クリニックフラウ栄のプレスリリース
子宮頸がんワクチンとは、子宮がんを発症させるウイルス「HPV」の感染を防ぐワクチンです。広告やマスメディアの特集等により、子宮頸がんワクチンの認知は広まったと考えられます。
しかし、子宮頸がんの原因やワクチンの安全性・有効性に関する認知は、不十分である可能性が考えられたため実態調査を行いました。
- 子宮頸がんワクチンとは? 本調査の背景と目的
本調査は、子宮頸がんワクチンに対する正しい理解の拡大を目的としています。
子宮頸がんの原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)と呼ばれるウイルスの感染です。性交渉の経験がある女性のうち50%~80%は、HPVに感染していると推計されており、そのうち一部が子宮頸がんを発症することがあります。
特にHPV16型・18型は子宮頸がんへ進行しやすく、進行スピードも速いとされているウイルスです。
子宮頸がんワクチンの認知度は低くないと考えられますが、2013年頃から子宮頸がんワクチンの副反応の報道が過熱したことなどから、子宮頸がんワクチンの接種に不安を感じている方も多いと推測できます。
そこで今回2021年10月11日から14日にかけて、当院に受診歴のある10代から60代女性569人の女性を対象とし、子宮頸がんワクチンに関する7つの質問から、認知度・理解度に関するアンケート調査を行いました。
対象者に行った質問は以下の7問です。
①子宮頸がんの原因はHPVであることを知っていますか?
②HPVは性交渉で感染することを知っていますか?
③子宮頸がん検診を3年以内に受けましたか?
④子宮頸がんワクチンを打ちましたか?
⑤(Q4で「はい」と答えた方に対して)家族や親しい人にお勧めしたいですか?
⑥(Q4で「いいえ」と答えた方に対して) 子宮頸がんワクチンを打ちたいですか?
⑦接種するにあたって知っておきたい、もしくは不安に感じていることは何ですか?
- 「子宮頸がんワクチン」に関するアンケート結果
当院に受診歴のある10代から60代女性569人の女性を対象として、アンケート調査を行いました。Q1からQ7まで質問を作成し、それぞれ「はい」「いいえ」の2択、あるいは一部フリー回答を含めた3択形式で回答を得ました。
◼︎Q1.子宮頸がんの原因はHPVであることを知っていますか?
- 当データを使用の際は、【名古屋市中区栄の乳腺外科・婦人科「クリニックフラウ栄( https://www.clinic-frau-sakae.com/ )」のデータを参照】と記載くだい。
はじめに子宮頸がんの原因がHPVであることを知っているか否かを質問しました。調査の結果、「はい」と答えた方は全体の68.4%となり、約7割の方が知っていることがわかりました。
また、年代別に見ると10代が半々、その後20代・30代と出産・性交渉数の多い生殖年齢になるにつれて認知度が上昇していることがわかります。さらに、がん発生率がより高まる40代になると、さらに認知が広がっています。
逆に、50代以上のいわゆる閉経後世代になると性交渉の頻度も減るためか、認知度が低下する結果となりました。
調査対象者は当院を利用した方のため、かたよりがないとは言い切れません。しかし、それを差し引いても、当院で子宮頸がん検診を受診される女性の実際の行動と相関性があらわれました。
◼︎Q2.HPVは性交渉で感染することを知っていますか?
次に、HPVが性交渉で感染することを知っているかどうかを質問しました。年代別に回答を見ると、10代から40代にかけて「はい」と答えた方の割合が多くなっています。
10代から40代にかけて徐々に認知度が上がっていき、50代以上になると認知度は低下する結果となりました。年齢別の傾向としては、Q1とほとんど同じようになっています。
このことから、HPVを知っている方は感染原因も知っていると推定ができます。
そこで、Q1で「はい」と答えた方と、「いいえ」と答えた方に分けて、HPVが性交渉で感染することを知っているか調査しました。次の調査結果をご覧ください。
子宮頸がんの原因がHPVであることを「知っている方」のうち、93.7%が「HPVは性交渉で感染するウイルスである」と認知していることがわかりました。
それと同時に、子宮頸がんの原因がHPVであることを「知らない方」の全体の67.4%が、性交渉でHPVが感染することも知らないことが明らかになりました。
推定通り、子宮頸がんの原因と感染経路の認知度には相関性がある結果となっています。
◼︎Q3.子宮頸がん検診を3年以内に受けましたか?
次に、子宮頸がん検診を3年以内に受けたかどうか質問をしました。「はい」と答えた方は、20代〜50代で平均80%近いのに対し、10代は30.0%と若い世代の受診率が低い結果となっています。
また、全体で見ると81.7%もの方が3年以内に子宮頸がん検診を受けていることがわかりました。当アンケートの回答者のほとんどが当院を受診した方なので、受診歴のない方を含めた全国データ「43.7%」(2019年国民生活基礎調査)と比べると、高い数値となっています。
この調査結果から、婦人科・乳腺科に受診したことがある方は、子宮頸がん検診の受診率が高いことが読み取れます。
◼︎Q4.子宮頸がんワクチンを打ちましたか?
さらに、子宮頸がんワクチンを打ったことがあるかを調査したところ、「はい」と答えた方が全体で約4分の1いることがわかりました。
年代別で見ると40代・50代・60代の接種率が低いことがわかります。子宮頸がんワクチンの使用承認がおりたのは2009年のため、当時30歳以上であった方(2021年現在40歳以上の方)の接種率が低いことは当然の結果と言えます。
また、このアンケート結果をもう少し詳細に見てみると、過去の社会的経緯が見て取れました。10代〜20代の接種率を1歳ずつに分けて分析した、次の結果をご覧ください
この表は、16歳から30歳までのワクチン接種率を年齢別にまとめたものです。
このように、年齢によってワクチン接種率に違いが表れている原因としては、以下の社会的背景が関係していると考えられます。
・2009年12月:子宮頸がんワクチン 接種開始
・2013年04月:子宮頸がんワクチン 定期接種(小学校6年生から高校1年生の女子が対象)
・2013年06月:厚労省より子宮頸がんワクチンの積極的接種勧奨の差し控え
2009年12月から子宮頸がんワクチン接種が可能となりました。その後、2013年4月に定期接種が開始されたものの、その2ヶ月後に厚労省より積極的接種勧奨を差し控える通知がありました。
その上で表を見てみると、22~27歳(2021年現在)はワクチンの積極的接種勧奨の差し控え前(2013年以前)の時点で中高生だったため、ワクチン接種率が70%と高いです。
しかしその一方、積極的接種勧奨の差し控え以降の世代である、21歳以下(2021年現在)の接種率は大幅に減少しており、社会的背景が色濃く反映されている結果となっています。
◼︎Q5.(Q4で「はい」と答えた方に対して)家族や親しい人にお勧めしたいですか?
次に、「子宮頸がんワクチンを接種した方」に対して、家族や親しい人にお勧めしたいかどうか質問をしました。
「はい」と答えた方が77.2%いる一方、「いいえ」と答えた方は22.8%と、4人に1人がワクチン接種をお勧めしたくないことがわかりました。
「いいえ」を選択する方がいる背景としては、
・厚労省から積極的勧奨の差し控えが解除されていなかったこと
・自費接種による経済的負担が大きいこと(定期接種の公費負担は12〜16歳まで)
・複合性局所疼痛症候群(CRPS)の副作用に不安を感じていること
・子宮頸がんやワクチンの正しい情報が少ないこと
などが推定されます。
◼︎Q6.(Q4で「いいえ」と答えた方に対して)子宮頸がんワクチンを打ちたいですか?
6問目では子宮頸がんワクチンを「接種していない方」に、子宮頸がんワクチンを打ちたいかどうか調査をしました。
年代別にみると、10代・20代のこれから出産を迎える世代は、約60%がワクチンを打ちたいと考えていることがわかります。
一方で、30代以上の方で「はい」と回答した割合は20〜40%と、性交渉の経験があるであろう世代でも約3人に1人がワクチンを打ちたいと考えている興味深い結果となりました。
子宮頸がんは性交渉によるHPV感染が主な原因のため、子宮頸がんを予防するには、セクシャルデビュー前のワクチン接種が特に有効です。しかし、30~40代のワクチン接種に意味がないわけではありません。
子宮頸がんワクチンの一種「シルガード9」「ガーダシル」の添付文書では、ワクチン接種年齢の上限が設けられていません。
HPVの感染から子宮頸がんを発症するまでの期間は数年~数十年とされていますが、数年で子宮頸がんを発症してしまうリスクを考えると、30~40代でもワクチン接種は選択肢の一つと言えます。
◼︎Q7. 接種するにあたって知っておきたい、もしくは不安に感じていることは何ですか?
最後に、子宮頸がんワクチンを接種する際に知っておきたい、不安に感じていることは何か質問しました。
「効果について知りたい」と答えた方は21.9%、「副作用について知りたい」と答えた方は50.7%、「費用について知りたい」と答えた方は23.7%となりました。
全体の傾向としては、副作用に関して不安になっている方が多いことがわかります。
実際、「複合性局所疼痛症候群」が子宮頸がんワクチンの副作用だろうと、2013年にメディアで取り上げられた経緯があります。
それにより、「副作用が怖いワクチン」「危険なワクチン」という認識によって、子宮頸がんワクチンの接種を躊躇している方がいる可能性が示唆されました。
しかし現在のところ、「複合性局所疼痛症候群」がワクチンの影響によるものとは言えないと、以下の見解をもって結論付けられています。
・2016年:厚労省副反応検討部会による全国疫学調査(祖父江班)の報告
・2018年:名古屋市民の大規模アンケート調査による論文(名古屋スタディ)
現在は子宮頸がんワクチンの安全性について、科学的エビデンスがそろった状況です。
このことから、当院は啓蒙活動の必要性を感じました。行政の活動として、子宮頸がんワクチンは副作用が怖いワクチンではないと、学生時代の性教育にも取り入れることが求められると考えています。
- 今回の調査結果を受けて
当院の受診歴のある10代から60代女性に対してアンケート調査を行い、HPVワクチンに対する認識やワクチン接種への動向、ワクチンに対する不安などを調査しました。
調査の結果、子宮頸がんワクチンの接種率は全年代で約4分の1程度ということが判明しました。また、接種を躊躇させている要因として、子宮頸がんの副作用に対する不安があると考えられました。
現在は子宮頸がんワクチンの安全性・有効性の科学的エビデンスがそろった状況です。
今後、クリニックフラウ栄をはじめ、我々婦人科医における子宮頸がんの予防・治療の取り組みとして、
・安心して子宮頸がんワクチンの接種ができる状況を作ること
・子宮頸がんワクチンの安全性と有効性について説明し、納得してもらうこと
を指針とし、子宮頸がんワクチンの普及につなげていくことが肝要であると感じられました。
厚労省は2021年11月26日、ワクチンの積極的勧奨を2022年4月から再開する見通しを発表しました。
この積極的勧奨の再開からHPVワクチンの普及、および接種率が高まり、近い将来には子宮頸がんが根絶されることが期待されます。
- 子宮頸がんワクチンの効果について|特設ページを作りました
子宮頸がんワクチンは、ヒトパピローマウイルス感染症を防いで、子宮頸がんなどの発症を予防するワクチンです。
しかし、子宮頸がんワクチンの効果を正しく理解していない方、また「副作用が怖いワクチン」と誤って認知・理解している方も多いと思われます。
子宮頸がんワクチンの接種率を上げるには、子宮頸がんワクチンの効果やリスクなど正しい情報が提供されなければなりません。そこでこの度、子宮頸がんワクチンの啓発を目的とし、子宮頸がんワクチンの効果や副作用、種類などを詳しく解説する特設ページを作りました。
クリニックフラウ栄は、子宮頸がんワクチンの正しい情報の発信に努めています。また、子宮頸がん検診( https://www.clinic-frau-sakae.com/gynecology/uterine-cancer/ )や子宮頸がんワクチンの接種を行って子宮頸がんの根絶を目指しています。
特設ページURL:
https://www.clinic-frau-sakae.com/gynecology/hpv-vaccine/
- 本アンケートに関するお問い合わせ先
クリニックフラウ栄
お問い合わせ窓口
https://www.clinic-frau-sakae.com/contact/
- 調査主体(クリニックフラウ栄)について
当院は「女性のライフスタイルをトータルにサポートする」ことを診療方針とするクリニックです。婦人科医および乳腺外科医である院長が、婦人科( https://www.clinic-frau-sakae.com/gynecology/ )や乳腺外科( https://www.clinic-frau-sakae.com/breast-surgery/ )の診療を行っています。オンライン診療も可能です。じっくりと患者さまのお話をうかがった上で丁寧な治療説明を行い、患者さまにご納得いただける治療ができるよう心掛けております。
設立:2016年01月12日
代表者名:院長 宮島 慎介
所在地:〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄3-17-15 エフエックスビル3F
HP:https://www.clinic-frau-sakae.com/
- データ利用について
当データを使用の際は、【名古屋市中区栄の乳腺外科・婦人科「クリニックフラウ栄( https://www.clinic-frau-sakae.com/ )」のデータを参照】と記載ください。