株式会社アデランスのプレスリリース
毛髪・美容・健康のウェルネス事業をグローバル展開する株式会社アデランス(本社:東京都新宿区、代表取締役社長 津村 佳宏)は、2022年4月14日(木)~4月16日(土)に熊本城ホール(熊本県熊本市)で開催された第122回日本外科学会定期学術集会において、アデランスがスポンサーシップをとるランチョンセミナーを開催しました。
会期中の4月15日(金)にアデランス共催のセミナーが実施され、アデランスと共同研究を進める大分大学医学部 消化器・小児外科学講座 高度救命救急センター 助教の河野 洋平先生と、昭和大学医学部外科学講座乳腺外科学部門 講師 診療科長補佐の垂野 香苗先生が講演し、大分大学医学部 消化器・小児外科学講座 教授の猪股 雅史先生が司会を務めました。
日本外科学会は外科学に関する会員相互ならびに内外の関連学術団体との研究連絡、知識の交換、提携の場となることを通して外科学の進歩普及に貢献するための事業を行っております。学術文化の発展と外科医療の向上に資することで国民の健康と福祉に寄与することを目的に、全国各地の4万人を超える会員によって組織されている一般社団法人です。
第122回を迎える今回の定期学術集会は、「外科学の未来を拓く~The Future of Surgery」をテーマに開催され、アデランスが本学会に共催するのは今回が2回目となります。
左から垂野先生、猪股先生、河野先生
アデランスはトータルヘアソリューションにおけるリーディング企業の使命として、経営理念の一つである「最高の商品」の開発および毛髪関連業界の発展を目指し、機能性人工毛髪や医療用ウィッグの研究開発、育毛・ヘアスカルプケア関連研究、抗がん剤脱毛抑制研究など、産学連携において毛髪関連の研究を積極的に取り組んでおります。
その産学共同研究の成果を国内外の学会を通じて発信し、研究成果を発表いただくことは、毛髪界の更なる進展となり、ひいては多くの方の髪の悩みの解消に寄与し、当社のCSR(企業の社会的責任)であると考えております。
■アデランスランチョンセミナー 講演概要
司会
大分大学医学部 消化器・小児外科学講座
教授 猪股 雅史 先生
▶ 演題1
演者
大分大学医学部 消化器・小児外科学講座
高度救命救急センター 助教 河野 洋平 先生
演題
抗がん剤脱毛のメカニズム解明と予防法開発
―産学連携抗がん剤脱毛予防プロジェクト―
講演内容
【はじめに】
がん医療の進歩により治療を継続しながら社会生活を送るがん患者が増加している現代において、手術、化学療法、放射線治療などの治療によって生じる外見変化はがん患者にとって精神面やQOLへの影響が大きい。近年、外見症状に対するケアの重要性が認識されるようになり、現状と課題が明らかになりつつある。なかでも脱毛は、乳癌をはじめとした様々な領域の悪性疾患に対する化学療法において高頻度に発症する副作用である。我々は産学連携研究開発プロジェクトとして抗がん剤脱毛対策に取り組んでおり、今回、研究内容について紹介する。
【プロジェクト研究内容】
1.抗がん剤脱毛のメカニズムを解明する基礎研究
シクロフォスファミドを用いた抗がん剤誘発脱毛動物モデルの毛包周囲環境の変化を病理組織学的に検討し、毛包周囲の血管透過性亢進が病態の一要素であることを明らかにした。
2.抗酸化物質αリポ酸誘導体を用いた脱毛予防剤の研究開発
空気中でも安定した強力な抗酸化力を有し外用剤として適するαリポ酸誘導体の経皮投与は、抗がん剤脱毛モデルに対して脱毛を抑制し、病理組織学的検討では炎症細胞浸潤と毛根・毛幹の破壊が軽減された。
3.抗がん剤脱毛に対するαリポ酸誘導体の効果を検討する臨床研究
術後補助化学療法施行乳癌患者100名を対象とした多施設共同研究にてαリポ酸誘導体の効果を検討した。1%αリポ酸誘導体含有ローションの頭皮塗布により脱毛からの回復を促進する効果を示した。
4.産学連携による製品開発
毛髪関連のリーディングカンパニーとの産学連携共同プロジェクトを経て、抗がん剤脱毛研究に基づくαリポ酸誘導体含有頭皮用ローションの製品化に至った。
【抗がん剤脱毛予防の取り組みにおける今後の展望】
本プロジェクトではαリポ酸誘導体の消化器癌患者への応用や、頭皮冷却法との併用効果の検討など研究が進んでおり、患者のQOL向上を目指した研究開発のさらなる活性化が期待される。
講演中の河野先生
▶ 演題2
演者
昭和大学医学部外科学講座 乳腺外科学部門
講師 診療科長補佐 垂野 香苗 先生
演題
乳癌周術期化学療法による脱毛とその予防への取り組み
―化学療法誘発性永久脱毛予防へむけてできることは?―
講演内容
化学療法誘発性脱毛(CIA)は、患者にとって心理的苦痛が大きく、生命には影響しないものの、アピアランス変化のために、心理的影響のため、日常活動に影響を及ぼす重大な副作用の一つである。医療従事者が考える以上に患者にとっては重大な副作用である。
中でも乳癌周術期標準化学療法で使用する薬剤は100%の脱毛をもたらし、乳癌患者の心理的負担により治療選択にも影響する因子である。また、化学療法施行中のみではなく、その後も再発毛し、治療前の状態に戻るまでは、時間を要する。英国での報告でタキサン系薬剤を使用した患者の10.1-23.3%が化学療法誘発性永久脱毛 (pCIA : permanent CIA)となるという報告もある。治療中のみならず、その後の長期のQOLにも大きく影響する副作用である。化学療法終了後もうまくウィッグを使用しているため、医療者側からはなかなかわかりにくいが、潜在的にpCIAで悩んでいる患者は多い可能性がある。CIA予防のためには様々な手法がこれまで取り組まれているが、乳癌において、完全な予防は困難であるが、治療中のケアによりCIAの軽減と、pCIAの予防を目指すことは重要である。
2021年に発刊された“がん治療におけるアピアランスケアガイドライン”にて、CIAに関する項目においては、“化学療法誘発性脱毛の予防や重症度軽減に対する頭皮クーリングシステムは周術期化学療法を行う乳がん患者に限定して行うことを弱く推奨する。”となっている。頭皮表面を冷却し化学療法時の頭皮血流を低下させることで、化学療法に伴う脱毛を抑制することを目的とした装置(Paxman scalp cooling system)による脱毛抑制効果が報告され、日本国内で2019年3月に医療機器として承認された。当院にて頭皮冷却装置を乳癌周術期化学療法時に使用した症例の報告をする。頭皮冷却装置とαリポ酸誘導体含有ローションの併用による相乗効果も期待され、当院における両者使用症例の報告とともに、今後の展望に関して紹介する。
講演中の垂野先生
【学会概要】
学会名称:第122回日本外科学会定期学術集会
会 期:現地開催2022年4月14日(木)~4月16日(土)
会 場:熊本城ホール(熊本県熊本市)
会 頭:熊本大学病院 病院長
熊本大学大学院生命科学研究部 熊本大学消化器外科学 教授
馬場 秀夫 先生
※アデランス共催のセミナーは、4月15日(金)に開催しました。