンの働きが活発になる可能性も指摘されています。このように、減塩には期待される効果と注意すべき点の両面があり、摂取量だけで単純に判断することはできません。
さらに、減塩食の提供や栄養指導を行っても、目標とする摂取量を守り続けることは容易ではありません。医療の分野では、患者さんが治療の必要性を理解し、納得したうえで実行・継続することを「アドヒアランス」と呼びます。講演では、「減塩を続けられるか」という視点も重要な課題として示されました。
つまり、心不全患者さんへの減塩では、塩分の過剰摂取を避けながらも、一律に厳しく制限するのではなく、食欲や栄養状態への影響、その人が無理なく続けられるかまで含めて考える必要があります。
・行動を変えるきっかけとなる「気づき」
では、無理なく減塩を続けるためには、どのような働きかけが必要なのでしょうか。
村田先生らが以前に行った研究では、心不全で入院した患者さんを対象に、管理栄養士による約30分間の減塩指導を受けた人と、受けなかった人の退院後の経過を比較しました。その結果、栄養指導を受けた患者さんでは、退院後の死亡率が低いことが示されました。
さらに、生活習慣が変わるまでの過程を段階的に捉える「トランスセオレティカルモデル(TTM)※3」に沿って分析したところ、指導前から減塩を実行していると自己評価していた患者さんよりも、指導を通じて減塩の必要性に新たに気づいた患者さんで、栄養指導の効果がみられた可能性が示されました。
「減塩の必要性を新たに認識したことが、行動を変えるきっかけになったのではないかと考えています。情報を一律に伝えるだけでなく、患者さん自身が現在の食生活に気づくことが重要です」と村田先生は説明しました。
自宅で栄養状態を可視化できる「Vivoo」
こうした「気づき」を促す可能性のあるツールとして、共同研究で活用されているのがVivooです。村田先生は、直近の食生活の記憶が残っているうちに結果を確認し、自分の食事と結び付けて振り返れる点に注目しています。
「結果が出るまでに1〜2週間かかる郵送型検査では、その間に何を食べたか忘れてしまい、行動につながりにくくなります。Vivooの強みは、数日前の食事を覚えているうちに、その場で結果を確認できることです」
現在、国立循環器病研究センターでは、外来心臓リハビリテーションの参加者を対象に、Vivooを週3回、8週間使用する単群介入研究(探索的臨床試験)を実施しています。研究では、1日の推定食塩摂取量や減塩への意欲などが、使用前後でどのように変化するかを検証します。参加者は自宅でVivooを使用し、塩分や水分などの状態を確認します。測定結果は管理栄養士との栄養相談などに活用され、研究では食生活や減塩意欲の変化を検証します。【図表1】

・患者さんの「気づき」から始まる、これからの減塩指導
心不全患者さんへの減塩には、塩分の過剰摂取を避ける一方で、低栄養や継続の難しさにも目を向ける必要があります。減塩の必要性を伝えるだけでは、患者さんが実際に行動に移し、無理なく続けられるとは限りません。
村田先生は、運動療法や栄養指導、服薬指導、生活管理などを組み合わせた包括的な心臓リハビリテーションの重要性を示したうえで、減塩指導では、患者さん自身の「気づき」を行動の変化につなげる視点が重要だと説明しました。
Vivooによる栄養状態などの可視化は、患者さんが自分の食生活を振り返り、減塩に取り組むきっかけとなるのか。また、その行動を無理なく続けることにつながるのか。大塚製薬と国立循環器病研究センターは患者さんの気づきや行動変容を促し、生活習慣の改善につながる新たなアプローチの可能性について、共同研究を通じて探索的に検討しています。
※1 出典:Andreas Kalogeropoulos, Lampros Papadimitriou, Vasiliki V. Georgiopoulou, Sandra B. Dunbar, Hal Skopicki, Javed Butler, Low- Versus Moderate-Sodium Diet in Patients With Recent Hospitalization for Heart Failure: The PROHIBIT Pilot Study, Circulation: Heart Failure, 2020.
※2 出典:Ezekowitz JA and SODIUM-HF Investigators. Reduction of dietary sodium to less than 100 mmol in heart failure (SODIUM-HF): an international, open-label, randomised, controlled trial. Lancet. 2022.
※3 トランスセオレティカルモデル(TTM:Transtheoretical Model)
行動を変えるつもりがない「前熟考期」から、「熟考期」「準備期」「実行期」を経て、行動を続ける「維持期」へ進む過程を示したモデル。
■登壇者プロフィール
国立循環器病研究センター
循環器病リハビリテーション部 心血管リハビリテーション科 医長
村田 誠(むらた まこと)先生
昭和大学医学部卒業後、公立富岡総合病院での臨床研修を経て、群馬大学医学部および群馬県立心血管センターで循環器診療と心臓リハビリテーションの臨床・研究に従事。群馬県立心血管センターで医長、部長、診療局長を歴任し、現在は国立循環器病研究センターに勤務。日本心臓リハビリテーション学会評議員を務める。

国立循環器病研究センターについて
国立循環器病研究センターは、循環器病を専門とする国立高度専門医療研究センターです。病院、研究所、オープンイノベーションセンターを柱に、循環器病の予防、診断・治療法の開発、高度専門医療の提供に取り組んでいます。今回の共同研究は、同センターの外来心臓リハビリテーションの参加者を対象に実施されています。
大塚製薬について
大塚製薬は、一人ひとりの可能性に向き合うトータルヘルスケアカンパニーです。”Otsuka-people creating new products for better health worldwide”の企業理念のもと、未充足の医療ニーズに新たな価値を提供する医療関連事業と、科学的根拠をもった独創的な製品やサービスにより日々の健康維持・増進をサポートするニュートラシューティカルズ関連事業を通じて、人々のウェルビーイングの実現に向けて取り組んでいます。 詳細はコーポレートサイトwww.otsuka.co.jpをご覧ください。

