江崎グリコ株式会社のプレスリリース
「ちょっとした動き」の積み重ねと、腸内細菌の働きに注目
秋から冬にかけては、気温の低下で外出や運動の機会が減りやすいうえ、忘年会や新年会、年末年始の長期休暇など、食事の量や回数が増えやすいイベントが続きます。エネルギー消費が減る一方でエネルギー摂取は増えやすく、いわゆる「冬太り」が気になる方も多いのではないでしょうか。当社が2026年6月に実施した「平日の運動に関する実態・意識調査」(全国20~60代男女1,030名にインターネット調査)では、1日20分以上の運動を「すべき」と考える人が約9割(91.6%)にのぼる一方、そのうち約7割(67.2%)が「実践できていない」と回答しており、運動の大切さを理解していても、日々の生活の中で実践し続けることは簡単ではない実態がうかがえます。
当社では、太りにくいカラダづくりに向けて、「エネルギー摂取」と「エネルギー消費」の両面からエネルギーバランスを整える視点に着目しました。食事管理(エネルギー摂取)や運動(エネルギー消費)に次ぐ、第3の視点となる、1日のエネルギー消費の約6割を占める※1「安静時エネルギー消費」に目を向けた、毎日の生活の中で無理なく取り入れられる工夫と、安静時エネルギー消費に関するGlicoの研究結果を、日本肥満症予防協会 執行理事で筑波大学 体育系 教授の中田由夫先生の解説とともに、ご紹介します。
■なぜ冬は「エネルギーバランス」に注目すべきなのか
太りにくいカラダづくりの基本となるのが、食事等から取り入れる「エネルギー摂取」と、身体活動等によって使われる「エネルギー消費」のバランスです。摂取が消費を上回る状態が続くと、余ったエネルギーが体内に蓄積され、体重増加につながりやすくなります。
冬は、このバランスが崩れやすい季節です。冬は一般的に基礎代謝量が上がると言われていますが、一方で、寒さによる外出控えや運動機会の減少が崩れやすい要因として挙げられます。気温が下がると屋外で過ごす時間が減り、日常の歩行や運動によるエネルギー消費が落ち込みやすくなります。また、さまざまな事情で、毎日運動をすることは難しい実態もあります。もうひとつの要因として、年末年始の会食や長期休暇による食事量の増加もあります。忘年会や新年会、帰省先でのごちそうなど、普段より食べる機会が増えがちです。
このように冬は、「エネルギー消費の低下」と「エネルギー摂取の増加」が重なりやすく、摂取過多の方向にバランスが崩れやすい時期といえます。いつも以上に、日々のエネルギーバランスを意識することが、冬太りを防ぐ第一歩になると考えます。
■食事管理でも運動でもない、第3の視点に注目
バランスを意識する際に、エネルギー摂取という観点での食事管理と、エネルギー消費という観点での運動を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、それらだけに頼るのではなく、第3の視点となる「安静時エネルギー消費」を取り入れて、日々のバランスを整えていくことが大切です。
2003年に科学誌『Science』に掲載された論文では、1日あたり100kcalのエネルギーバランスを調整することで、多くの人の体重増加を防ぐことができると推定されています※2。100kcalは、小ぶりのおにぎり1個分(ごはん約60g)程度。劇的な減量につながるものではありませんが、日々の小さな調整が体重増加を防ぐことにつながると考えられています。
■一日の総エネルギー消費の約6割※1を占める「安静時エネルギー消費」とは
私たちのカラダが1日に消費するエネルギーは、大きく「安静時エネルギー消費」「身体活動エネルギー消費」「食事誘発性熱産生」の3つに分けられます。このうち、呼吸や心臓の拍動、体温の維持、姿勢の保持など、運動していない時にも使われる「安静時エネルギー消費」は、1日のエネルギー消費の約6割を占めるとされています※1。
また、安静時エネルギー消費に含まれる基礎代謝量は、10代をピークに年齢とともに低下していくことが知られています※3。成長期を過ぎた大人にとっては、運動による消費だけでなく、1日の大部分を占める安静時の消費にも目を向けることが、エネルギーバランスを整えるうえで重要な視点になると考えます。
<1日にカラダが使うエネルギー消費の内訳>

■「筋トレで基礎代謝量を上げる」は誤解?専門家が解説
「筋肉を増やせば基礎代謝量が上がり、太りにくいカラダになる」——体重管理の場面でよく耳にするこの考え方について、日本肥満症予防協会 執行理事の中田由夫先生は、誤解が含まれていると指摘します。安静時に骨格筋1kgあたりが消費するエネルギーは1日約13kcal。決して大きな数字ではありません。一方で、肝臓(約201kcal)や脳(約239kcal)、心臓・腎臓(約440kcal)は1kgあたりの消費量が大きく、これらの臓器は体重のわずか5%程度の重さで、基礎代謝量の約6割を担っています※4。
中田先生が注目するのは、日常生活の中の「安静時エネルギー消費」です。厳密な条件で測る基礎代謝量と違い、日常でじっとしている時には、骨格筋も少なからずエネルギーを使っています。骨格筋は全身に占める重量が大きいため、ちょっとした活動でもエネルギー消費量への影響が大きくなるといいます。そこで中田先生は、負荷の高い運動に限らず、座ってする家事や作業を立ったり歩き回ったりしながらするなど、日々の「ちょっとした動き」を積み重ねることが大切だと話します。
中田由夫先生のコメント

日本肥満症予防協会 執行理事 中田由夫 先生
筑波大学 体育系 教授。筑波大学大学院修了。博士(体育科学)。専門は、運動疫学、スポーツ医学。健康・スポーツ科学分野における科学的知見の社会実装を目指して研究に取り組んでいる。
「筋肉を増やせば基礎代謝量が上がり、リバウンドしにくい体になる」という考え方は、方向性としては正しいように思えますが、実際には簡単ではありません。骨格筋1kgあたりの基礎代謝量は1日約13kcal。仮に筋肉を1kg増やせたとしても、増える基礎代謝量はわずかですし、そもそも減量しながら筋肉を1kg増やすこと自体がかなり大変です。基礎代謝量の多くを担っているのは、脳や心臓、肝臓、腎臓といった臓器なのです。
一方、日常生活で負荷の高い運動をしていない時にも使われる「安静時エネルギー消費」には、骨格筋の活動がより強く関わってきます。筋肉は全身に占める重量が大きいので、ちょっとした活動でもエネルギー消費量は高まります。例えば、座って過ごしていた時間を立って過ごすだけでも、エネルギー消費は増えていきます。こうした「低強度の身体活動」を積み重ねることで、筋肉を増やして基礎代謝量を高めることに比べて、より簡単にエネルギー消費量を高めることができます。
また、座りっぱなしの時間が長いことは、身体活動量とは関係なく死亡リスクを高めることが報告されています。理想は30分に1回、難しければ1時間に1回を目安に立ち上がり、座りっぱなしを中断しましょう。「安静時エネルギー消費」を高めるためには食品選択を含めていくつかの方法が考えられますが、日々の過ごし方を変えることもその一つ。できることから取り入れてみてください。
■腸内細菌に着目したGlicoの「安静時エネルギー消費」研究
中田先生が提案されている、日々の「ちょっとした動き」に加えて、Glicoが着目しているのが「腸内細菌」です。Glicoでは、腸内細菌が生み出す短鎖脂肪酸に着目し、独自のビフィズス菌BifiX(ビフィックス)(B. lactis GCL2505)と、そのエサとなるイヌリン(食物繊維)の研究を進めています。ビフィズス菌BifiXは、胃酸や胆汁酸に耐えて生きて腸まで届き、腸内で増えるという特徴を持つビフィズス菌です。
■ビフィズス菌BifiX+イヌリンで、安静時のエネルギー消費量が増加
BMIが高め(25以上30未満)の健常な成人男女44名を対象にしたヒト試験の結果、ビフィズス菌BifiX100億個とイヌリン(食物繊維)5gを4週間継続摂取した群は、2週間経過後、プラセボ摂取群より安静時のエネルギー消費量が増加しました※5。試験で向上した安静時のエネルギー消費量(1日あたり84.~101.8kcal)を運動に換算すると、歩数としては1,800~3,300歩、時間としては18~33分間の散歩に相当します※6。
■体脂肪の低減も確認
さらに、BMIが高め(23以上30未満)の健常な成人男女120名を対象にしたヒト試験では、ビフィズス菌BifiX100億個とイヌリン(食物繊維)2gを12週間継続摂取した群は、8週間経過後、プラセボ摂取群より腹部内臓脂肪と腹部総脂肪が低減しました※7。
これらの働きには、腸内で増えたビフィズス菌BifiXが生み出す短鎖脂肪酸が関わっていると考えられており※8、Glicoでは引き続き、そのメカニズムの解明に取り組んでいます。冬太りが気になるこれからの季節。食事で「摂取」を意識しつつ、運動だけに頼らず、座りっぱなしを減らす日常の「低強度の身体活動」や腸内環境にも目を向けて「消費」を支えることで、無理なくエネルギーバランスを整えていきませんか。
※1:Horton ES. Am J Clin Nutr. 1983, 38, 972-977.
※2:Hill JO et al. Science. 2003, 299(5608), 853-855.
※3:厚生労働省「健康日本21アクション支援システム『加齢とエネルギー代謝』」より
※4:田中喜代次, 中田由夫. 体力科学. 2017, 66(3), 209-212.
※5:Baba Y et al. Nutrients. 2024, 16(14), 2345.
※6:厚生労働省「健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料」より
※7:Baba Y et al. Nutrients. 2023, 15(24), 5025.
※8:Baba Y et al. Biosci Biotechnol Biochem. 2025, 89, 1191-1202.

