日本メナード化粧品株式会社のプレスリリース
~化粧品技術の国際的な学術大会“IFSCC Congress”にてTOP10に選出~
日本メナード化粧品株式会社(愛知県名古屋市中区丸の内3-18-15、代表取締役社長:野々川 純一)は、株式会社トウチュウ(愛知県知多郡美浜町大字野間字中新田5)との共同研究により開発した「再帰性反射」の特性を持つ新規の球状粒子※1を応用し、シワやタルミなどの深い影を光で満たして目立たなくする技術を開発しました。また、このメカニズムを「オプティカル・フィリング(光学的充填)」と名付け、研究成果を第36回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)学術大会で口頭発表し、応用研究部門においてTOP10に選出されました。この技術を活用し、これまでにない光のコントロールでシワやタルミを目立たなくする新しいメイクアップ化粧品の開発につなげていきます。
従来のメイクアップ化粧品は、顔料で肌を「隠す」か、光を様々な方向に散乱させる拡散反射を利用して毛穴や小ジワを「ぼかす」技術が主流でした。しかし、顔料でカバー力を上げると白浮きや厚塗り感が生じやすく、拡散反射では深い影まではカバーしきれませんでした。そのため、シワやタルミによる強い陰影を自然に目立たなくするのは困難でした。
この課題を解決するため、進入した光を光源の方向へ反射する「再帰性反射」という光学特性に着目し、その特性を備えた球状粒子を開発しました※1。この特殊な球状粒子(以下、再帰性反射粉体)をタルミモデルに塗布すると、タルミの凹み部分に入り込んだ光が内部で反射して影を埋めるように働くことが分かりました。メナードは、この「影を光で満たす」という新しいメカニズムを「オプティカル・フィリング(光学的充填)」と名付けました。この再帰性反射粉体を配合したフェイスパウダーをヒトの肌に塗布した結果、素肌感を損なうことなく、ほうれい線の影を目立たなくする効果を確認しました。これにより、本来届かない影の部分に光を届け、深いシワなどのエイジングサインを光の力でカバーすることが可能となります。今後は本技術を応用し、自然なカバー効果と素肌感を両立したメイクアップ化粧品の開発につなげていきます。
なお、本研究の成果は2026年9月28日から10月1日にかけてオーストラリアのパースで開催された第36回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)学術大会にて口頭発表し、応用研究部門においてTOP10に選出されました。
※1 2025年6月20日配信ニュースリリース https://corp.menard.co.jp/research/news/No.6_20250620.pdf
<参考資料>
1.従来のメイクアップ技術が抱える「深い影のジレンマ」
加齢や紫外線(光老化)による深いシワやタルミは、肌に強い陰影を落とし、見た目年齢を大きく左右します。従来のメイクアップ化粧品では、多孔質シリカなどの球状粒子を用いて光を様々な方向に散乱させる「拡散反射(ソフトフォーカス効果)」により、影をぼかす技術が主流でした。しかし、この技術では、シワやタルミによる強い陰影までは目立たなくすることはできませんでした。一方で、酸化チタンなどのカバー力が高い顔料で深い影を覆い隠そうとすると、肌本来の自然な血色感まで損なわれてしまい、不自然な白浮きや厚塗り感が生じるという長年の課題がありました。
2.再帰性反射特性を有する新たな化粧品原料の開発
このジレンマを解決するため、光がどの方向から入っても光源の方向へ反射する「再帰性反射」という光学特性に着目しました。光源側から見た際に非常に明るく輝いて見えるため、道路標識などに活用されてきた技術です。メナードは、株式会社トウチュウと共同で、この原理を初めて化粧品原料に応用。屈折率や粒子径、真球状・無孔質といった形状を厳密に制御することで、化粧品に求められる肌にのばしたときのなめらかな感触を持ちながら、従来の粉体にはない再帰性反射特性を兼ね備えた球状粒子の開発に成功しました※1。
実際に、肌モデルにさまざまな粉体を塗布して光の反射強度を測定しました。斜め45度上方から光を当てた場合、今回開発した再帰性反射粉体は、光が入ってきた方向とその付近へ向かって強い反射を示すことが確認されました(図1)。
※1 2025年6月20日配信ニュースリリース https://corp.menard.co.jp/research/news/No.6_20250620.pdf
3.光学シミュレーションで解明した「オプティカル・フィリング」のメカニズム
今回開発した再帰性反射粉体をタルミの凹凸を再現した肌モデルに塗布し、凹み部分で光をどのようにコントロールするのか、光学シミュレーションソフトを用いた光線追跡解析により可視化しました(図2)。その結果、斜め上方から入射した光が、タルミの凹み下部の粒子に当たって上部の深い影の部分へと反射した後、さらに正面へと跳ね返る「二重反射」が起きていることを確認しました。この二重反射により、タルミの“影”の部分から反射光が正面へと届き、影を内側から明るく照らします。従来広く用いられている拡散反射粉体(シリカ)と比較しても、再帰性反射粉体の方が影となっている凹み部分から正面に返ってくる光が圧倒的に多くなっていることが確認されました(図3)。
この光量の差が、影を埋める効果に大きな違いを生み出します。メナードは、シワやタルミの影を光で満たすこの現象を「オプティカル・フィリング(光学的充填)」と名付けました(図4)。
4.再帰性反射粉体(開発品)によるカバー効果の検証
再帰性反射粉体(開発品)の実際の効果を、ヒトの肌(ほうれい線)で検証しました。ほうれい線は、タルミによって生じた溝部分に影ができることで、周囲の肌との明るさの違い(明度差)が生じ、目立って見えます。
女性25名を対象に、再帰性反射粉体を配合したフェイスパウダーおよび未配合のフェイスパウダーをそれぞれ塗布し、ほうれい線部分の画像解析を行いました※2。その結果、再帰性反射粉体を配合したフェイスパウダーは、素肌や未配合のフェイスパウダーと比較して、ほうれい線の影の部分と周囲の肌との明度差を小さくすることが分かりました(図5)。つまり、再帰性反射粉体による「オプティカル・フィリング」の効果によって、ほうれい線の影が薄くなったことが裏付けられました。
また、印象評価でも、再帰性反射粉体を配合したフェイスパウダーを塗布した肌の方が「ほうれい線が目立たない」と評価されました。
以上のことから、オプティカル・フィリングがもたらす、素肌感を損なわない自然なカバー効果が実証されました。
※2 ほうれい線を含む一定面積内で、一番暗い箇所(凹み)と一番明るい箇所(周囲の肌)との明度差(グレースケール強度差)を測定