9月5日「国際脊髄損傷の日」×9月15日「老人の日」|「65歳の壁」を見据えた、脊髄損傷者の高齢期への備えの実態
J-Workout株式会社のプレスリリース
日本初の脊髄損傷者専門トレーニング施設「J-Workout」を運営するJ-Workout株式会社(本社:東京都江東区、代表取締役:伊佐拓哲、https://www.j-workout.jp/)は、9月5日の国際脊髄損傷の日に合わせて、脊髄損傷者の「リアル」を毎年発信しています。
本年のテーマは、「脊髄損傷者の高齢期(65歳以降)への備え」です。当事者調査で寄せられた84名からの回答には、介助者である家族の高齢化や身体の変化への不安、公的サポートが必要になった際の制度の複雑さへの戸惑いなど、必ずやってくる「老い」に対する率直な言葉が綴られていました。
国際脊髄損傷の日 × 老人の日
2025年時点で、65歳以上の人口は3,619万人*にのぼります。また、2022年の厚生労働省調査では、在宅の身体障害者手帳所持者約415.9万人のうち、65歳以上は約296.2万人*(71.2%)を占めています。脊髄損傷においても、高齢で新たに受傷する人だけでなく、若い頃に受傷した人が高齢期を迎える時代になっています。
ここで直面するのが、福祉の世界で言われる「65歳の壁」です。加齢に伴い障害に応じた介助が必要になったとき、「介護保険優先」となる制度が立ちはだかる問題です。
皮肉なことに、家族の支えや自助努力で何とか生活を維持してきた人ほど、障害福祉の相談ルートを持っていません。そのため、いざ65歳を過ぎて限界を迎えたときに、「どこに相談し、どうやって介護保険と障害福祉を併用すればよいのか」が分からず、高齢者向けの限定的なサービスのみを提示されて、行き詰まってしまうケースが少なくありません。
そこで、ある日途方に暮れるのではなく、元気なうちから備えられるきっかけづくりを目指し、実態調査を行いました。
調査結果
高齢期への備えについて、「なんとなく考えたことはあるが、具体的な行動はしていない」と答えた人が51名(60.7%)と最多で、実際に備えに踏み出している人は26名(31.0%)でした。
行動していない理由としては、「何から始めてよいかわからない」「まだ自分ごととして考えられない」が同程度に多く挙がり、必要性を感じつつも、どこから手をつければよいか迷っている様子がうかがえます。
一方で、備えている内容として最も多かったのは、介護保険や障害福祉サービスの情報収集および利用であり、相談窓口を決めている人もいました。しかし、住まい、介護やサービス体制、お金のことまで具体化できている人はまだ少数でした。
当事者の声
回答者84名のうち49名が、自由記述欄にリアルな声を寄せてくださいました。単なるデータだけでは見えない、当事者の本音の一部をご紹介します。
「両親に介助されて生活や仕事ができているが、両親も高齢になっている。どちらかが倒れた途端、今の生活ができなくなる。独身でもあるので、将来にとても不安を感じている。」(40代)
「高齢者への制度が複雑。障害と高齢になった時の制度のすみ分けや、何歳になったら、どのような状態になったらどの制度を使えて、どの施設を利用できる等、複雑でいまひとつわからない。」(50代)
「何もしなければ、可動域・骨密度・筋肉などが落ちる一方かと思うので、現状を維持することが大切と感じています。」(50代)
代表メッセージ | J-Workout株式会社 代表取締役 伊佐拓哲
そのなかで、退院後の自費リハビリという選択肢や街中のバリアフリー化の広がりなど、当事者が人生を豊かに送る環境は大きく改善されてきました。
その裏で、新たな課題として浮上しているのが「当事者の高齢化」です。若い頃に受傷し、生活を続けてきた方々が高齢期を迎える時代となり、障害福祉から介護保険への切り替えに戸惑う声を多く耳にします。10年、20年後も自分らしい生活を続けるためには、住環境や支援体制を早い段階から考えておく「備え」が不可欠です。
また、「身体の衰えを未然に防ぐ運動の継続」は、高齢期の自立を守るための最も本質的なセーフティネットです。歩けるようになることだけがゴールではありません。障害を抱え、年齢を重ねても、外出したり社会とのつながりを持ち続けられることこそが、本当の意味での自立なのです。
私たちはこれからも、一人ひとりの身体機能の維持・向上に真摯に伴走することを通じて、当事者の皆さまが生涯にわたって自分らしい人生を歩み続けられる社会の実現に寄与していきます。
伊佐拓哲( いさ・たくのり) J-Workout 株式会社 代表取締役社長
20 歳の時に事故で脊髄を損傷( 四肢麻痺)。再歩行の可能性を求めて渡米後、2007 年に日本初となる米国公認の脊髄損傷者専門トレーニング施設「J-Workout」を創設。現在は東京・大阪の2 拠点で、パーソナルジムから車いす修理販売、講師活動まで多角的に展開。
J-Workoutでは、専門家を招いた勉強会や当事者同士の交流会を開催するなど、必ずやってくる高齢期を、孤立や困難を抱え込まずに迎えられるよう、当事者の皆さまを支える取り組みにも力を入れていきたいと考えています。
【調査概要】
■調査目的:脊髄損傷者の高齢化が進み、「65歳の壁」問題が深刻化している現状において、当事者の備えの実情と老後への思いを知る
■調査対象:脊髄損傷者当事者およびそのご家族(J-Workoutの新旧会員)
■調査期間:2026年6月
■調査方法:Googleフォームを利用したインターネット調査
■有効回答数:84名
※年代別・受傷歴別の傾向、具体的な備えの内容、自由記述の分析など、調査の詳細は添付の参考資料「脊髄損傷者の高齢期への備えに関する意識調査」をご覧ください。
*出典:総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」(2025年9月15日現在推計)、内閣府「令和7年版 障害者白書」