国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所のプレスリリース
住友ファーマ株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:木村 徹、以下「住友ファーマ」)および国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(大阪府茨木市、理事長:中村 祐輔、以下「NIBN」)の難病・免疫ゲノム研究センター 山本拓也センター長、同センター内プレシジョン免疫プロジェクト 西山紋惠プロジェクト研究員らは、このたび、開発中のユニバーサルインフルエンザワクチン候補製剤「fH1/DSP-0546LP」(以下「本剤」)の欧州フェーズ1試験(以下「本試験」)について、投与1年後のフォローアップ観察を含む最終解析結果の速報を得ましたので、お知らせします。
本試験で得られた一連の結果は、本剤の安全性および忍容性が概ね良好であることに加え、良好な免疫原性、誘導された抗体の交差反応性および質的に良好な免疫応答、ならびに投与1年後まで抗LAH抗体価の上昇が概ね持続していることを示すものであり、住友ファーマおよびNIBNは、ユニバーサルインフルエンザワクチンの実用化に向けた研究開発を引き続き推進してまいります。
本試験は、18歳から40歳までの健康成人144例を対象とした無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験です。本剤〔fH1(2μg、8μg)/DSP-0546LP(2.5μg、5μg、10μg)〕、アジュバント非添加抗原製剤〔fH1(2μg、8μg)〕、アジュバント単剤〔DSP-0546LP(2.5μg、5μg、10μg)〕またはプラセボを、3週間間隔(Day1、Day22)で2回筋肉内投与しました。本試験の解析は、あらかじめ規定された統計解析計画に従い実施しました。これまで、投与終了4週間後(Day50)までの中間解析に基づき、主要評価項目である安全性、忍容性および副次評価項目である免疫原性に加え、探索的評価項目である交差反応性の結果を公表しています。今回、投与1年後の安全性、忍容性および免疫原性に関する最終解析が完了し、加えて、誘導された抗体のIgGサブクラスおよび中和活性に関する新たな探索的解析結果が得られました。
これまでに公表した中間解析結果で、Day50までに安全性上の重大な懸念は認められていませんでしたが、最終解析における投与1年後(Day386)のフォローアップ観察においても、投与1年後までに新たな安全性上の重大な懸念は認められず、概ね良好な忍容性が確認されました。
中間解析結果で、本剤投与群では、プラセボ群およびアジュバント非添加抗原製剤群と比較して抗LAH抗体価が高値を示し、H1N1亜型由来LAHに加えてH5N1亜型由来LAHに対する交差反応性も確認されていましたが、本剤投与群のDay386における抗LAH抗体価は、Day1と比較して高値を維持していることが示されました。抗LAH抗体について、さらにIgG1~4のサブクラスに関する探索的解析を実施したところ、IgG1抗体誘導のDay1に対するDay50の幾何平均増加倍率は、本剤(fH1 8μg/DSP-0546LP 5μg)投与群では27.04倍でした。一方、アジュバント非添加抗原製剤群(fH1 8μg)では11.93倍でした。また、誘導された抗体のH1N1株(A/California/7/2009)に対する中和活性についての探索的解析の結果では、本剤(fH1 8μg/DSP-0546LP 5μg)投与群およびアジュバント非添加抗原製剤群(fH1 8μg)におけるDay29時点のDay1からの幾何平均増加倍率は、それぞれ10.37倍および6.93倍でした。一方、プラセボ群およびアジュバント単剤群(DSP-0546LP 5μg)では、それぞれ0.94倍および1.59倍でした。
本剤の特徴について
従来のインフルエンザワクチンは、ウイルスの抗原変異により効力を失うため、毎年流行株に合ったワクチン株の選定・製造・接種が必要であり、新型インフルエンザに迅速に対応することは困難です。
本剤は、種類の異なるインフルエンザウイルスへの幅広い防御効果が非臨床研究で確認されています。住友ファーマおよびNIBNは、共同研究の成果である本剤について、季節性インフルエンザウイルスだけではなく、パンデミックに発展する可能性のある新型インフルエンザウイルスにも効果を示す画期的な次世代ワクチンとしての実用化を目指しています。
*住友ファーマおよびNIBNは、本研究を国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)に係る研究開発課題として実施しています。
*本件に関連するプレスリリースとして、以下を開示しています。
新規ユニバーサルインフルエンザワクチン候補製剤の臨床試験(フェーズ1試験)開始について
住友ファーマ創出の新規TLR7ワクチンアジュバント(DSP-0546)を用いた新規ユニバーサルインフルエンザワクチン候補製剤の臨床試験(フェーズ1試験)の中間解析について
住友ファーマ創出の新規TLR7ワクチンアジュバント(DSP-0546)を用いた新規ユニバーサルインフルエンザワクチン候補製剤の欧州フェーズ1試験結果に関する学会発表について
住友ファーマ創出の新規TLR7ワクチンアジュバント(DSP-0546)を用いた新規ユニバーサルインフルエンザワクチン候補製剤の欧州フェーズ1試験中間解析結果(交差反応性)について
ご参考
TLR7アジュバント(DSP-0546LP)
ウイルス由来のRNAを感知して自然免疫応答を引き起こすToll様受容体の一つであるTLR7を特異的に活性化させる物質を含む製剤です。アジュバントとして抗原に添加することによって免疫応答の量、質および持続性を高める免疫増強作用を有します。
IgGサブクラス
IgG抗体にはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4の4つのサブクラスが存在し、それぞれ異なる免疫機能を担います。サブクラス分布を評価することで、抗体量だけでなく、誘導された免疫応答の質的特徴を把握することができます。IgG1優位の抗体応答は、細胞性免疫との関連が示唆される免疫プロファイルの一つであり、ワクチンにより誘導される機能的な免疫応答を評価する指標として用いられています。
LAH(Long Alpha Helix)
幅広いインフルエンザウイルスに共通する隠れた抗原領域の一つです。本剤は、通常のヘマグルチニン抗原を構造変化させることでLAHを露出させた改変型ヘマグルチニン抗原を含んでいます。
H1N1亜型
A型インフルエンザウイルスの亜型の一つであり、季節性インフルエンザの一つとして毎年流行します。2009年に新型ウイルスが世界的に流行(パンデミック)したことで知られています。
H5N1亜型
主に野鳥や家禽等に感染するA型インフルエンザウイルス亜型で、ヒトに感染すると高熱や肺炎などの重篤な症状を引き起こし、致死率が非常に高い「高病原性鳥インフルエンザ」として知られています。
医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)について
産学官連携により、我が国の力を結集し、医療現場ニーズに的確に対応する研究開発や創薬等の加速化等が抜本的に革新される基盤(人材を含む)の形成および医療研究開発分野でのオープンイノベーション・ベンチャー育成が促進される環境の創出を推進することを目的とする国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の事業です。
詳細は、【AMED】医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)をご覧ください。
住友ファーマとNIBNの共同研究「万能インフルエンザワクチンの研究開発」(代表機関:住友ファーマ)は、2019年にCiCLEの第4回公募の研究開発課題に採択されました。

