―口腔内細菌叢に着目した、口臭予防の新たなアプローチ―
ライオン株式会社(広報部)のプレスリリース
ライオン株式会社(代表取締役兼社長執行役員:竹森 征之)は、グリチルリチン酸ジカリウム(以下、GK2)の「口腔内細菌叢の菌のバランス(以下、口内の菌のバランス)」を整える作用(※2)により、口臭の主な原因物質(以下、口臭関連成分)を抑制する可能性を見出しました。本研究成果は、2026年9月5日(土)~6日(日)に開催された「第68回歯科基礎医学会学術大会(愛知県、愛知学院大学名城公園キャンパス)」において、発表しました。
発表要旨
・GK2の添加により、歯周病原細菌の割合が低くなり、菌のバランスが整えられた。
・歯周病原細菌の添加により産生量が増加した4種類の口臭関連成分(揮発性硫黄化合物(VSC)、アミン化合物、短鎖脂肪酸、芳香族化合物)が、GK2の添加により有意に低下した。
これらの結果から、GK2が「口内の菌のバランス」を整えることで、口臭を抑制できる可能性が考えられる。
(※1)口腔環境に生息する細菌の集団のこと
(※2)「口内の菌のバランス」を歯周病原細菌(Porphyromonas gingivalis)の比率が少ない状態に整える作用
■研究背景
口臭は、日常生活の中で多くの人が関心を持つ口腔内の悩みの1種です。その主な原因として、口腔内に形成されるバイオフィルム(※3)中の細菌によって発生する揮発性硫黄化合物(VSC)などの口臭関連成分が知られています(※4)。近年、口臭の発生や口臭が気になる状態が続く原因として、個々の細菌だけでなく、「口内の菌のバランス」の乱れが関与することが報告されています(※5)。このことから、口臭予防には、「口内の菌のバランス」を整えるという観点が重要であることが示唆されます。
当社はこれまでの研究において、「口内の菌のバランス」が乱れている人では、歯科治療完了後も歯周病原細菌が唾液中に多く存在したままである可能性が高いことを明らかにしています(※6)。
そこで今回、口臭関連成分を産生する歯周病原細菌(Porphyromonas gingivalis)を選択的に抑制する成分として、当社がすでに報告しているGK2(※7)に着目し、「菌のバランスコントロール」と口臭関連成分の関係を検証しました。
(※3)細菌の集合体であり、口腔細菌が形成するプラーク(歯垢)もその1つ
(※4)Suzuki N, et al. Induction and inhibition of oral malodor. Mol Oral Microbiol. 2019. 34(3):85-96.
(※5)Li Z, et al. Halitosis: etiology, prevention, and the role of microbiota. Clin Oral Investig. 2023. 27(11):6383-6393.
(※6)Yama K, et al. Dysbiosis of oral microbiome persists after dental treatment-induced remission of periodontal disease and dental caries. mSystems, 26;8(5)(2023):e0068323.
(※7)ニュースリリース「グリチルリチン酸ジカリウムが口腔内の歯周病原細菌を選択的に抑制する作用を確認 ~口腔内細菌叢(口内フローラ)のバランスを整える、歯周病予防の新たなアプローチ~」2025年9月26日
■主な研究結果
1. GK2の添加によって、バイオフィルム中の菌のバランスを整えることを確認
歯科研究機関であるACTA(Academisch Centrum Tandheelkunde Amsterdam)が開発した実験モデル(※8)をもとに、神奈川歯科大学との共同研究を実施しました。その中で、ヒト唾液由来の口腔内細菌と歯周病原細菌が共存する、3種類のバイオフィルムを作成して評価を行いました。
各バイオフィルムの菌のバランスを確認した結果、①歯周病原細菌添加群では、歯周病原細菌を含む属が占める割合が増加し、全体のバランスが変化していることが確認されました。一方、②GK2添加群(歯周病原細菌に加えてGK2を添加した群)では、歯周病原細菌を含む属が占める割合が有意に低下し、③添加なし群に近いバランスになりました(図2)。すなわち、GK2が歯周病原細菌を選択的に抑制することにより、菌のバランスが整った状態になることを確認しました。
(※8)Amsterdam Active Attachment biofilm modelと呼ばれる、ヒトの唾液から採取した口腔内細菌を用いて、歯の表面を模したモデル上でバイオフィルムを形成、評価できる実験モデル
バイオフィルム形成条件:37℃嫌気環境下で1週間培養(n=6)
* Porphyromonas属についての、①歯周病原細菌添加群に対するSteel検定結果(p<0.05)
2. GK2添加条件では、口臭関連成分の産生が抑制されることを確認
3種類のバイオフィルムについて、一定時間内に産生された計4つのカテゴリーの口臭関連成分(※9)を測定しました。その結果、①歯周病原細菌添加群において、これらの成分の産生が検出され、歯周病原細菌が口臭の発生を促すことを確認しました。これに対し、②GK2添加群では、口臭の主因とされるVSCだけでなく、アミン化合物、短鎖脂肪酸、芳香族化合物の産生も有意に抑制されました。その結果、口臭関連成分の産生は、③添加なし群に近づくことが確認されました(図3)。
(※9)揮発性硫黄化合物(VSC)、アミン化合物、短鎖脂肪酸、芳香族化合物
バイオフィルム形成から1時間の間に産生された口臭関連成分をガスクロマトグラフィーで測定。
測定値のピーク面積を、定量PCRで測定した総細菌量で割った値で標準化した平均値±標準偏差を示す(n=6)。
* ①歯周病原細菌添加群に対するSteel検定結果(p<0.05)
以上の結果は、歯周病原細菌が増えると、4種類の口臭関連成分が多く発生することを示しています。さらに、GK2が「口内の菌のバランス」を整えることで、これら口臭関連成分の発生を抑制することが示唆されました。
■今後の展望
当社は、口腔トラブルを繰り返さないためには、原因細菌を一時的に除去するだけでなく、「口内の菌のバランスコントロール」が重要であると考え、研究を継続しています(※10)。今後も、「口内の菌のバランス」に着目したオーラルヘルスケアの研究を進め、口腔からはじまる全身の健康増進に貢献してまいります。
(※10)次世代シークエンサーが解き明かす菌叢制御技術 https://www.lion.co.jp/ja/rd/basic/analysis/case01.php
【第68回 歯科基礎医学会学術大会】
〇期間 2026年9月5日~6日
〇場所 愛知学院大学名城公園キャンパス
〇発表日 2026年9月5日
〇演題 グリチルリチン酸ジカリウムのディスバイオーシス抑制を介した
口臭関連物質の産生抑制
ライオン株式会社 小原 幹太、山 和馬、堤 康太、近澤 貴士、牧 利一
神奈川歯科大学 富山 潔、向井 義晴
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