ヤエヤマクロレラの摂取で発生促進と健康寿命の延伸を確認しました

モデル生物として広く用いられるショウジョウバエで発生促進、寿命延伸、加齢による運動機能低下抑制を確認

株式会社ユーグレナのプレスリリース

 株式会社ユーグレナ(本社:東京都港区、代表取締役社長:出雲充)は、国立大学法人富山大学の赤木 一考助教、至学館大学の多田敬典教授との共同研究により、ヤエヤマクロレラの摂取が、発生※1および老化研究に広く用いられるモデル生物であるキイロショウジョウバエ※2の寿命を延伸し、加齢に伴う運動機能の低下を抑制、かつ、発生を促す研究結果を確認しました。なお、今回の研究結果は、2024年11月27日~29日に開催された第47回日本分子生物学会年会で発表しました。

※1 受精卵が細胞分裂や分化を通じて成体へと成長していく過程のこと

※2 キイロショウジョウバエは、ヒトと共通のシグナル伝達経路を多く持つ上に寿命が短いため、発生や老化研究のモデル生物として広く用いられています

■ 研究の背景と目的

 発生と老化に関する理解は、生命現象の根本的な仕組みを理解するためだけでなく、人々の健康に直結するさまざまな課題の解決につながります。発生とは、単一の受精卵が細胞分裂、分化、組織形成を経て、複雑な多細胞生物へと成長する過程であり、発生のメカニズムを知ることで、細胞や組織の再生の仕組みを再現し、再生医療などに応用が可能です。また、老化のメカニズムを調べることで、加齢に伴う疾患(認知症、がん、糖尿病など)の発症メカニズムの解明や新しい予防法・治療法の開発につながります。健康寿命の延伸は、個人の幸福だけでなく、社会的な医療コストの削減にも寄与します。発生と寿命は独立した現象のように見えますが、例えば、発生過程で生じる遺伝子や細胞の選択が老化の進行に影響を与えうるなど、密接に関連しています。

 クロレラは単細胞の微細藻類であり、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、カロテノイド、不飽和脂肪酸、葉緑素(クロロフィル)など豊富な種類の栄養素を含み、これまでにも抗がん、生活習慣病改善などを示唆する研究成果が報告されていますが、本研究では、キイロショウジョウバエにおける寿命・発生におけるヤエヤマクロレラの効果を明らかにすることを目的として研究を行いました。

■研究の内容と結果

① ヤエヤマクロレラの摂取により、キイロショウジョウバエの発生の促進が確認されました。

 ヤエヤマクロレラが発生に与える影響について調べるために、異なる濃度(0.5%。1%、3%)のヤエヤマクロレラを含むエサでキイロショウジョウバエの幼虫を飼育し、前蛹※3になるまでの時間を測定しました。その結果、ヤエヤマクロレラの摂取によって、濃度依存的に前蛹になるまでの時間が短くなり、特に、ヤエヤマクロレラを1%、3%含むエサを摂取させたキイロショウジョウバエにおいて、発生タイミングが早まることが明らかになりました(図1)。

※3 幼虫がさなぎになる直前の状態

図1: ヤエヤマクロレラの摂取によるキイロショウジョウバエの発生への影響                      ※横軸は実験に用いたハエの産卵後からの時間、縦軸は前蛹になったハエの割合を示します。                 ※Gehan-Breslow-Wilcoxon Test , ***p<0.001 vs.コントロール

② ヤエヤマクロレラの摂取により、キイロショウジョウバエの中間寿命※4の延伸と加齢による運動機能の低下抑制が確認されました。

 異なる濃度(0.5%。1%、3%)のヤエヤマクロレラを含むエサを羽化後から摂取させたキイロショウジョウバエと、通常のエサを摂取させたキイロショウジョウバエ(コントロール群)の生存率を比較しました。その結果、ヤエヤマクロレラを摂取させたキイロショウジョウバエでは、コントロール群に対して、中間寿命の延伸が見られました(図2)。さらに、ヤエヤマクロレラを含むエサを羽化後から摂取させたキイロショウジョウバエと、通常のエサを摂取させたキイロショウジョウバエ(コントロール群)で、運動機能をクライミング・アッセイ※5により評価しました。コントロール群では加齢にともない運動機能は低下しましたが、ヤエヤマクロレラを含むエサを摂取させたキイロショウジョウバエでは、運動機能の低下が抑えられました。特に、ヤエヤマクロレラを1%、3%含むエサを摂取させたキイロショウジョウバエでは、中高齢期に相当する21日目や35日目で有意に運動機能の低下抑制が観察されました(図3)

※4 個体群の50%が死亡するまでの期間
※5 クライミング・アッセイは、加齢に伴う運動機能の低下や、アルツハイマー病などの神経変性疾患の症状を評価する方法です。ハエをバイアル瓶に入れ、バイアル瓶をタップしてバイアル瓶の底にハエを配置して、10秒以内に、バイアル瓶の底から3cmのラインより上まで登ることのできたハエの数をかぞえて評価しました

図2: ヤエヤマクロレラの摂取によるキイロショウジョウバエの寿命への影響                      ※横軸は生存日数、縦軸は生存率を示します。                                     ※Gehan-Breslow-Wilcoxon Test , ***p<0.001 vs.コントロール群、*p<0.05 vs.コントロール群
図3: ヤエヤマクロレラの摂取によるキイロショウジョウバエの運動機能への影響                    ※横軸は実験に用いたハエの日齢、縦軸は一定時間内にバイアル瓶を登ることができたハエの割合を示します。       ※Two-way ANOVA with Dunnett’s multiple comparisons test , **p<0.01 vsコントロール群、*p<0.05 vsコントロール群

 これらのことから、ヤエヤマクロレラは、成虫では健康寿命を延ばす作用がある一方で、幼虫の発生タイミングを早める作用があることが示唆されました。今後も当社は、ヤエヤマクロレラの機能性の解明を目指し、研究に取り組んでいきます。

<株式会社ユーグレナについて>
2005年に世界で初めて微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養技術の確立に成功。「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」をユーグレナ・フィロソフィーと定義し、微細藻類ユーグレナ、クロレラなどを活用した食品、化粧品等の開発・販売、バイオ燃料の製造開発、遺伝子解析サービスの提供、未利用資源等を活用したサステナブルアグリテック領域などの事業を展開。2014年より、バングラデシュの子どもたちに豊富な栄養素を持つユーグレナクッキーを届ける「ユーグレナGENKIプログラム」を、継続的に実施している。https://euglena.jp

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