「ONSEI Pro」搭載の音声AIモデルが独立検証で高いMCI判別精度を実証

国際学術誌『Alzheimer’s Research & Therapy』にも掲載

日本テクトシステムズ株式会社のプレスリリース


日本テクトシステムズ株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:生田目 知之、以下「日本テクトシステムズ」)、東京慈恵会医科大学、昭和医科大学の共同研究グループは、認知機能セルフチェックアプリ「ONSEI Pro」に搭載している音声AI(機械学習)モデルについて、開発時とは異なる158名を対象とした外部検証を行い、認知的健常群と軽度認知障害(MCI) ※1・認知症群の判別において AUC 0.936 という高い判別精度 ※2 を実証しました。

本成果により、専門職の立ち会いを必要としない自動音声課題による判別モデルが、新たな対象集団においても高い汎化性能(実用性)を持つことが示されました。なお、本研究成果は、認知症研究の分野で高い影響力を持つ国際学術誌『Alzheimer’s Research & Therapy』(Impact Factor: 8.9) ※3 に掲載されました。


発表のポイント

  • 約2分・完全自動の音声課題で高精度な判別を実現: 独立した外部検証集団において、認知的健常群とMCI・認知症群の判別で AUC 0.936、認知的健常群とMCI群の判別で AUC 0.900 を達成しました。本モデルを搭載した「ONSEI Pro」は、専門職の立ち会いなしで実施できます。

  注)アプリ全体の所要時間は事前説明等を含めて最短約3分ですが、実際の検査実施時間は教示を含めて約2分です。 

  • 「遅延再生 (時間のかかる記憶課題)」※4 の省略可能性を実証: 課題構成を系統的に比較した結果、「時間見当識(今日の日付など)」と「即時再生」のみの簡略モデルでも、全課題を用いたモデルと同等の精度を示しました。数分~30分程度の待機時間を要していた従来の検査を大幅に短縮でき、地域・在宅を含む実環境への展開可能性が期待されます。


背景

認知症は現代社会が直面する重要な健康課題の一つです。世界保健機関(WHO)によると、世界では5,700万人以上が認知症を有し、毎年およそ1,000万人が新たに発症しています。日本でも高齢化の進展に伴い、対応は喫緊の課題です。

認知症の前段階とされる「MCI(軽度認知障害)」は、早期介入によって進行を遅らせることが期待できる重要な時期です。しかし、標準的な神経心理検査は専門職の手配や長い検査時間を要するほか、専門医の地域偏在や受診への心理的ハードルもあり、初期症状が見過ごされやすい現状があります。

こうした課題を背景に、客観的かつ短時間で、日常生活の中でも実施しやすい新しいスクリーニング手法が求められています。人の発話(話し方・声の特徴)は、多くの認知機能が関わる複雑な認知・運動プロセスであり、その音響的特徴は認知機能を反映する「デジタルバイオマーカー」として注目されています。しかし、従来の手法は長時間の発話録音を必要とし、大規模な実用化には課題がありました。

研究の内容

本研究の目的は、以下の3点です。

  1. 認知的健常、MCI、認知症の各群を判別するAIモデルを、課題スコアと音響特徴量を組み合わせて開発すること

  2. 課題構成を体系的に比較し、判別に必要な「最小限の課題」を特定すること

  3. 開発したモデルの汎化性能(異なるデータでも正しく機能するか)を独立外部データで検証すること

研究では、アプリの自動音声ガイドに従って課題(時間見当識、文章の記憶:即時再生・遅延再生、スパン復唱、語想起)を実施しました。録音した回答音声からは、その内容と、話すテンポやリズム、声の揺らぎ、沈黙率や反応時間などを抽出・解析しました(開発用データセット:446名分、独立外部検証用データ:158名分)。

解析の結果、「時間見当識」と「即時再生(第1・第2試行)」のみを用いた簡略モデルが、全課題モデルに匹敵する精度(認知的健常群とMCI・認知症群の判別において AUC 0.925)を示しました。これは、待機時間を伴う「遅延再生」がスクリーニング目的においては省略可能であることを示す結果です。

さらに、学習には一切用いていない外部検証データ(158名)に適用したところ、簡略モデルは、認知的健常群とMCI・認知症群の判別で AUC 0.936、認知的健常群とMCI群の判別で AUC 0.900 を達成し、異なる対象集団においても高い精度を維持することが確認されました。

本成果の意義と今後の展望

本研究は、検査開始から検査終了までわずか約2分の完全自動音声チェックによって認知的健常からMCI、認知症に至る段階を高精度に判別できることを、独立した外部集団での検証を通じて示したものです。専門職の立ち会いを必要とせずスマートフォンで実施可能なため、プライマリケアや地域、在宅など、これまで専門的な認知機能評価が届きにくかった場での活用が期待されます。

また、短時間・自動で実施できる特長は、定期的な繰り返しの検査にも適しています。

今後は、同一人物に対して継続的に実施する縦断的検証を進め、認知機能の経時的な変化やMCIから認知症への進行リスクをより早期に捉える可能性について検証を深めていく予定です。

研究の限界

  • 本研究の対象は日本語話者であり、他言語への適用には各言語に応じた追加検証が必要です。

  • 診断は臨床診断に基づくものであり、脳内のアミロイドやタウ等のバイオマーカーの確認は行っていないため、原因疾患を限定しない認知機能障害の判別(アルツハイマー病特化ではない)となります。

  • 横断研究であるため、将来的な認知機能低下や進行予測については今後の縦断研究による検証が必要です。


論文情報

  • 掲載誌: Alzheimer’s Research & Therapy (Impact Factor: 8.9)

  • 論文タイトル: A short, automated speech-based assessment detects mild cognitive impairment and dementia: a multicenter study with independent external validation

  • 著者: Takayuki Asano(浅野 敬幸), Setsuo Kinoshita(木之下 節夫), Asako Yasuda(安田 朝子), Eisuke Inoue(井上 永介), Masahiro Shigeta(繁田 雅弘)

  • DOIhttps://doi.org/10.1186/s13195-026-02177-3

研究支援 

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)による「予防・健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業(エビデンス構築促進事業)」(課題番号:JP23re0122002) の支援を受けて実施されました。


用語解説

※1 軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment) 

記憶などの認知機能に低下がみられるものの、日常生活はおおむね自立している状態。適切な介入により維持・改善が期待できるため、早期対応が重要とされています。

※2 AUC(Area Under the Curve) 

判別モデルの精度を示す代表的な指標(0.5〜1.0)。1.0に近いほど高精度で、一般に0.9以上は「高い判別精度」とされます。

※3 Impact Factor(インパクト・ファクター)

学術雑誌の影響度や権威性を示す国際的な指標。その雑誌に掲載された論文が、他機関の研究等で平均して何回引用(参照)されたかを表します。数値が高いほど、その分野において引用頻度が高く、世界的にも影響力・信頼性の高い雑誌とみなされます。

※4 遅延再生(課題)

提示された情報を一定時間(数分〜数十分)あけた後に思い出す記憶課題。待機時間が発生するため、検査が長引く原因となっています。


■ ONSEI Pro について

日本テクトシステムズが提供する、音声解析AI技術を活用した認知機能セルフチェックアプリです。スマートフォンを通じて短時間で簡単な質問に声で答えるだけで、日々の「揺らぎ」に隠れた機能変化を早期に検知、可視化を支援します。

※ 「ONSEI Pro」は、研究に基づく統計データと回答音声から取得したデータを比較した結果(一般的・統計的な傾向)を提示するものであり、使用者の個別的な状態に対し、医学的判断を加えて、疾病の診断や発症確率の評価を行うものではありません。

https://systems.nippontect.co.jp/onsei

■ 日本テクトシステムズについて

日本テクトシステムズは、「~for peaceful aging~」をコーポレートメッセージに掲げ、すべての人が安心して齢を重ねられる環境、認知症の方も穏やかに過ごしてゆける社会を目指し、高齢者・認知症領域において事業を展開しています。

声による認知機能チェックツール「ONSEIシリーズ」や、高齢者運転免許更新時の認知機能検査のデジタルトランスフォーメーションを実現する「MENKYO」など、社会課題解決に向けて、ヘルスケアアプリ、DXソリューションを提供しています。

https://systems.nippontect.co.jp/

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