人民日報海外版日本月刊のプレスリリース
「持続可能な開発」を理念に実践を貫く
株式会社クロスロードの主導によって研究開発された完全生分解性複合材料CBCMは、「分解性」から「完全分解性」への抜本的な技術革新によるものである。この分野は、日本特有の業態成長モデルに縛られ、遅々として進んでこなかった。
劉向輝氏は弛まぬ前進を信念とし、「完全分解性」概念の普及と環境保護に向けた合意形成に奔走する。われわれは、敬意の念を抱きつつ、株式会社クロスロードを訪れ、劉向輝代表取締役社長を取材した。持続可能な開発を企業理念とし、度重なる試練を克服してきた劉向輝氏の奮迅努力を感じ取っていただければ幸いである。
劉向輝社長
■本質的に異なる環境保護理念
記者はインタビューの冒頭、先ごろ、劉向輝氏が国際平和維持兵士協会(AISP / SPIA)のローラン・アタベロ主席から平和勲章を授与されたことに祝意を伝えた。ところが、劉氏はその話題にはほとんど触れることなく、早速、リュックサックから大量の瓶や缶を取り出すと、記者に向かい、完全生分解性複合材料CBCMのコア技術について熱く語り始めたのである。氏はまず、専門的な観点から「完全分解性」と「分解性」の二つの概念の本質的な違いを明らかにした。
レオ・ベークランドが、1907年に世界初の合成樹脂であるベークライト製品を発明し、「万能素材」であるプラスチックの時代が始まった。プラスチックは、その安定した性能から、食品、化粧品、化学製剤、医薬品のパッケージとして広く使われている。異なる硬さに対応でき、展延性にも優れ、フィルムにも形成することができ、医療機器や家電の外装にもなり、手軽、軽量、低コストが売りである。
発明からかなりの年月を経てようやく、人びとは分解されないプラスチックが環境に与える大きな負荷に気付いたのである。プラスチックは、時代の流れに乗って大量生産されると、なくてはならないものになり、やがて、憂慮すべきものへと変化し、科学者たちもその解決法を模索し始めた。
「完全分解性プラスチック」は、従来のプラスチックと完全分解性プラスチックのマスターバッチを混合することで生まれる。この完全分解性プラスチックは、一定の光や熱、或いは微生物の酵素によって分解され微粒子になるのだが、この技術はすでに、1960年代には開発されていた。ところが、既存の分類基準が曖昧であったため、多くの包装材メーカーは、完全分解性プラスチックを宣伝する際、従来のプラスチックの配合比率を下げたことのみを強調したため、消費者に誤った印象を与えた。即ち、「分解性プラスチック」を選択することが環境の改善と保護につながり、「分解性プラスチック」を多く使用するほど従来のプラスチックによる環境へのダメージを軽減することができると認識したのである。実際は、「分解性プラスチック」の成分に含まれる従来のプラスチックは微粒子に分解され、プラスチックの高分子化合物の形で自然界に存在し続け、永久的に環境にダメージを与えるのである。
また、分解性プラスチック原料(マスターパウダー)の製造コストは従来のプラスチックの製造コストよりもかなり高くなるため、一部の販売業者は、従来のプラスチック原料の比率が高い「分解性プラスチック」マスターバッチで製造された包装材を選択し、「完全分解性」の材料に置き換えることを拒むのである。コストの問題が、完全生分解性複合材料CBCMの普及を妨げる根本原因になっている。
さらに憂慮されるのは、完全分解性プラスチックであっても、一定の条件が満たされなければ完全には分解されないということである。一般的な分解性プラスチックであるPLAを例にとると、PLAは工業用堆肥化或いは完全な嫌気的条件下でのみ完全に分解されるが、これは自然環境下での廃棄物処理にはほとんど意味をなさない。
2022年、環境保護と人体への影響に警鐘を鳴らす出来事が立て続けに起きた。オランダの研究チームは、人間の血液中にマイクロプラスチックを発見し、イギリスの研究チームは、生きている人間の肺の奥深くにマイクロプラスチックをはじめて発見した。ナノメートルサイズのマイクロプラスチックは皮膚から直接吸収され、母体を介して新生児にも移ることが検証されている。日本メディアの報道によると、6割から7割の新生児の体内に、ナノメートルサイズのマイクロプラスチックが発見されているという。
中国の『環球』雑誌は、「分解性プラスチックは本当に分解されているのか?」と、警鐘を鳴らす記事を書いた。プラスチックによる自然環境の破壊を根絶できないのであれば、警鐘は死者を弔う鐘となる。こういった人類の愚かで短絡的な行為に話が及ぶと、劉向輝氏の声は沈んだ。
■革新的技術によって完全生分解性複合材料を開発
株式会社クロスロードは創業以来、完全分解性素材の研究開発と普及に取り組んできた。そして、9年の歳月を経て、完全生分解性複合材料CBCMを開発した。完全生分解性複合材料CBCMによって製造された包装材を粉砕して埋め込むと、大きな分子が小さな分子に変容した後、水、二酸化炭素、バイオマスに変化し、180日後には完全に消失する。この素材は日本で特許を申請中で、ドイツTUV4種の認証を取得し、ドイツDIN 、アメリカ合衆国BPI、ベルギーAIB-VINCOTTE、米国プラスチックリサイクル認証も取得している。
実のところ、完全生分解性複合材料CBCMの主要な効果や特性は半世紀前には発見されていた。しかし、合成のコストが高くつくため、一般に普及することはなかった。完全生分解性複合材料CBCMは主に4種の物質から成り、異なる媒介において摂氏45~95度の条件下で化学反応を起こし、耐熱、耐寒、耐圧等の条件を満たす包装材を生産することができる。劉向輝氏は多くの専門家を招聘して研究開発チームを結成し、中国国内の最新の完全分解性プラスチック技術との結合によってアップグレードを実現し、3年の試験期間を経て、機能性が要求される多くの包装材の分野において画期的進歩を遂げるとともに、抗菌・滅菌を専門に研究を行う日本の医療研究機関と連携し、その特許技術を導入して完全生分解性複合材料CBCMの抗菌・滅菌効果を高めながら、肌に優しく刺激の少ない使用感を実現した。
完全分解性農業フィルムの分野においては、完全生分解性複合材料CBCMは、虫やカビから農作物を守り、増産・増収につながる。全分解性シュリンクフィルムの分野においては、繊維製の書籍の表紙カバーとして、防カビ・除菌効果を発揮する。完全分解性水溶フィルムの分野においては、医療消耗品の消毒や洗浄、抗ウイルスに有用である。
同様の製品と比較して、完全生分解性複合材料CBCMは、耐劣化性とバリア性に優れ、包装材の有効期間と耐用年数は大幅に延長され、しかも180日の内に完全に分解され、顧客体験価値が高い。先ごろ、完全生分解性複合材料CBCMによって製造されたミネラルウォーターボトルは、高衛生、透明、超薄型という技術的障壁を突破したものである。
劉向輝氏は、貴金属のリサイクル事業で長年名声を博す、アクアマテリアル株式会社の朝倉和夫代表取締役を帯同してアモイを視察し、同地に工場を建設することを決めた。株式会社クロスロード・アモイ工場は、完全生分解性複合材料CBCMのマスターバッチの製造を担い、現在、世界の80社以上の包装材企業に安定的に供給を行っている。株式会社クロスロードは、事業の拡大に伴い、日本にマスターバッチの加工工場を建設中である。
劉向輝氏が、利権闘争の中で氏の環境保護理念を推し広めていけるのは、完全生分解性複合材料CBCMの適用性の高さと無関係ではない。完全生分解性複合材料CBCMのマスターバッチは、ほぼすべての種類のプラスチック包装材に置き換えることができ、現在普及しているプラスチック成形機をそのまま使用し、完全生分解性複合材料CBCMに加工・成形することが可能である。「分解性」から「完全分解性」への移行において、設備のアップグレードにコストをかける必要がないのである。
■「美しい中国の建設」の時代の奔流に
日本は早くからリサイクルに着手し、豊富な経験を蓄積してきたが、慢性的な問題も生まれた。集団主義を重んじる日本では、廃棄物のリサイクルは早々に強力なネットワークを形成している。完全分解性材料の普及が、多方面に利益をもたらすことは間違いない。劉向輝氏は、それがリスクと困難に満ちた道のりであることは充分承知しているが、それでも、拒絶や偏見にも笑みを浮かべ、厭うことなく「完全生分解性材料」の普及に努める。
株式会社クロスロードが中国総代理店として取り扱う、過熱蒸気分解再生資源回収処理装置「アーバンリグ」は、ダイオキシンや二酸化炭素を排出することなく、油、炭、金属などの再生資源を回収することができ、それらはリサイクル資材として活用することができる。この技術は、環境省と日本財団が実施する「海ごみゼロアワード」の「イノベーション部門」で日本財団賞を受賞している。「アーバンリグ」は、生活ゴミ、海洋ゴミ、家電ゴミ、自動車部品、廃タイヤ、動植物廃棄物、医療廃棄物、汚泥等、ほぼ全ての廃棄物に適用され、過熱水蒸気によって熱分解処理を行う。そのうち、廃プラスチックは再生油に、廃タイヤなどの有機物は「カーボンブラック」に精製され、ガラス、石などの無機物は粒子化されてリサイクル資材となる。
1本のタイヤからは、約4トンのカーボンブラックを抽出することができる。専門家によると、中国では毎年、およそ500万トンの廃タイヤが適切に処理されておらず、こうした設備に対する市場のニーズは高いという。
常住人口が25万人の小都市で一日に出る生活ゴミは、およそ200トンである。アーバンリグURC-2000の標準エネルギー効率は200トンで、当該都市から一日に出る生活ゴミを処理するには十分なエネルギー効率である。1トン分の生活ゴミを処理できるアーバンリグURB-10は、設置面積が小さく、URT-10は小型トラック1台で輸送が可能である。この外にも、異なったニーズに対応する多様な製品・機種を備えている。
「アーバンリグ」に自信をもつ株式会社ワンワールドの伊藤智章代表取締役社長は、劉氏と何度も内モンゴルへ視察に赴き、包頭や通遼に工場を建設することを決め、現在多くのプロジェクトが立ち上がっている。
さらに、株式会社ワンワールドは、地球環境戦略研究機関、北九州市環境局、国連環境計画、タイ海洋海岸資源庁及びラヨン県と連係し、同県サメット島の「海洋プラスチックゼロの島モデル構築事業」を着々と進めている。当プロジェクトは、プラゴミゼロのための国際アライアンス(AEPW)からも注目され、5年15億ドルの財政支援が約束されている。
劉向輝氏の弛まぬ努力によって、日本においても九州の一部地域や静岡県で、アーバンリグによって海洋ゴミを処理するプロジェクトが徐々に広がりを見せている。2023年5月、ジュネーブで開催された世界平和記念大会において、モロッコ王室やインドの政府関係者が、完全生分解性複合材料CBCMに強い関心を示すとともに、劉向輝氏の長年にわたる環境保護の取り組みに心からの敬意を表した。
劉氏は、目先の利益だけを考えて、将来の世代や公益を顧みることなく、廃棄された電子製品等の「外国のゴミ」を中国に送り付ける人びとを目にするたび、心を痛め頭を悩ましてきた。近年来、中国は環境問題を根本から解決するための一連の政策を矢継ぎ早に打ち出している。「第14次5カ年計画」には、「プラスチック汚染防止行動計画」が盛り込まれ、「中国共産党第20回党大会報告」では、生態環境の保護を訴え、先ごろ開催された全国生態環境保護大会では、「優れた生態環境でハイクオリティ発展を支え、人と自然の調和のとれた共生の現代化推進に取り組んでいく」、「エコ・低炭素の循環型経済システムの構築に注力し、環境負荷を効果的に削減する」ことが強調された。中国の環境政策に対する決意と意識を感じるこれら一連の動きが、劉向輝氏をより一層、「美しい中国の建設」という時代の奔流へと向かわせるのである。
■取材後記
完全生分解性複合材料CBCMの開発から、廃棄物処理設備の普及、持続可能な開発のための方策に至るまで、劉向輝氏が艱難辛苦に挑む姿は、人びとを感動させ、東洋のBASFの出現を期待させる。