睡眠の質や日中の姿勢と、睡眠中の姿勢のクセが関連する可能性背景“姿勢”に着目した花王の疲労感研究寝姿勢にはクセがあり、睡眠の質にも影響する左右どちらかの横向き寝が多い人で、睡眠中の副交感神経活動が高まりにくい 寝姿勢に日中の身体アライメントのゆがみが影響する可能性まとめ
花王株式会社のプレスリリース
花王株式会社(社長・長谷部佳宏)ヒューマンヘルスケア研究所は、日常的な疲労感と睡眠との関係に着目し、睡眠を身体状態や生活習慣など複数の側面からとらえる研究を進めています。その中で今回、睡眠中の姿勢(寝姿勢)が睡眠の質だけでなく、起きているときの姿勢とも関係する可能性を見いだしました。これは、良質な睡眠の理解を深め、日々の生活における疲労との向き合い方を考える新たな視点となると考えます。

今回の研究成果は、第22回日本疲労学会総会・学術集会(2026年6月6~7日・山口県)にて発表しました。
背景
近年、疲労に関する調査*¹において、20~70代の約8割が疲労感を自覚していること、特に20~40代の現役世代で疲労傾向が高いことが報告されています。日常的な疲労には心身の状態に加え生活環境などのさまざま要因が複雑に影響しており、回復の基本は適切な休養や睡眠です。しかし、忙しい生活の中では十分な睡眠時間や良質な睡眠を確保することが難しく、疲労が蓄積しやすい状況にあると考えられます。
*1 一般社団法人日本リカバリー協会「日本の疲労状況2025」(全国10万人調査「ココロの体力測定2025」)
“姿勢”に着目した花王の疲労感研究
「十分に睡眠をとったはずなのに、起床時に疲労感が残っている」という声が聞かれるように、睡眠の質を左右する要因にはまだ十分明らかになっていないことがあります。花王は、スマホをお腹に抱えて8歩歩くだけで、歩行中の姿勢やクセを簡便かつ詳細に解析する「Walk Coordinator(ウォークコーディネーター)」技術*²を有しており、2025年、これを応用して、身体アライメント*³のゆがみが慢性的な疲労感と関係している可能性を報告しました*⁴。
さらに今回は、疲労回復と関係の深い睡眠の質にも姿勢が関与するのではないかと考え、検証を開始しました。
*2 2023年10月31日 花王ニュースリリース
関節の動きを解析する「歩行メカニクスモニタリング技術」を確立 スマホをお腹に抱えて8歩歩くだけで歩行の姿勢や癖を見える化
*3 骨格や関節、筋肉などの位置関係やバランス
*4 2025年10月22日 花王ニュースリリース
歩行中の身体アライメント解析から姿勢を把握 身体アライメントのゆがみは疲労の一因となる可能性を確認
寝姿勢にはクセがあり、睡眠の質にも影響する
花王は、寝姿勢と睡眠の質との関連を確認するため、2024年11~12月、30~50代の日本人男女196名の睡眠中の身体の向きや体動、自律神経活動を、3軸加速度計測機能のある心拍計を用いて1週間にわたり連続的に測定しました。
まず、対象者が日常的にどのくらい同じ姿勢(仰向け、横向き、うつ伏せ)で寝ているのか*⁵を、5夜以上計測できた98名で確認したところ、多くの方が毎夜同じ姿勢で寝ていることがわかりました(図1)。さらに、寝姿勢と睡眠の質の関係を調べると、横向き睡眠の割合が多い方は、寝返りの回数が多く(図2)、浅い睡眠*⁶の出現数も高い傾向があることがわかりました(図3)。
*5 姿勢の固定度(%)=計測期間中の最頻姿勢の出現夜数/全測定夜数×100
*6 睡眠中の体動量や心拍のゆらぎが相対的に大きい状態。5分間の解析区間を1分ずつずらしながら判定し、該当した回数を出現数とした。



左右どちらかの横向き寝が多い人で、睡眠中の副交感神経活動が高まりにくい
一般的に、睡眠中に副交感神経活動のはたらきが優位になると、深い睡眠や良質な睡眠につながると考えられています。そこで、3夜以上計測できた110名を対象に、寝姿勢と睡眠中央時刻*⁷前後の90分の自律神経活動の関係を確認しました。
解析の結果、睡眠時間の50%以上を横向きで寝ている人のうち、左右どちらか一方向に向いて寝ていることが多い人は、左右の偏りが少ない人と比較して、睡眠中の副交感神経の活動が低くなっていたことがわかりました(図4)。このことから、寝姿勢のクセにより睡眠の質にも差が生じる可能性が示唆されました。
*7 入眠から起床までを睡眠期間としたときに真ん中となる時刻

寝姿勢に日中の身体アライメントのゆがみが影響する可能性
花王は、1夜以上睡眠データが取得できた170名について、ウォークコーディネーター技術を用いて身体アライメントのゆがみを得点化し、寝姿勢との関係を解析しました。その結果、睡眠時に横向き姿勢で過ごす割合が高い方は、総合得点が低く、ゆがみが大きい傾向にあると考えられました(図5)。
さらに、睡眠中に横向き寝が20%以上存在した144名を対象に、寝姿勢と日中の歩行姿勢の関係を解析してみると、睡眠中に右側を上にして寝る時間が長い方は、歩行時にも右側回旋が強い傾向にあることがわかりました(図6)。このことは、歩行時のクセ、身体アライメントのゆがみが睡眠時の姿勢とも相互に関係する可能性を示唆しています。


以上の結果から、睡眠の質を理解する上で、起きているときの姿勢の特徴や睡眠時の姿勢の傾向を把握することが有用であると考えます。
まとめ
花王は、日常的なコンディションと睡眠の関係に着目した検討を行い、睡眠に影響を与えるひとつの要素として睡眠時の姿勢があること、さらに睡眠時の姿勢が起きているときの姿勢と関連する可能性があることを明らかにしました。疲労感軽減につながる良い睡眠のためには、さまざまな環境を整えることが大事です。
今後は、こうした知見なども活かし、睡眠や日常的なコンディションに関する研究をさらに進めていきます。

