Art × Science : 顔プロジェクト 表情を通して伝わるその人らしさ

花王株式会社広報部のプレスリリース

 花王は、価値観や生き方がにじみ出る “個性が輝く顔”の魅力を探求するため、2019年から、特殊メイクアップアーティスト・現代美術家のKazu Hiro氏との共同研究を進めてきました。Kazu Hiro氏はオードリー・ヘプバーンの若いころ・年を重ねた後の2体の彫像を制作する際、モデルの内面を“表情“によって表現したといいます。今回花王は、彫像に表現された内面が、彫像を見る人にどのように受け取られたのかを検証しました。

 若いころ・年を重ねた後の2体の彫像を正面から真横までの9角度から撮影した画像を用意。20~60代の男女59名に、外見や性格をあらわす際に一般に用いられる「魅力的な」などの形容詞10種に加え、制作者が彫像を通して表現しようと意図した「思いやりのある」「意志のある」などの内面印象をあらわす7種の言葉※1がどの程度あてはまるか、また、6種の感情※2を画像からどの程度感じるかを評価してもらいました。

制作者が込めた内面印象はどのように受け取られたか?
 この結果、無表情な中に無垢さや純粋さを表現した若いころの像では、「意志のある」「自信のある」といった印象が、「他者への優しさ」「思いやり」よりも強く感じられていました。
一方、複雑な表情を組み合せて豊かな内面を表現することを意図した、年を重ねた像を正面から見ると、「思いやり」「他者への優しさ」「自信のある」「意志のある」といった4つの内面印象が同じ程度に感じられていました。さらに、この印象は彫像を見る角度によって変わり、横から見た場合には、自信や意志のある印象がより強く感じられていました(図1)。

彫像の感情も角度によって変化
 彫像から見る人が受け取る感情も同様に、角度によって種類や強さが異なっていました。若いころの像は左横から見た場合には「喜び」を、右横から見た場合には「悲しみ」を強く感じ、年を重ねた像を正面から見た場合には「喜び」を、横から見た場合には「悲しみ」を強く感じていることが示されました。
 花王は、2020年にFACS※3を用いた評価で、2体の彫像は見る角度によって各表情動作の強度が異なって見えることを確認しており※4、こうした表情の多面的な見え方から人は相手の多様な心の内を推測しているものと考えます。

 私たちは、日々何気なく顔に浮かべる表情、笑顔・怒り顔といった単純ではない表情の中に、その人らしさ、その人の内面や人生経験を感じさせる深みのある魅力を感じているのではないでしょうか。こうした知見をふまえ、今後は自分らしさを表現し、自信につながるような化粧の開発を進めていきます。

 この内容は、第26回日本顔学会大会(2021年9月18~19日・オンライン開催)で発表しました。

※1思いやりのある、包容力のある、他者に優しい、意志のある、純粋な、不安な、自信のある
※2 喜び、怒り、悲しみ、嫌悪、驚き、恐怖
※3 Facial Action Coding System 顔の表情動作を独立した最小単位にわけて、その動きの強度を客観的に記述する方法
※4 2020年12月22日 花王ニュースリリース 
複数の表情の共存が”個性が輝く顔”につながる Kazu Hiro氏制作によるオードリー・ヘプバーン彫像の分析
https://www.kao.com/jp/corporate/news/rd/2020/20201222-001/
 

本彫像は、オードリー・ヘプバーンを忠実に再現したものではなく、アーティストの解釈によって作られています。

 

 

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