資生堂、表皮幹細胞研究を進化させ老化による肌悩みにアプローチするレモンアイアンウッド葉エキスを発見 ~表皮幹細胞の老化抑制や表皮幹細胞の量を増加させ、細胞を生みだす力を向上~

株式会社資生堂のプレスリリース

 資生堂は、レモンアイアンウッド※1葉エキスに、表皮幹細胞の老化を抑制する効果があることを発見しました(図1)。さらに同エキスに、表皮幹細胞の量を増加させ、細胞を生みだす力を向上させる効果も見出しました。これにより、肌のターンオーバーの源となる表皮幹細胞を健やかに保ち、エイジングによる肌悩みの解決につながる可能性が示唆されました。本研究は、マサチューセッツ総合病院皮膚科学研究所(CBRC)※2との共同研究により表皮幹細胞の老化制御の可能性を明らかにした知見※3を応用したものです。今後も、表皮幹細胞研究を進化させ、エイジングによるさまざまな肌悩みへのアプローチを目指します。

 本研究の成果の一部は、2023年5月10日~13日に東京にて開催した国際研究皮膚科学会(International Societies of Investigative Dermatology: ISID)にて発表しました。

※1 葉にレモンのような芳香をもつフトモモ科の植物で、原産地のオーストラリアでは古くから薬草として活用してきたことが知られており、学術的にも抗菌作用や抗酸化作用など様々な効用が研究されている

※2 CBRC(Cutaneous Biology Research Center)。1989 年に資生堂のサポートにより、ハーバード医科大学とマサチューセッツ総合病院が設立した皮膚科学領域の先進的な研究開発をする総合研究所。資生堂からも研究員を派遣し、世界的な研究者とともに共同研究を行っている

※3 資生堂、CBRCとの共同研究で表皮幹細胞の老化制御の可能性を明らかに(2023)

https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003636&rt_pr=trq51

《研究の背景》

 肌のターンオーバーは、表皮の細胞が絶えず増殖・分化することで起こり、健やかな肌の維持に役立っています。その細胞の供給源となるのが、基底層に存在する表皮幹細胞です。資生堂はこれまで、表皮幹細胞を健やかに保つことが美しい肌の実現にとって非常に重要であると考え、表皮の基底層の下にある基底膜を介して表皮幹細胞の量の維持をサポートすることで、肌の保湿やバリア機能、さらに真皮のコラーゲン産生にも寄与することを発見してきました。さらに、表皮幹細胞の量だけではなく表皮幹細胞の質に着目し、CBRCとの共同研究で表皮幹細胞の老化を抑制するRNA※4結合タンパク質YBX1※5がリン酸化※6により機能低下し、細胞老化を引き起こすことを明らかにしました。本研究では、これまでの知見を応用し、化粧品原料での表皮幹細胞の質の向上の実現を目指しました。

※4 RNA:リボ核酸。DNA(デオキシリボ核酸)に保持された遺伝情報は、RNAに転写され、その情報をもとにタンパク質が合成される

※5 YBX1:Y-box binding protein-1。DNAやRNAに結合することでタンパク質の合成を転写および翻訳過程で制御し、細胞機能を調整することが知られている

※6 リン酸化:タンパク質の翻訳後修飾の一つで、リン酸基がつくことでタンパク質の構造が変化、活性の変化が起こる

《レモンアイアンウッド葉エキスは表皮幹細胞の老化を抑制し、さらに表皮幹細胞の増殖性も向上させる》

 表皮幹細胞の老化を抑制するYBX1は、リン酸化により機能が低下することが確認されています。今回、100種類以上の化粧品原料の中から、オーストラリア原産の植物、レモンアイアンウッドから抽出したレモンアイアンウッド葉エキスが、表皮幹細胞を含む培養細胞において、YBX1のリン酸化を抑え、表皮幹細胞の老化を抑制することを見出しました(図2)。

 また、YBX1が表皮幹細胞の老化を防ぐメカニズムとしては、老化した細胞から分泌されて老化の伝播を引き起こすSASP因子の産生を抑制することが知られていますが、本研究では、レモンアイアンウッド葉エキスを添加した培養細胞で、SASP因子※7の一つであるIL-8※8の産生が抑えられていることがわかりました。加えて、レモンアイアンウッド葉エキスにより、表皮幹細胞のマーカー遺伝子であるMCSP※9の発現が増加し、細胞の増殖性も向上しました(図3)。このことから、レモンアイアンウッド葉エキスは表皮幹細胞の老化を抑制する効果を持つとともに、表皮幹細胞の量を増加させ、細胞を生みだす力を向上させる効果があることが示唆されました。

 この知見を、肌のターンオーバーの源である表皮幹細胞を健やかに保つソリューションとして応用し、エイジングによるさまざまな肌悩みにアプローチしていきます。

※7 SASP因子:細胞老化随伴分泌現象(Senescence-associated secretory phenotype)で分泌される因子

※8 IL-8:Interleukin-8

※9 本研究では、MCSP(Melanoma-associated Chondroitin Sulfate Proteoglycan)を細胞表面に発現している細胞を表皮幹細胞としている

《R&D戦略について 》

 本研究は、R&D戦略3本柱の1つである「Skin Beauty INNOVATION」のもと、世界有数の研究機関である米国のCBRCとの共同研究成果を応用しました。

・2023年統合レポート(ビューティーイノベーション)

https://corp.shiseido.com/report/jp/2023/message/cmio/?rt_pr=trq51

・キーワード

Skin Beauty INNOVATION、幹細胞

▼ ニュースリリース

https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003829&rt_pr=trq51

▼ 資生堂 企業情報

https://corp.shiseido.com/?rt_pr=trq51

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