日焼け止めの新規技術ポリイオンコンプレックス ゲル パーティクル(PGP)を応用

ロレアル リサーチ&イノベーション ジャパンの新研究

日本ロレアル株式会社のプレスリリース

世界最大の化粧品会社ロレアルグループの日本における研究開発部門であるロレアル リサーチ&イノベーション ジャパン(研究所:神奈川県川崎市、所長:アミット・ジャヤズワル、以下R&Iジャパン)の応用開発領域研究所と先端研究部門による「サンスクリーンの新規技術 ─ポリイオンコンプレックスゲルパーティクル(PGP)の応用─」と題する報文が化粧品科学研究専門誌 『Cosmetic Science』 2025年2月号に掲載されました。

 

紫外線(UV)および高エネルギー可視光線(HEV)の皮膚に対する影響が明らかになるにつれ、サンスクリーン(日焼け止め)は日常生活にも欠かせないアイテムとなってきました。高温多湿のアジア地域においては、べたつきの低いさっぱりとした使用感や、テカリの防止効果、汗や皮脂に耐性のある製品が望まれています。高いUV防御効果を保ちつつ、このような消費者の要望をかなえるための日焼け止めの処方を、R&Iジャパンで開発された新規技術ポリイオンコンプレックスゲルパーティクル(PGP)を応用して開発しました。

 

本処方は、水溶液中で多くのプラス電荷を持つポリマーを、マイナス電荷を持つ架橋剤で結合したポリイオンコンプレックスゲルパーティクル(図1)を基剤としています。そこにUVフィルターやそれらを溶かす油剤、感触やUVの散乱を調整するための粉体などを加え、油の中に水滴が存在する油中水型のエマルションという形態の日焼け止めを作製しました。

 

この処方は、同じ量のUVフィルターを含むPGPを用いない既存の油中水型エマルション処方に比べ、高いUV吸収能を示すことがわかりました。これは粉体がPGPの3次元構造中に均一に分散することによってその効果を十分に発揮するためと考えています(図2)。また、この処方が形成する皮膜は、微細な凹凸を自発的に形成し、光を散乱することによって優れたテカリ防止効果を発揮します。汗/皮脂に接触するとこの構造が強調されるので、効果の増強と持続が期待できます(図3右)。更に、この皮膜は自己修復能(図4)を持ち、こすれなどによる破断にも耐性を備えていると考えられます。この処方は油分を多く含む組成にもかかわらず、使用試験においてもさっぱりとした軽いつけ心地が高い評価を得ています*。

*アジア人女性245名(20-40歳)による使用試験

 

この日焼け止め処方は、LANCÔMEより2025年4月に発売されるUV EXPERT XTREEM SHIELDに応用されています。

[出典]

小池 徹、菅 友美、五十島 健史、浅沼 秀彦、河西 毅彦 「サンスクリーンの新規技術 ─ポリイオンコンプレックスゲルパーティクル(PGP)の応用─」 Cosmetic Science 2025 (2), 18-23 (2025)

 

図1:ポリイオンコンプレックスゲルパーティクル(概念図)
図2 : PGP 構造中の粉体の分散
図3:皮脂・汗との接触による皮膜凹凸の強調
図4:PGPを使用した処方と使用していない処方の自己修復能

ロレアルグループについて

ロレアルは115年にわたり美容・化粧品業界のリーダーとして、世界の消費者の美への希求とニーズに応えることに専念してきました。当社のパーパス「世界をつき動かす美の創造」は、社会に対しても、環境に対しても、サステナブル、インクルーシブ、倫理的かつ寛大な形で美を通じて貢献してゆくという私たちの美への姿勢を包括的に表現するものです。37の国際ブランドを初めとする多様で幅広いブランドポートフォリオと、持続的発展と環境を守るための取り組みである「ロレアル・フォー・ザ・フューチャー」プログラムを通じ、美の無限の多様性を賛美し、世界のすべての人々に最高水準の品質、有効性、安全性、誠実さ、責任をお届けします。当社は、9万人を超える従業員を擁し、地理的にもバランスの取れた拠点展開と、すべての流通網(eコマース、マスマーケット、百貨店、薬局、美容室、ブランドおよび旅行小売)における販路を有しています。2023年のグループ売上高は411億8千万ユーロにのぼります。世界11ヵ国に20の研究開発と研究開発拠点を置き、4,000人以上の科学者と6,500人を超えるデジタル人財を擁するロレアルは、美の未来を創造し、ビューティーテクノロジーを推進してゆくことを重要視しています。詳細については、こちらをご参照ください。

https://www.loreal.com/en/mediaroom

ロレアル リサーチ&イノベーション ジャパンについて

日本における研究開発は 1983 年にスタートし、現在、日本ロレアル リサーチ&イノベーションセンター(所在地:川崎市、所長:アミット・ジャヤズワル)として、戦略的なイノベーション拠点としての役割を担っています。数ある外資系化粧品企業においても、もっとも歴史ある研究開発部門であり、いち早く日本の文化、歴史、社会を深く理解し、200 名以上の研究員が、ラグジュアリーブランドをはじめ、グループの各ブランドおよび様々なカテゴリーの製品開発を行っています。代表的なブランドはランコム、シュウ ウエムラ、キールズ、イヴ・サンローラン、ケラスターゼ、ロレアル プロフェッショナル、メイベリン ニューヨーク、TAKAMIなど。

https://www.loreal.com/ja-jp/japan/divs/science-and-technology/beauty-research-and-innovation

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