一般社団法人アジアがんフォーラムのプレスリリース
アジア・太平洋がん予防機構主催による第13回総会 APOCP 2026 でワークショップを開催。マレーシアの職場がん検診で約8,000人が受診した実践を共有

一般社団法人アジアがんフォーラム(代表理事:河原ノリエ、以下ACF)は、2026年9月28日、マレーシア・サラワク州クチンで開催された国際がん予防会議「APOCP 2026」(Asian Pacific Organization for Cancer Prevention)で、ワークショップ「Beyond Survival: Can Asia Measure What Prevention Truly Protects?」を開催しました。
日本政府の骨太方針2026が「攻めの予防医療」を掲げるなか、がん予防を地域や職場に届け、その社会的価値を測り、政策や継続的な投資につなげる道筋を、日本とマレーシアの医療・企業・大学・公的機関の関係者が議論しました。
共催はUICCアジア支局(UICC-ARO)、マレーシア対がん協会(NCSM)、東京大学スポーツ先端科学連携研究機構(UTSSI)。オープニングでは、四方敬之・駐マレーシア特命全権大使と、野田哲生・UICC日本委員会委員長のビデオメッセージが上映されました。

ワークショップのポイント
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職場での検診:交代勤務の切り替わりや夜間にも検診を実施し、大規模な製造拠点で約30日間に約8,000人が受診(NCSM)
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予防の価値の試算:大腸がんを対象としたモデルで、投資1米ドルあたり約4.6米ドルの社会的価値(アステラス製薬による統計)
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がん経験者の社会復帰:ヤクルトレディとしての就労支援、サイバーダイン社・装着型サイボーグ「HAL」を用いたリハビリと復職支援など
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大学と現場の往復:東京大学の講義で学生がまとめた政策ブリーフの問いを議論に反映


背景:政府の骨太方針2026が掲げる「攻めの予防医療」
政府が2026年7月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太方針2026)は、Well-beingの向上と健康寿命の延伸に向けて「攻めの予防医療」を掲げています。がん検診・精密検査の受診率向上、健康への理解を深める取り組み、健康経営の推進に加え、健康・予防・医療・介護分野の国際展開も打ち出しています(参考①)。
この方向性をアジアで具体化するには、各国の制度や文化、働き方に合った仕組みが欠かせません。検診の大切さを知っていても、仕事を休めない、結果が怖い、どこに相談すればよいか分からない――。こうした障壁を地域や職場の側から取り除き、予防を日常の行動につなげることが、議論の中心となりました。
美容院から職場へ:がん検診を「行ける場所」に届ける
その実践の一つが、ACFとNCSMがアステラス製薬の支援を受けて進める「BEAUTY & Health」です(参考リンク②)。BEAUTYは「Bringing Education And Understanding To You」の略で、美容院や理髪店など日頃から信頼関係のある身近な場所で、がんについて知り、検診や医療につながる機会をつくってきました。
活動を重ねるなかで、都市部では職場のつながりが重要であることが見えてきました。そこで始まったのが「BEAUTY at Work」です。交代勤務の切り替わりや夜間にも職場で検診を行い、仕事を休みにくい人にも受診の機会を届けています。NCSMは、大規模な製造拠点で約30日間に約8,000人が検診を受けた事例を報告しました。
職域での予防には、住友商事グループのPMCareも取り組んでいます。同社は企業の人事部門と連携して職場での健康相談や身体活動を支援しており、ワークショップでは、開始時と3~6か月後の健診データを比較し、医療費の推移も追跡する事例を紹介しました。

予防の価値を数字で示す:投資1ドルあたり約4.6ドルの試算
アステラス製薬は、BEAUTYの社会的価値を可視化する評価モデルを紹介しました。同社は当日、同プログラムの運営団体に計1億5,000万円を拠出し、100万人を超えるマレーシアの人々に届けることを目指していると説明しました。
評価モデルは、早期発見による適切な治療へのアクセス、仕事の生産性、医療負担などに着目したものです。100万人に情報が届くことを前提に大腸がんを対象として試算した結果、投資1米ドルあたり約4.6米ドルの社会的価値が生まれると示されました。これは一定の前提に基づく推計であり、今後のデータの蓄積を通じて検証・改善していくものです。
何人に予防を届けたかに加え、その先にどのような暮らしが守られるのかを示すことが、企業や社会の継続的な支援につながります。

予防から社会復帰へ:がん経験者の「働く」を支える
予防の先には、治療後の暮らしや仕事をどう支えるかという課題があります。マレーシアでは、CYBERDYNEの装着型サイボーグHALが、マレーシア社会保障機構(PERKESO)のリハビリテーション施設に導入されています。ワークショップでは、身体機能の回復を復職につなげる取り組みが紹介されました。PERKESOは、元の仕事への復帰が難しい場合も、別の仕事や自営業などの選択肢を支えています。
その選択肢の一つが、ヤクルトとPERKESOが連携し、治療を終えたがん経験者がヤクルトレディとして働くことを支える取り組みです。訪問・配達で身体を動かし、収入を得て、人とのつながりを持つ。地域に健康情報を届けてきたヤクルトレディの仕組みを、働く人の社会復帰にも生かす試みです。
議論では、機器や制度の性能だけでなく、支援を受けた人が実際に再び働き、暮らしを取り戻せたかという視点で支援の価値を捉える重要性が共有されました。

東京大学の教室と現場をつなぐ
予防を社会に根づかせるには、人々が何を大切にし、誰の情報を信頼し、どのように暮らしているかを理解する必要があります。ヤクルトからは、オンライン調査と家庭訪問を組み合わせ、マレーシアの文化や価値観、食生活を捉える「Asia Well-being Survey」が紹介されました。
ACFは「アジアウェルビーイングプロジェクト」を通じて、こうした現地の調査・実践と東京大学での教育を結びつけています。その基盤が、2011年に始まり16年目を迎えた東京大学の分野横断型講義「アジアでがんを生き延びる(Cross-boundary Cancer Studies)」です。NCSMをはじめとする実務家が現場の経験を教室に持ち寄り、学生が医学、社会、経済、文化を横断して考える場となっています。
2026年度春夏学期には、学生が「予防の社会的価値」をテーマに英語の政策ブリーフを作成しました。検診のために仕事を休めるか、治療後に元の暮らしや仕事に戻れるか――。学生の問いが、今回の議論の出発点の一つとなりました。クチンで共有された実践と課題は、秋冬学期の講義に持ち帰ります。

今後の展開
ワークショップでは、企業、病院、大学、地域の連携を広げる「BEAUTY Plus」の構想も示されました。ACFは、BEAUTYの実践と東京大学での教育を重ね、予防の価値を示す根拠と、取り組みを続ける仕組みづくりを進めます。

開催概要
名称:Beyond Survival: Can Asia Measure What Prevention Truly Protects?
開催日:2026年9月28日
会場:The Waterfront Hotel(マレーシア・サラワク州クチン)
開催枠組み:APOCP第13回総会・科学会議(APOCP 2026)ワークショップ
主催:一般社団法人アジアがんフォーラム
共催:UICCアジア支局(UICC-ARO)、マレーシア対がん協会(NCSM)、東京大学スポーツ先端科学連携研究機構(UTSSI)
参加企業・機関:アステラス製薬株式会社、株式会社ヤクルト本社、PMCare Sdn Bhd(住友商事グループ)、CYBERDYNE株式会社、PERKESO(マレーシア社会保障機構)、東京大学、岐阜大学、ほか
参考リンク
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内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太方針2026)当箇所:30~31ページ
一般社団法人アジアがんフォーラムについて
アジアがんフォーラムは、2004年に発足し、2011年より一般社団法人として活動しています。アジアのがん対策を共通課題として、研究者、医療者、政策関係者、企業、市民社会を結び、大学での教育、国際対話、地域に根ざした実践を進めています。日本とアジアの現場で知見を共有し、誰もが必要ながん医療や支援につながれる社会を目指しています。
本件に関するお問い合わせ先
一般社団法人アジアがんフォーラム(ACF)事務局
E-mail:info@asiacancerforum.com

