【登壇報告】France–Japan Bilateral Seminar on Health Dataが開催

NTTプレシジョンメディシンのプレスリリース

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慶應義塾大学医学部 北里講堂にて、日仏の専門家が一堂に会する国際セミナー

 
2025年6月19日(木)・20日(金)の2日間にわたり、「France–Japan Bilateral Seminar on Health Data: Acquisition, Governance, and Applications(フランス・日本ヘルスデータ国際セミナー)」が、慶應義塾大学医学部 北里講堂にて開催されました。
本セミナーは、医療データの取得、統治、応用をテーマに、日仏の研究者・政策担当者・産業界の実務者が集い、最新の知見と将来展望について議論する国際学術イベントです。
NTTグループからは3名(うちNTTプレシジョンメディシングループより2名)の研究者・専門家が登壇し、医療データの利活用の現状と、デジタルツイン技術を活用した次世代医療の可能性について講演を行いました。
Session 5.1「Japan Precision Medicine Platform – Utilization of Medical Data」:医療データの利活用に向けた国内プラットフォーム「JPP」の実装とその背景について紹介。
Session 5.4「Toward the Digital Twin: Bridging Industry and Research」:デジタルツイン技術を用いた未来の医療社会像について、国際的な視点から議論が行われました。
 
当日は日本国内のみならず、フランスをはじめとする海外の研究機関・医療機関からも多くの参加者が集まり、会場は国際色豊かな雰囲気に包まれました。セミナーはすべて英語で進行され、現地会場には約100名の参加者が来場するなど、活発な意見交換が行われました。
このレポートでは、本イベントでのNTTグループのプレゼンスと発信内容を詳細にお届けします。
 

Session 5.1「Japan Precision Medicine Platform – Utilization of Medical Data」日本発の医療データプラットフォーム「JPP」の可能性を紹介

NTTプレシジョンメディシン株式会社は、本セッションに登壇し、リアルワールドデータ(RWD)の利活用に向けた取り組みと、それを支える技術基盤について発表しました。
本セッションでは、医療データのセキュアかつ効率的な活用に向けて、以下の3名の登壇者がそれぞれの視点から講演を行いました。
 
登壇者および講演内容
 
 ■ 稲家 克郎(NTTプレシジョンメディシン株式会社)
 
「Japan Precision Medicine Platform(JPP)の概要と目的」日本国内では、病院に蓄積された95%以上の医療データが未活用のまま残されており、その多くが「データサイロ化」しています。さらに、巨大なデータ量や個人情報保護法への対応といった課題から、外部の研究機関や製薬企業との連携が困難な状況が続いています。
 


こうした課題を解決すべく、NTTグループはBC Platforms社の国際的な技術を活用し、安全かつ実用的な医療データ共有基盤「Japan Precision Medicine Platform(JPP)」を構築しました。JPPは、複数病院からの分散型のデータ利活用を実現するFederated Analysis(フェデレーション分析)と、データ持ち出しを制御可能なTrusted Research Environment(TRE)の2つの柱で構成され、ドラッグロス(Drug Loss)の解消や臨床開発の迅速化をめざしています。
特に、日本国内における未開発薬(2023年3月時点で143品目中86品目)やドラッグラグの問題に対して、JPPは全国のデータを安全に横断的に探索・分析する仕組みを提供し、製薬企業や研究者にとって有用なインフラとなることをめざしています。
 

 
 
医療データ活用における課題と信頼できる研究環境(TRE)の意義」
 

 
■ 岡田 昌史 医師・博士(医学) (新医療リアルワールドデータ研究機構株式会社) 
 
 


岡田氏からは、リアルワールドデータ(RWD)の研究活用が飛躍的に広がる中で直面する実務的な課題と、それを解決する技術としての「フェデレーション分析」と「TRE」について解説がありました。
従来の匿名化データベースでは、詳細な患者背景やリスク因子(喫煙歴、遺伝情報など)を含むことが難しく、疾患理解や創薬研究の深化には限界がありました。これに対し、TREは「Five Safes(安全な人、プロジェクト、データ、環境、出力)」のフレームワークに則って設計されたセキュアな環境であり、病院からデータを持ち出さずに詳細な解析が可能です。
また、フェデレーション分析の一例として、3施設9,000名超の患者データを用いた冠動脈ステントの安全性比較研究を紹介。施設ごとに標準化されたプログラムを実行し、個人情報を保持したまま統計結果のみを集約することで、プライバシーと実効性を両立した分析が可能である点を強調しました。
 

 
 
「AI時代に対応したユースケースとTREの展開事例」
 ■ 今堀 逸太郎,CFA(BC Platforms社)
 
 
BC Platforms社の今堀氏は、グローバルでの信頼性ある研究環境の構築実績を紹介。英国NHSやHDR UKとの連携事例や、シンガポールのHELIOSプロジェクトなど、AIによるデータ解析が進む中でのTREの役割について具体的なユースケースを提示しました。
 


同社が提供するTREは、ローカル環境やクラウド上に柔軟に構築可能であり、AIエージェントとの連携や自然言語処理(NLP)を用いた電子カルテからの情報抽出にも対応。プライバシーを保持しながらも高度な解析を実現するアーキテクチャとして、国内外の医療研究・創薬プロジェクトで高い評価を受けています。
日本国内においても、複数の医療機関からなるネットワークを活用し、稀少疾患などに関する多次元・大規模データを製薬企業や研究機関と安全に共有できる仕組みを提供しており、JPPの実装・展開にも技術的基盤を支えています。
 


 
質疑応答と今後の展望
セッション終盤の質疑応答では、フランスの医療機関関係者から、同国のデータ共有イニシアティブとの相互運用性に関する質問も寄せられました。これに対し、今堀氏は「AIによる共通データモデルの標準化と、言語モデルを活用した柔軟な対応が可能」と回答し、将来的な国際協調への可能性も示唆しました。
5.1のまとめ
今回の登壇を通じて、JPPが提供する安全・効率的な医療データ活用基盤の重要性と、その国際的な拡張性が改めて確認されました。日本国内において、リアルワールドデータを活用した研究や新薬開発の加速には、技術だけでなく制度面の整備も必要です。
 

Session 5.4 「Toward the Digital Twin: Bridging Industry and Research」

 
 登壇者:柏野 邦夫 博士(日本電信電話株式会社 フェロー)
所属:NTTバイオメディカル情報科学研究センタ/NTTコミュニケーション科学基礎研究所
 
本セッションでは、「デジタルツイン:産業界とアカデミアをつなぐ未来像の共創」をテーマに、日仏の専門家が最先端の技術動向と社会実装の可能性について議論しました。柏野博士はその中で、NTTが長年にわたり推進してきたIOWN構想と、そこから発展するBio-Digital Twinの未来像を提示しました。
講演タイトル:Future of Healthcare Enabled by New ICT and AI
柏野博士は、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想の全体像から講演をスタート。IOWNは、光通信技術と大容量低遅延なネットワークによって、次世代の情報処理・共有基盤を実現するというNTTグループの中核的ビジョンです。
この構想を医療分野に応用したものが「Bio-Digital Twin」です。これは、個人の身体的・心理的状態をリアルタイムにセンシングし、サイバースペース上に再現・シミュレーションすることで、疾患の予測、治療方針の最適化、行動変容の支援などを可能にする次世代医療の基盤となる技術です。 
博士の発表では、以下のような構成でスライドが展開されました:
 


・IOWN構想の全体像と光電融合技術の進展
―高効率かつ低遅延な通信基盤が、医療やライフサイエンス領域にどのようなインパクトを与えるかを概観。 
・Bio-Digital Twinの要素技術と構成モデル
―身体臓器モデル、パーソナルデータ、シミュレーションアルゴリズム、行動・心理情報の統合によって、未来の状態を予測するアーキテクチャを紹介。実証例:心臓リハビリ支援と日常生活における健康モニタリング
―大阪大学や榊原記念病院などとの共同研究に基づき、センサー技術と可視化システムによる実例を紹介。患者の心拍や運動量に応じたフィードバックを通じて、行動変容を促す未来型医療支援の可能性が示されました。 
・研究・産業・医療を横断するエコシステム構築の必要性
―国内外の大学や研究機関との連携図が示され、NTTグループとして「基礎研究」と「社会実装」の橋渡しを担う戦略的立ち位置が強調されました。

パネルディスカッションの模様
発表後に行われたパネルディスカッションでは、各登壇者がそれぞれの立場から「デジタルツインが医療・社会にもたらすインパクト」について見解を共有しました。
 


セッション全体を通じて、技術ベースの研究開発だけでなく、国際的な枠組みの中での社会的合意形成の重要性が再確認され、仏日間の連携強化への期待が高まりました。
 
5.4のまとめ
Session 5.4は、サイバー空間とリアルワールドを接続する「Bio-Digital Twin」という構想を通じて、未来医療の姿を描き出す場となりました。医療・工学・情報科学・倫理・政策といった多様な領域が交錯するなか、NTTグループはその中心的技術基盤と思想を提示し、国内外の参加者に強い印象を残しました。
柏野博士の発表は、単なる技術紹介にとどまらず、NTTグループがめざす「未来の医療社会の構造変革」そのものを描いたものとして、参加者から高い関心を集めました。
 

全体のまとめ

本セミナーでは、医療データの現場課題と技術解決策(Session 5.1)、そして未来医療の実現に向けたビジョン(Session 5.4)という、実践と構想の両輪がNTTグループから提示される貴重な機会となりました。
今後もNTTグループは、国内外の研究機関・企業と連携しながら、リアルワールドデータとAI・通信技術を融合させた次世代医療の社会実装に貢献してまいります。
 
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