尿中マイクロRNAでハイリスク患者からすい臓がんを検知

研究成果がFrontiers in Oncologyに掲載

Craif株式会社のプレスリリース

 バイオAIスタートアップのCraif株式会社(所在地:東京都新宿区、代表取締役CEO:小野瀨 隆一、以下Craif)は、川崎医科大学附属病院消化器内科の吉田浩司教授らと共同で、尿中に含まれるマイクロRNA(*1)をAI(人工知能)解析することで、すい臓がん患者とすい臓がんのリスク因子を有する患者(*2)(以下ハイリスク患者)を分類できることを明らかにしました。本研究成果は2026年1月27日に「Frontiers in Oncology」に掲載されました。

本研究は、2019〜2023年に収集された検体を用いて実施された探索的研究であり、Craifが「すい臓がん診断補助医療機器プログラム」の薬事申請を目的に2024年より開始した、ピボタル試験として位置づけられる多施設共同臨床試験とは独立した前段階の研究です。本研究の知見は、当該試験での尿中マイクロRNA等によるAI(人工知能)アルゴリズム評価に活用されています。

■ 研究のポイント

 5施設の医療機関で共同臨床研究を実施:すい臓がん患者144名、ハイリスク患者109名、健康成人26名から尿を採取し、マイクロRNAやCA19-9を測定しました。すい臓がん患者とハイリスク患者を4:1に分割し、それぞれ訓練データ(*3)とテストデータ(*4)に用いました。

健康な集団とは異なる「ハイリスク患者のシグナル」を確認:すい臓がん患者、ハイリスク患者と健康成人のマイクロRNA発現量を比較したところ、すい臓がん患者とハイリスク患者に共通して上昇するマイクロRNAが多数存在することが明らかとなり、「がんになる前の段階」から、全身の状態変化が尿中マイクロRNAに反映されている可能性が示唆されました。

すい臓がん vs ハイリスク患者を高精度に識別:診断性能の指標となるAUC(ROC曲線下面積)は、訓練データにおいて0.888、テストデータにおいて0.889であり、両者を高精度に識別できることが示されました。

■研究概要

 すい臓がんは、自覚症状に乏しいまま進行し、発見時には既に手術不能な段階まで進行していることが少なくありません。進行期(ステージIII〜IV)の5年生存率は数%にとどまる一方、ごく早期(ステージ0~IAの早期)で発見できれば、5年生存率は80%以上と報告されています。

一方で、現行の検査には以下のような課題があります。

  • 腹部超音波:簡便だが、早期や小さな腫瘍では感度が低く、施行者の技量にも依存

  • 造影CT・MRI/MRCP:進行例には有効だが、早期病変の検出が困難な場合がある

  • EUS(超音波内視鏡):早期病変の検出能は特に高い一方で、侵襲的かつ専門技術が必要

  • 血液マーカーCA19-9:進行例では上昇しやすいが、早期すい臓がんでは感度が低い

特に、糖尿病、慢性膵炎、膵嚢胞、IPMN、すい臓がん家族歴などのリスク因子を有する患者では、一般集団よりもすい臓がんを発症するリスクが高いため、こうした集団から効率的にすい臓がんを拾い上げることが重要とされています。そのため、患者負担が少なく、継続的なモニタリングに適した方法の開発が求められていました。一方で、これらのハイリスク患者は、炎症や前がん病変などを背景として、分子レベルでは健康な方よりもすい臓がん患者に近いmiRNAプロファイルを示す傾向があると考えられ、両者を高精度に識別することは容易ではありません。

本研究では、尿中のエクソソームを回収し、その中のマイクロRNAを網羅的に解析し、AI解析により「すい臓がん患者」と「ハイリスク患者」を判別できるかを評価しました。

その結果、診断性能の指標となるAUC(ROC曲線下面積)は、訓練データにおいて0.888、テストデータにおいて0.889であり、識別が困難とされる両者を高精度に判別できることが示されました。両者を高精度に識別できることが示されました。また、尿中マイクロRNA検査で検出できたすい臓がんは、CA19-9で陽性となったすい臓がん患者との相関は弱く、異なる生体情報を反映している可能性が示唆されました。したがって、CA19-9や他の検査法とも組み合わせることで、さらに高精度なすい臓がんスクリーニング戦略の構築が期待されます。

■用語説明

  • *1.マイクロRNA:生体機能を制御する小さなRNA。細胞内には多種類のマイクロRNA が存在し、様々な生体機能を調節しています。

  • *2. すい臓がんのリスク因子を有する患者:本研究では、2型糖尿病、慢性膵炎、すい臓がんの家族歴、IPMN(Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm:膵管内乳頭粘液性腫瘍)、膵嚢胞、膵管拡張のいずれか一つ以上を有する患者を定義しています。

  • *3. 訓練データ:アルゴリズムの開発に用いたデータのことであり、これらのデータを複数回に分けて学習と内部評価を行い(クロスバリデーション)、その平均的な性能を示しています。

  • *4. テストデータ:訓練データに使用していない別のデータを用いて性能を確認した結果を示しています。

■論文情報

タイトル:Noninvasive Detection of Pancreatic Ductal Adenocarcinoma in High-Risk Patients Using miRNA from Urinary Extracellular Vesicles
掲載誌:Frontiers in Oncology

著者:Tomoya Kawase1, 2, Yasutaka Kato3, 4, Hiroshi Nishihara3, Shogo Baba4, Tadatoshi Kawasaki5, Hiroshi Kurahara6, Hideyuki Oi6, Shunsuke Kondo7, 8, 9, Mao Okada7, 8, Tomoyuki Satake10, Yukiko Shimoda Igawa11, Tatsuya Yoshida7, 11, Junji Kita12, Johji Imura13, Kazuya Kinoshita12, Masaya Yokoyama12, 14, Atsushi Satomura15, 16, Kazuya Takayama15, Motoki Mikami15, 16, Yumi Nishiyama15, Mika Mizunuma15, Yuki Ichikawa15 16, Koji Yoshida1

リンク:https://www.frontiersin.org/journals/oncology/divs/10.3389/fonc.2025.1682072/full

1 Department of Gastroenterology and Hepatology, Kawasaki Medical School, Kurashiki, Japan

2 Department of Gastroenterology, Hokuto Hospital, Obihiro, Japan

3 Genomics Unit, Keio Cancer Center, Keio University School of Medicine, Tokyo, Japan

4 Department of Pathology and Genetics, Laboratory of Cancer Medical Science, Hokuto Hospital, Obihiro, Japan

5 Department of Health Screenings, Hokuto Hospital, Obihiro, Japan

6 Department of Digestive Surgery, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Kagoshima University, Kagoshima, Japan

7 Department of Experimental Therapeutics, National Cancer Center Hospital, Tokyo, Japan

8 Department of Hepatobiliary and Pancreatic Oncology, National Cancer Center Hospital, Tokyo, Japan

9 Department of Medical Oncology, Tokyo Women’s Medical University, Tokyo, Japan

10 Department of Hepatobiliary and Pancreatic Oncology, National Cancer Center Hospital East, Kashiwa, Japan

11 Department of Thoracic Oncology, National Cancer Center Hospital, Tokyo, Japan

12 Department of Surgery, Kumagaya General Hospital, Kumagaya, Saitama, Japan

13 Department of Diagnostic Pathology, Kumagaya General Hospital, Kumagaya, Saitama, Japan

14 Department of Surgery, Division of Transplant Surgery, Virginia Commonwealth University, Richmond, Virginia, US

15 Craif Inc., Nagoya, Japan

16 Institute of Innovation for Future Society, Nagoya University, Aichi, Japan

■ Craifについて

 Craif(クライフ)は がん早期発見に取り組む2018年創業のバイオAIスタートアップです。尿をはじめとする体液から、DNAやマイクロRNAなど多様なバイオマーカーを高精度に検出する独自の解析技術基盤「NANO IP®︎(NANO Intelligence Platform)」とAI技術を融合し、がんの超早期発見・早期治療・早期復帰を可能にする革新的な検査を開発しています。バイオテクノロジーとAIの力を社会に広く届けることで、当社のビジョンである「人々が天寿を全うする社会の実現」を推進します。

【会社概要】

社名:Craif株式会社(読み:クライフ、英語表記:Craif Inc.)

代表者:代表取締役 小野瀨 隆一

設立:2018年5月

資本金:1億円(2024年3月1日現在)

事業:がん領域を中心とした疾患の早期発見や個別化医療の実現に向けた次世代検査の研究・開発、尿がん検査「マイシグナル®シリーズ」の提供

本社:東京都新宿区新小川町8-30 THE PORTAL iidabashi B1F

URL:https://craif.com/

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