デンタルIQは“歯とお口の健康への関心・意識の度合い”「デンタルIQに関する意識と実態調査」

日本歯科医師会のプレスリリース

 

全国の20代〜60代男女1万人に聞く、「デンタルIQに関する意識と実態調査」

デンタルIQは“歯とお口の健康への関心・意識の度合い”

デンタルIQを誤った認識で理解している人が約7割も

デンタルIQを高める意義は、「いつまでもおいしいものを食べたい」 「全身の健康を守りたい」

 

 公益社団法人日本歯科医師会(所在地:東京都千代田区九段北、会長:堀 憲郎)が展開する「いい歯は毎日を元気にプロジェクト」は、11月8日の「い(1)い(1)歯(8)の日」に合わせ、国民の皆さまに歯とお口の健康への興味関心を高めていただくことを目的に、全国の20代〜60代男女1万人を対象に、「デンタルIQに関する意識と実態調査」を実施しました。

 デンタルIQとは、その人の“歯とお口の健康への関心・意識の度合い”を示す言葉です。デンタルIQは歯科治療に関する専門的な知識の高さと捉えられがちですが、これは間違いで、本来は「歯とお口の健康について、どのくらい大切に考えられているか」ということを意味する言葉です。本調査では、生活者の中でのデンタルIQの認知度・関心度を明らかにし、それを確認するデンタルIQチェックを実施し、歯とお口の健康に関する生活者の実態を浮き彫りにしました。

 

①全国の20代〜60代男女1万人調査 日本人とデンタルIQ(p1~2/対象:調査①)

「デンタルIQ」 言葉の認知度は2割にとどまるが、国民の9割が「重要」だと認めている 

・デンタルIQを言葉として認知しているのは20.8%。「デンタルIQの言葉の名前も意味も知っている」と答えた人でも、デンタルIQが「自分の歯とお口の健康への関心や意識の度合いを示すもの」と正しく理解している人は29.3%。約7割は誤認。

・デンタルIQの意味を提示すると、9割が「重要だと思う」(90.0%)と回答。

 

全国1万人のデンタルIQをチェック 正解数は15問中10.2問

・1万人にデンタルIQを測定するデンタルIQチェックを実施、15問中の正解数は平均で10.2問。

・男性20代・30代はデンタルIQが低めの割合が多く、女性50代・60代はデンタルIQが高めの割合が多い。 ・デンタルIQが高めの人の4割は、歯の定期健診を受けている。

 

②20代〜40代の歯とお口の健康とデンタルIQ調査(p3~5/対象:調査② )

「デンタルIQ」が高めの人ほど、セルフケアを実践し知識も豊富

・デンタルIQ別の900人調査。デンタルIQが高めの人ほど、歯やお口の健康を保つためのセルフケアを実践し、知識も豊富。

・デンタルIQが高めの30代・40代女性の過半数は、歯やお口に違和感を感じたとき「すぐに歯医者さんに行く」。

・デンタルIQを高める三大理由、「いつまでもおいしいものを食べたい」「全身の健康を守りたい」「自分の歯を長持ちさせたい」。

 

歯の定期健診は歯とお口の健康のバロメーターに 人生100年時代に一層注目される「歯・お口」の健康

・自身の歯とお口の健康 「大切にできている」68.4%:「大切にできていない」31.6%。

・大切にできていない理由は、「歯科健診や歯科医師による定期チェックを受けていないから」(45.1%)がトップ。

・歯の定期チェック頻度、半数が「年1回以上」受診。5人に1人は「3カ月に1回以上」(22.9%)定期的にチェックを受けている。

・人生100年時代。心臓以外で健康が重要なのは1位「頭・脳」(89.8%)、2位「歯・お口」(67.2%)、3位「眼」(67.0%)。

 

調査概要 ■実施時期:2021年10月1日(金)~ 10月6日(水) ■調査手法:インターネット調査  ■調査対象:●調査①:全国の20代〜60代男女1万人(人口構成比)●調査②:デンタルIQ(高・中・低)別に20代〜40代の男女900人(デンタルIQ別に性・年代別で各50人振り分け)

*本調査では、小数第2位を四捨五入しています。そのため、数字の合計が100%とならない場合があります。

 

調査①:全国1万人調査 日本人とデンタルIQ

■「デンタルIQ」、言葉の認知も正しい理解も2割台にとどまっている

 全国の20代〜60代男女1万人を対象に、「デンタルIQ」という言葉の認知について聞きました。すると、「デンタルIQという言葉の名前も意味も知っている」と答えたのは4.0%と少なく、「言葉の意味は知らないが、デンタルIQという言葉は聞いたことがある」(16.8%)と答えた人を加えても、デンタルIQの認知度は20.8%にとどまりました[図1]。

 次に「デンタルIQの言葉の名前も意味も知っている」と答えた人にデンタルIQの定義について聞くと、「歯やお口の健康に関する知識の高さを示すもの」(35.8%)と答えた人が最も多くなっていますが、間違っています。デンタルIQの定義は、「自分の歯とお口の健康への関心や意識の度合いを示すもの」です。「名前も意味も知っている」と答えている人の中でも、正しく理解できている人は29.3%との結果となりました[図2]。

 

 

■国民の9割の人が「デンタルIQは重要」と認識

 「デンタルIQは、自分の歯とお口の健康への関心や意識の度合いを示すもの」と定義を提示した上で、歯とお口の健康への関心や意識を高めるデンタルIQは重要だと思うかと聞くと、9割が「重要だと思う」(そう思う54.1%+ややそう思う35.8%)と答えました[図3]。

 そこで、デンタルIQを探るべく歯やお口の健康に関する15項目の質問に対し、○か✕かで答えてもらいました。その結果、正解率が高かったのは、「正しく噛むことは脳の活性化につながる」(答え○:95.1%)、「唾液の役割の一つには免疫機能がある」(答え○:93.3%)、「むし歯は痛みなく進行するものがある」(答え○:92.7%)などで9割以上の人が正しく理解しています[図4]。一方正解率が低かったのが、「口臭を引き起こす原因として大きな割合を占めるのは、歯周病である」(答え✕:12.0%)、「気づかないうちに進行する歯周病は、国民の約5割がかかっている」(答え✕:14.0%)で正しく理解している人は1割台しかいませんでした。ちなみに、口臭を引き起こす一番の要因は舌にたまった汚れ「舌苔(ぜったい)」で、原因の6割といわれています。また、日本の歯周病罹患(りかん)者は「30代以上の3人に2人」「40代以上の8割」と報告されています。

 


■全国1万人の「デンタルIQ」正解数は15問中10.2問

男性20代・30代が低めで、女性50代・60代が高めに

 図4のデンタルIQチェックの15項目の正誤を集計すると、全問不正解の人は0人、全問正解の人は3人となり、全国1万人のデンタルIQの正解数は平均10.2個となりました。集計結果を基に、1万人のデンタルIQを高・中・低に3分類すると、正解数が12個以上のデンタルIQが高めな人は全体の21.1%(2,108人)、中ぐらいの人(正解数10〜11個)は49.7%(4,966人)、低めの人(正解数9個以下)は29.3%(2,926人)となりました[図5]。

 この結果を性・年代別に見ると、男性20代(低め:45.2%)・30代(低め:40.9%)はデンタルIQが低めの割合が多く、女性50代(高め:26.3%)・60代(高め:27.7%)は高めの割合が多くなっています[図6]。

 

■デンタルIQが高めの人は、「歯の定期健診」を受ける人が4割も

 歯やお口の健康に関して行っていることをデンタルIQ別に見ると、デンタルIQが高めの人は、低めの人に比べて全ての項目で実践率が高くなっています。デンタルIQが高めの人の4割は「年に一回は定期健診を受けている」(40.3%)と答え、デンタルIQが低めの人(24.8%)に比べて定期健診を受ける割合が15ポイント以上高くなっています。さらに、「歯とお口の定期的なチェックをかかりつけの歯科医院で受けている」(40.2%)と答えた人も、デンタルIQが高めの人では4割いました。

 また、デンタルIQが高めの人は、歯科医院でのプロフェッショナルケアだけでなく、「食事はくちびるを閉じて噛む」「鼻呼吸を意識して実践」「デンタルフロスや歯間ブラシを日常的に使う」など、日常生活におけるセルフケアの実践度も総じて高くなっています。[図7]。

 

調査②:20代〜40代の歯とお口の健康とデンタルIQ調査

■デンタルIQが高めの人ほど、歯やお口の健康を保つためのセルフケアを実践し、知識も豊富

 さらに、デンタルIQ別に性・年代別で振り分け、20代〜40代の男女900人を対象に調査を行いました。

まず、歯とお口の健康を保つためにセルフケアとして行っていることを聞くと、「歯ぐきと歯と歯の間までしっかり磨く」(43.9%)、「よく噛んで食べる」(35.6%)、「フッ素入り歯磨き剤を使用する」(32.9%)などの実践率が高くなっています。デンタルIQ別に見ると、デンタルIQが高めの人ほど実践率も高い傾向が見られました[図8]。

 歯とお口の健康を保つために知っていることを聞くと、「よく噛むことは、認知症の予防につながる」(57.9%)、「よく噛んで唾液を出すことで、胃腸での食べ物の消化吸収を促進する」(55.2%)、「歯並びや噛み合わせが悪いと、むし歯や歯周病、顎関節症、肩こりや頭痛など様々な原因につながる」(48.3%)は半数の人が認知しています。デンタルIQ別で見ると、やはりデンタルIQが高めの人ほど知識が豊富で、セルフケアと同様の傾向が見られました。なお、「舌磨き等が新型コロナなどウイルス感染症の重症化リスクを軽減できる可能性がある」の認知率は全体で17.8%、デンタルIQが高い人でも22.3%にとどまりました[図9]。

 

■歯やお口に違和感があるとき、デンタルIQが高めの30代・40代女性の半数以上は「すぐ歯医者さんに行く」

 歯が痛くなったり、お口に違和感があったときにどのような行動をとるか聞きました。52.3%は「しばらく様子をみて、我慢できなくなったら歯科医院に行く」、42.9%は「すぐ歯科医院に行く」と答え、歯科医院には行かずに「放っておく」と答えた人が4.8%いました。これを性年代別✕デンタルIQ別に見ると、デンタルIQが高めの30代女性と40代女性は、「すぐ歯科医院に行く」(30代56.0%、40代62.0%)と答えた割合が半数を超え多くなっています[図10]。


■デンタルIQを高めることが大切だと思う三大理由

「おいしいものを食べたい」「全身の健康を守りたい」「自分の歯を長持ちさせたい」

 デンタルIQを高めることは[図3]で9割以上の人が重要と答えていましたが、ここでは大切だと思う理由を聞きました。「いつまでもおいしいものを食べたいから」(58.9%)が最も高く、次いで「全身の健康を守りたいから」(56.2%)、「義歯などを使わずに、自分の歯を長持ちさせたいから」(50.1%)が続き、三大理由となっています。

 デンタルIQ別に見ると、デンタルIQが高めの人ほど大切と思う割合が総じて多くなっています[図11]。

 

■歯とお口の健康を「大切にできていない」と感じる一番の理由は  

「歯科健診や歯科医師による定期チェックを受けていないから」

 自分の歯とお口の健康を大切にできているかと聞くと、68.4%が「大切にできている」(できている14.4%+少しはできている54.0%)と答え、31.6%は「大切にできていない」(あまりできていない26.7%+できていない4.9%)と答えました。デンタルIQ別に見ると、デンタルIQが高めの人は「大切にできている」が75.0%とやや多くなっています[図12-1]。

 大切にできていないと答えた284人にその理由を聞くと、「歯科健診や歯科医師による定期チェックを受けていないから」(45.1%)がトップに挙がりました[図12-2]。

 

■歯とお口の健康を保つバロメーターとなる歯科医院での定期的なチェック

「3カ月に1回以上」の頻度で受診しているのは5人に1人

 歯科医師による定期チェックが、歯とお口の健康を保つ一つの基準として認識されていることがわかりました。

 そこで、歯の定期チェックの頻度を聞いてみました。5人に1人は「3カ月に1回以上」(22.9%)受けており、「半年に1回程度」(16.6%)受けている人を合わせると4割(39.4%)が、「年に1回程度」(10.6%)を含めると半数(50.0%)が定期的に歯科医院でチェックを受けていることがわかりました。定期的に受診するのは男性(48.0%)より女性(52.0%)に多く、20代 45.0%、30代 50.7% 40代 54.3%と年代が上がるにつれ増えています。また、デンタルIQ別に見ると、デンタルIQが高め人の方が定期健診を受ける割合が多くなっています[図13-1]。

 また、定期的にチェックを受けていると答えた450人に、受けてよかったことを聞くと、「歯科医師のチェックを受けることで安心できる」(54.4%)、「早めにむし歯を発見できる」(52.7%)、「歯をいつもきれいに保てているような気がする」(43.3%)、「お口の異変にすぐ気づくことができる」(41.3%)などが挙げられました[図13-2]。 

 

■人生100年時代に大切なのは、「頭・脳」に次いで「歯・お口」

 日本は人生100年時代を迎えようとしています。これからの長寿社会において、心臓以外で健康を保つことが重要と思う体の部位を挙げてもらいました。すると、「頭・脳」(89.8%)に次いで「歯・お口」(67.2%)の重要性が高いということがわかりました[図14]。

 人生100年時代の到来とともに健康寿命への注目が高まる現代。健康寿命を伸ばし、元気で自立した生活を送るためには、全身の健康に大きく関わる歯やお口の健康管理がますます重要になると認識されているようです。

図14

日本歯科医師会からの総括

■調査について

 日本歯科医師会では、この度、国民の皆さまに歯とお口の健康への興味関心を高めていただくことを目的に、「デンタルIQに関する意識と実態調査」を実施しました。本会では10年以上にわたり、「歯科医療に関する生活者調査」を実施してきておりますが、「デンタルIQ」というキーワードを用いて調査を行ったのは、初の試みとなります。

 今回の調査結果では、国民の9割が「デンタルIQ」の重要性を認めるという結果や、健康寿命延伸のために重要と考える体の部位を尋ねたところ、「歯とお口の健康」が2位にランクインするなど、国民の皆さまの中でも、その重要性の認知・理解は確実に高まってきていることが明らかになりました。

 また、デンタルIQ別に各設問の回答傾向を分析すると、デンタルIQの高さが、実際の行動にも関連するということがわかりました。デンタルIQが高い人、すなわち歯とお口の健康は大切なものであるという意識が高いとされる人は、定期健診の受診率がデンタルIQが低い人の倍近くになり、各セルフケアの実践度(実際の行動に移す度合い)も総じて高くなっています。

これらの結果を踏まえ、日本歯科医師会としては、国民の皆さまの歯とお口の健康への意識や関心を高めていただくきっかけづくりを行うため、引き続き、情報発信や各種啓発活動を行ってまいりたいと考えます。

 

 歯とお口の健康が全身の健康と密接に関わり、健康寿命の延伸につながることは、人生100年時代の到来を迎えた現代では、ますます重要視されると考えます。年齢を重ねても、しっかり自分の口でおいしくものを食べる、家族や友人と会話を楽しむ、笑い合う。そういった生活の基本的な機能がしっかりと維持されるように、日本歯科医師会は歯とお口の健康管理を通じて、国民の皆さまの全身の健康への第一歩を後押しできるよう、引き続き努めてまいります。

 

■デンタルIQについて

 デンタルIQは、しばしば「歯科に関する知識度」の高さに比例するものとして捉えられることもありますが、日本歯科医師会が展開する「いい歯は毎日を元気にプロジェクト」では、「歯とお口の健康についてどのくらい大切に考えられているか」という、意識や関心の高さを問うものとして捉えたいと考えます。

 過去と比較して、歯科に関する知識をつける啓発本や口腔環境改善のための技術力は格段に向上しましたが、日本人の「自身の口腔環境に対する意識」は、残念ながら欧米諸国と比べ、低い現状があります。歯とお口の健康状態をさらに高めていくためには、皆さまの意識の変化も不可欠です。

 「いい歯は毎日を元気にプロジェクト」では、デンタルIQについての考えを改めてアップデートし、「歯とお口の健康への意識や関心の度合いを示すもの」と捉え直すことで、ご自身の歯とお口の健康を見つめ直すきっかけになることを願っています。

 

11/8 いい歯の日公開 「デンタルIQチェッカー」について

■自分のデンタルIQをセルフチェックできる「デンタルIQチェッカー」

公式サイト(https://bestsmile.jp) にて公開

 

 いい歯は毎日を元気にプロジェクトでは、「デンタルIQ=歯とお口の健康についてどのくらい大切に考えられているか」について、より広く深く生活者の皆さまに理解していただくために、自分のデンタルIQが診断できる「デンタルIQチェッカー」を開発し、いい歯の日の11月8日(月)に公式サイト内(URL https://bestsmile.jp/dentaliq/)にて公開します。

 「デンタルIQチェッカー」は○✕式のクイズコンテンツで、歯とお口の健康をどのくらい大切に考えられているか、ご自身が歯とお口の健康に関してどのくらい意識を持って取り組めているか、意識と実践の度合いを確認いただくことができます。今回の調査でも使用した歯とお口の健康に関する「知識・認識編」(P1図4参照)と、自身の健口習慣から判定する「行動編」(調査図7参照)があります。「知識・認識編」は、歯とお口の健康に関する15問のクイズに○×形式で回答いただき、その正解率から「いい歯ちゃん」「もう少しでいい歯ちゃん」「悪い歯ちゃん予備軍」の3タイプで判定されます。「行動編」は10個の“健口”実践度から、レベル1〜4の四段階のレベルで計測し、レベルに応じたアドバイスを提示します。

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