ギリアドのベクルリー、大規模なデータ分析により、COVID-19入院患者の死亡率を低下させることを発表 

ギリアド・サイエンシズのプレスリリース

ギリアドのベクルリー(R)(レムデシビル)、大規模な3つのレトロスペクティブ・リアルワールドデータ分析により COVID-19入院患者さんの死亡率を低下させることが明らかに 

― 約10万人の入院患者さんから得られたリアルワールドエビデンスにより、COVID-19治療におけるベクルリー投与の臨床的知見が得られる―

ギリアド・サイエンシズ(本社:米カリフォルニア州フォスターシティ、ナスダック:GILD、以下「ギリアド」)は本日、ベクルリー(レムデシビル)を投与された患者さんの死亡率と退院に関する既存の各種データへの新たな追加となる、COVID-19入院患者さんの実臨床に関する3つのレトロスペクティブ研究から得られた良好なデータを発表しました。今週開催された世界微生物フォーラム(WMF)で発表された3つのリアルワールド解析では、全患者集団においてベクルリー投与を受けた入院患者さんは対照群と比較して、死亡率が有意に低いことが確認されました。この死亡率の低下は、ベースラインで受けていた酸素補給の種類を問わず観察されました。本結果はパンデミックのいずれの期間やさまざまな地域で一貫して観察されたものです。また、2つの研究においては、ベクルリーを投与された患者さんが28日目までに退院する確率が有意に高まったことも確認されました。

 

WMFで発表された3つのリアルワールドデータ解析は、98,654名のCOVID-19入院患者さんが対象で、このうち2つのレトロスペクティブ研究では、HealthVerity社とPremier Healthcare社のデータベースから米国における治療経過および臨床転帰を観察しました。3つ目の解析では、クローバル非盲検試験であるSIMPLE-Severe試験の拡大フェーズにおいてベクルリーの10日間投与を受けた患者さんと、リアルワールドデータを用いたレトロスペクティブな縦断的コホート研究で標準治療を受けた患者さんの臨床転帰の比較がされました。これら3つの分析では事前に設定された評価項目や強固なマッチング、そして重み付けアプローチをはじめとするベストプラクティスの方法論や感度解析が用いられ、リアルワールド効果比較研究に知見を有する独立した第三者である専門家の協力を得て実施されました。また、他のデータベースを用いたベクルリーのリアルワールドエビデンス(以下「RWE」)の解析は現在も進行中で、結果や結論が異なる可能性があります。

 

COVID-19入院患者さんを対象としたプラセボ対照二重盲検試験ACTT-1では、プラセボ群(n=521)と比較して、ベクルリー群(n=541)では、29日目の死亡率が低下する傾向が全体集団で見られました(11% vs. 15%、HR:0.73、95%、CI:0.52~1.03)が、統計的な有意差はありませんでした。全体集団における疾患の重症度に幅があることから、ベースライン時の患者さんの臨床状態によって死亡率に差があるかどうかを確認するため、多重検定の調整を行わない事後解析を実施しました。この解析では、ベースライン時点で低流量酸素補給を必要とする患者さんがベクルリーの投与を受けた場合、29日目の死亡率が70%統計的に有意に減少しました(4%対13%、HR:0.30、95%、CI:0.14~0.64)。他のサブグループ群では、臨床状態のベースラインにおける死亡率の差に有意差はみられませんでした。これまでに発表された他の研究では、結果と分析方法の両方で、死亡率に対する影響はさまざまでした。

 

「臨床試験は、治療法の有効性と安全性のプロファイルを理解するためには役立ちますが、試験の規模には限界があり、その結果、試験中のイベント発生率が低くなり、治療効果のあらゆる可能性を評価することができません。一方、より大きなサンプルサイズと強固な方法論を備えた大規模なリアルワールドデータは、患者集団全体および臨床的に重要な患者さんの両方における治療効果を評価するのに役立ちます」「これらのリアルワールド分析は、COVID-19入院患者さんにおけるレムデシビル(ベクルリー)の有効性について、死亡率や退院の確率への影響など、臨床医に追加データを提供するものです」とベイラー大学医療センターおよびベイラー・スコット&ホワイト研究所 心臓専門医のRobert L. Gottlieb医学博士は述べています。

 

ランダム化比較試験(以下「RCT」)は、医薬品の有効性と安全性を評価するための最良の手段であることに変わりはありませんが、RWEは臨床現場での治療法に関する重要なデータを提供し、RCTデータを補完します。これらのRWE研究は、疾病の臨床管理が進化し続け、新規の臨床試験の開始がそれに追いつかない可能性のあるパンデミックにおいて、より重要性を増します。またRWEは、治療法の決定をリアルタイムで強固なものにするために、現場の医療従事者からも強く求められています。リアルワールドデータによる臨床研究は、データの種類やサイズ、潜在的な交絡やバイアスを軽減するために使用された方法論に基づいて解釈されるべきであり、RWEは入手可能な全てのデータと照らし合わせ、慎重に検討する必要があります。

 

米国におけるベクルリーの適応は、成人および小児(12歳以上で体重40kg以上)の入院患者さんにおけるCOVID-19治療です。なお米国においてベクルリーは、同薬剤またはその成分にアレルギー症状を起こしたことがある人には禁忌とされています。ベクルリーに関する米国におけるその他の重要な安全性情報については、以下を参照してください。

 

Aetion社とHealthVerity社による解析 (iPoster #WMF21-2970)

HealthVerity社がAetion社と共同で実施した米国を基準とするリアルワールドデータを用いたレトロプロスペクティブ比較分析において、2020年5月1日から2021年5月3日の間にベクルリー治療を受けたCOVID-19入院患者さん(n=24,856)と対象群(n=24,856)の死亡率および退院の確率を評価しました。対照群は、入院日、入院からベクルリー投与開始までの日数、年齢、性別、ベースライン時点の酸素必要量、コルチコステロイド使用量に関するリスクセットサンプリングを用いて、ベクルリーの治療を受けた患者さんと1対1でマッチングさせました。ベースライン時点の臨床的・人口統計学的特性、併存疾患、併用薬に基づいて比較可能なグループを確立するために、1:1の傾向スコアによるマッチングが適用されました。主要評価項目は、死亡までの期間を対象としました。

 

その結果、ベースラインの酸素必要量に関わらず、ベクルリー群は、対照群に比べて統計的に死亡リスクが有意に23%低いことがわかりました(HR:0.77、95%、CI:0.73~0.81)。全般的には、ベクルリー投与による5日間のフルコースを完了した患者群(ベクルリー5日投与群)において、28日目までに退院できる確率が対照群に比べて有意に高い結果となりました(HR:1.19、95%、CI:1.14~1.25)。またこの効果は、ベースライン時点で低流量の酸素補給を受けていた患者群において最も顕著であることがわかりました。

 

Premier社による解析iPoster #WMF21-2507

Premier Healthcare Databaseのリアルワールドデータを用いたレトロプロスペクティブ比較分析において、2020年8月から11月の間に治療を受けたベクルリー群(n=28,855)とベクルリーによる治療を受けなかった対照群(n=16,687)で死亡率を比較しました。

 

本解析は、入院後2日以内にベクルリーを投与された成人入院患者さんと、入院時にベクルリーを投与されなかった患者さんを対象としました。患者群は、ベースライン時点の酸素必要量、病院、2カ月以内の入院期間でマッチングさせ、治療開始後3日以上入院した患者さんを対象とし、死亡までの期間を主要評価項目としました。

 

本解析においてベクルリーを投与された患者群では、投与されなかった患者群と比較して、14日目(HR:0.76、95%、CI:0.70~0.83、p<0.0001)および28日目(HR:0.89、95%、CI:0.82~0.96、p=0.003)の死亡率が有意に低下しました。また、ベースライン時点で酸素療法を必要としない(HR:0.69、95%、CI:0.57~0.83、p<0.001)か、低流量酸素療法(HR:0.68、95%、CI:0.60~0.77、p<0.0001)、侵襲的人工呼吸器またはECMO(HR:0.70、95%、CI:0.58~0.84、p=0.0001)の処置を受けたベクルリー投与群は14日間の死亡率が有意に低い結果となりました。また、28日目の死亡率についても、酸素療法を必要としない(HR:0.80、95%、CI:0.68~0.94、p=0.007)か、低流量酸素療法(HR:0.77、95%、 CI:0.68~0.86、p<0.0001)、侵襲的人工呼吸器またはECMO(HR:0.81、95%、CI:0.69~0.94、p=0.007)による処置を受けたベクルリー投与群において、有意な減少がみられました。ベースライン時点で高流量酸素療法を受けていたベクルリー投与群では、14日目の死亡率は有意に低い結果となりました(HR:0.81、95%、CI:0.70~0.93、p=0.0043)が、28日目では統計的に有意差はありませんでした(HR:0.97、95%、CI:0.84~1.11、p=0.646)。

 

SIMPLE-Severe 試験による解析 (iPoster #WMF21-2969)

SIMPLE-Severe試験は、重症のCOVID-19(室内空気中の酸素飽和度が94%未満、または酸素補給を受けており放射線学的に肺炎の画像所見がみられる)成人入院患者さんを対象とした、ランダム(無作為)化、非盲検、多施設共同による第III相試験で、この結果についてはすでに発表されています。本試験では、ベクルリーの5日間および10日間の投与期間を評価することを主な目的としていたため、初期フェーズでは標準治療の比較対照群を設けていませんでした。WMFで発表されたレトロスペクティブ・リアルワールド解析では、SIMPLE-Severe試験の非盲検拡大フェーズでベクルリー投与を受けたCOVID-19入院患者さん(n=1,974)と、ベクルリー投与を受けなかったCOVID-19入院患者さんを対象としたリアルワールドの縦断的レトロスペクティブ・コホート研究の傾向スコアで重み付けした入院患者さん(n=1,426)の死亡率を比較しました。傾向スコアによる重み付けを行い、ベースライン時点の人口統計、地域、臨床特性、併用薬、併存疾患が一貫していることが確認されました。また、死亡までの期間を主要評価項目としました。

 

この解析では、ベースライン時点の酸素必要量に関わらず、全ての患者群においてベクルリー治療を受けた患者群は、ベクルリー治療を受けていない患者群と比較して、統計的に28日後の死亡率を54%有意に低下することが確認されました。(HR:0.46、95%、CI:0.39~0.54、p<0.001)。ベクルリーの10日間投与を完了した患者群は、ベクルリー投与を受けなかった患者群と比較して、28日以内の退院までの期間が有意に短かったことも示されました(HR:1.64、95%、 CI:1.43~1.87、p<0.001)。退院までの期間においては、ベースライン時点で侵襲的人工呼吸器またはECMO治療を受けていた患者群では有意差はありませんでした(HR:0.92、95%、 CI:0.62~1.36、p=0.68)。

 

ACTT-1試験

米国国立アレルギー感染症研究所(NIAID)が実施したグローバルな無作為化二重盲検プラセボ対照第III試験であるACTT-1(NTC04280705)では、標準治療を受けている軽症、中等症または重症のCOVID-19成人入院患者さん1,063名を対象に、ベクルリーの10日間投与の有効性と安全性についてプラセボ群と比較しました。ACTT-1の主要評価項目は、無作為化後29日後までの回復までの期間とし、死亡率については事前に指定された副次的評価項目としました。試験結果および追加で行った死亡率の事後解析結果は、2020年10月8日付の「New England Journal of Medicine」誌に掲載されました。これらの結果はすでに発表されています。

 

ベクルリーに関する米国における重要な安全性情報

 

禁忌

●ベクルリーは、同薬剤またはその成分に対して臨床上問題となる過敏症の既往歴 のある患者には、投与しないでください。

 

警告および使用上の注意

●過敏症(注入に伴う反応とアナフィラキシー反応を含む):ベクルリーの投与中および投与後に、注入に伴う反応やアナフィラキシー反応などの過敏症の発生が報告されています。ベクルリーの投与中および投与後は、過敏症反応の有無について注意深く観察してください。低血圧、高血圧、頻脈、徐脈、低酸素症、発熱、呼吸困難、喘鳴、血管浮腫、発疹、悪心、発汗や戦慄などの症状が現れることがあります。点滴速度を下げると(点滴時間は最長で120分)、これらの反 応が予防できる可能性があります。重度の点滴関連反応が現れた場合は、直ちにベクルリーの投与を中止し、適切な治療を行ってください(「禁忌」を参 照)。

●トランスアミナーゼ上昇のリスク:健常被験者や、ベクルリーの投与を受けたCOVID-19患者にトランスアミナーゼの上昇が認められています。COVID-19の臨床所見としてもトランスアミナーゼ上昇が報告されています。全ての患者について、肝機能検査を行ってください(「用量及び用法」を参照)。ALTが施 設基準値上限(ULN)の10倍を超える場合には、ベクルリーの投与中止を考慮 してください。ALT上昇に伴い肝臓の炎症を示す症状・徴候が認められた場合 は、ベクルリーの投与を中止してください。

●クロロキン・ヒドロキシクロロキンとの併用時の抗ウイルス活性低下リスク: ベクルリーをリン酸クロロキンまたはヒドロキシクロロキン硫酸塩の併用については、細胞培養で拮抗作用が認められ、ベクルリーの抗ウイルス活性が低下する可能性があることから、併用は推奨しません。

 

副作用

●発現率が高かった有害事象(発現率5%以上)は、悪心でした。

●発現率が高かった検査値異常(グレード別のない発現率5%以上)は、ALT上昇 とAST上昇でした。

 

薬物相互作用

●ベクルリーと併用薬の薬物相互作用を検討するヒトを対象とした試験は、行われていません。

 

用法及び用量

●用量:成人患者および12歳以上で体重40 kg以上の小児患者: 1日目に200 mg、2 日目以降は1日1回100 mgを30~120分かけて点滴静注します。

●投与期間:侵襲的機械的人工呼吸および/または膜型肺による体外酸素加法 (ECMO)を必要としない患者:5日間。臨床的改善がみられない場合は、最長 で5日間延長することができます(総投与期間:10日間)。侵襲的機械的人工呼吸および/または膜型肺による体外酸素加法(ECMO)を必要とする患者:10日間

●投与前および投与中の検査:ベクルリーの投与開始前はeGFR、肝機能検査、プ ロトロンビン時間の検査を行い、投与期間中も必要に応じて行ってください。

●腎機能障害:eGFRが30 mL/分未満の患者には、ベクルリーの投与は推奨しません。

●調製と投与:添付文書をご覧ください。

 

妊婦、授乳婦への投与

●妊婦:妊娠中のベクルリーの使用に関するヒトのデータは、十分に得られていません。COVID-19で入院中の妊婦は、重篤な合併症と死亡のリスクが高い状態にあります。ベクルリーの妊婦への使用は、期待される有益性が妊婦と胎児で 考えられる危険性を上回る場合のみに限定してください。

●授乳婦:ベクルリーの乳汁中への移行は不明です。COVID-19患者の授乳については、乳児へのウイルス曝露を避けるための臨床ガイドラインを参照してください。

 

ベクルリーの米国における適応症

米国におけるベクルリーの適応症は、成人および小児(年齢12歳以上で体重40 kg以 上)の入院患者のCOVID-19の治療です。ベクルリーの投与は、病院もしくは入院治療と同等の急性期治療を提供できる医療施設で行ってください。

 

 

ギリアド・サイエンシズについて

ギリアド・サイエンシズは、全ての人々にとって、より健康な世界の実現を目指し、30年以上にわたり医療の革新を追求し、飛躍的な進歩を遂げてきたバイオ医薬品企業です。当社はHIV、ウイルス性肝炎、がんなどの生命を脅かす疾患の予防と治療のため、革新的な医薬品の開発に取り組んでいます。カリフォルニア州フォスターシティに本社を置き、世界35カ国以上で事業を行っています。

 

 

将来予想に関する記述

本プレスリリースは、1995年米国民事証券訴訟改革法(Private Securities Litigation Reform Act of 1995)で定義される「将来予測に関する記述」に該当し、これにはベクルリーに関連して現在進行中の試験や今後行われる臨床試験または研究で良好でない結果が獲られない可能性があるほか、ギリアドおよびその他の団体がこれらの臨床試験や研究を予定通りに完了することができない、または中止に至る可能性もあります。これらのリスク、不確定要素、およびその他の要因により、実際の結果が「将来予想に関する記述」と著しく異なったものとなる可能性があります。本記述の内容は確定したものではありませんのでご注意ください。これらのリスクやその他のリスクについては、米国証券取引委員会に提出している、2021年 3月31日までの四半期のギリアド社四半期報告書 (フォーム10-Q)で詳細に説明しています。将来予想に関する記述は全てギリアドが現在入手できる情報に基づいており、ギリアドは将来予想に関する記述を更新する義務を負いません。

 

 

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