歯みがき行動により、インフルエンザウイルスに反応する唾液中の免疫成分「IgA抗体」濃度が増加することを確認

ライオン株式会社(広報部)のプレスリリース

―口腔内を清潔に保つことが、唾液本来の防御機能を発揮しやすくする可能性を示唆―

ライオン株式会社(代表取締役兼社長執行役員:竹森 征之)は、歯みがき行動により、インフルエンザウイルスに反応する唾液中の免疫成分「IgA抗体」濃度が増加することを明らかにしました。この結果は、歯をみがくことによって口腔内を清潔に保つことが、唾液が本来備えている防御機能を発揮しやすくし、インフルエンザウイルスの感染への備えに繋がる可能性を示すものです。 本研究成果は、2026年11月29日に開催される「第5回日本唾液ケア科学会学術集会」で発表する予定です。

図1.本研究の成果の概要(イメージ)

■研究の背景

2026年は、昨年より5週早い8月にインフルエンザの流行が始まるなど、感染対策を始めるタイミングにも変化が見られます。口腔はウイルスが体内に侵入する感染経路の1つであり、唾液は侵入したウイルスに対する最初の防御機構として働いています。唾液による感染防御には、抗体、ラクトフェリン、ムチン、リゾチームなど、様々な成分が関与しています。

当社は2025年に発表した先行研究において、歯みがき行動によって唾液のインフルエンザウイルス不活化能が向上することを、世界で初めて確認しました(※1,2,3)。しかし、歯をみがくことが唾液中の免疫成分にどのような影響を及ぼすのか明らかになっていませんでした。そこで今回は、唾液中の最も中心的な免疫因子である「IgA抗体」に着目し、歯みがき行動前後での「IgA抗体」濃度の変化について解析しました。

(※1)PubMed、医中誌WEBに掲載された原著論文に基づく(2025年6月23日 当社調べ)

(※2)ニュースリリース「世界初、歯みがき行動で唾液のインフルエンザウイルス不活化能が向上することを確認」2025年10月28日

(※3)Kubo Y et al. Enhanced anti-influenza virus activity of saliva following toothbrushing. :BDJ Open. 2025;11:68.

■研究方法

20~50代の健康な男女14名(う蝕・歯周病が無い方)の歯みがき行動前後の唾液(※4)を解析対象としました。今回の研究ではその唾液を用いて、インフルエンザウイルスに反応する唾液中の「IgA抗体」濃度を測定(※5)しました。

(※4)唾液採取前日23時以降は食事と口腔清掃をせず過ごしてもらい、翌朝午前9時に5分間の歯みがきを実施。歯みがきには当社市販のハミガキ、ハブラシを使用。すべての歯の頬側、舌側、咬合面をまんべんなく、普段と同様のブラッシング方法でみがいた後、10mlの水で口をゆすいだ。これらは先行研究※3で実施したものであり、本研究では、その際に採取した唾液を用いて解析を実施。

(※5)ELISA法で測定

■ 結果

測定した結果、歯みがき行動前と比較して、歯みがき行動5分後の唾液では、インフルエンザウイルスに反応する「IgA抗体」濃度が有意に増加したことを確認しました(図2)。

図2.歯みがき行動前後でのインフルエンザウイルスに反応する唾液中の「IgA抗体」濃度の変化

■ 考察

唾液中の免疫成分「IgA抗体」は、インフルエンザウイルスと口腔内細菌の両方に反応すると報告されています(※6)。歯みがき行動前のように、口腔内細菌が多い口腔環境では、多くの「IgA抗体」は口腔内細菌に反応してしまうと考えられます。今回の結果から、増えた口腔内細菌を歯みがき行動によって取り除くことで、唾液中の「IgA抗体」が口腔内細菌ではなく、外部から侵入してきたインフルエンザウイルスに反応しやすくなったと考えられます(図3)。

さらに、先行研究で確認された唾液による細胞への感染防御の結果とあわせると、歯みがき行動後の口腔内では口腔内細菌が少なくなり、インフルエンザウイルスを不活化できる「IgA抗体」濃度が増えるため、細胞への感染が防御されたと考えています(図4)。

(※6)Malamud D et al. Antiviral activities in human saliva. : Adv Dent Res. 2011;23:34–7.

図3.歯みがき行動によるインフルエンザウイルス不活化能向上のメカニズム考察
図4.先行研究で確認された歯みがき行動後の唾液による細胞への感染防御結果を示す顕微鏡写真

神奈川歯科大学短期大学部 副学長

槻木 恵一

プロフィール

1993年神奈川歯科大学歯学部卒業。1997年同大学大学院歯学研究科修了。2007年より神奈川歯科大学教授。2014年より同大学副学長(2025年3月まで)。歯科医師、歯学博士。専門分野は口腔病理診断学・唾液腺健康医学・環境病理学。NPO法人日本唾液ケア科学会理事長。

研究に関するコメント

唾液中の免疫成分「IgA抗体」に着目した本研究は、歯みがき行動と唾液の免疫力との関係を示す重要な研究成果です。「IgA抗体」は唾液中に豊富に含まれる重要な免疫成分であり、ウイルスに結合し、不活化させますが、口腔内細菌が多いと免疫力が十分に発揮されなくなってしまいます。本研究の結果から、「歯みがき行動によって口腔内を清潔にし、口腔内細菌を減らすことが、唾液の免疫力向上に重要である」と考えます。2025年に発表した研究では、歯みがき行動によって唾液のインフルエンザウイルス不活化能が向上する現象が確認されましたが、今回、その機能を担う可能性がある「IgA抗体」濃度の増加が初めて明らかになったことは、メカニズム解明へと繋がる研究の大きな進展です。人混み等の感染リスクが高い環境に備える口腔ケアの1つとして歯をみがくことが有用である可能性があります。うがいと同じように、感染症予防の一環として歯みがきを行う習慣が、社会に広く浸透することを期待します。


■今後の展望

本研究を通じて、日常の口腔ケアによって唾液の質を向上させることで、唾液本来の防御機能を発揮しやすくすることがわかり、全身の健康維持に寄与している可能性が示唆されました。当社では今後も、良好な口腔環境を保つ上で重要な役割を担う「唾液」に焦点を当て、口腔と全身の健康維持に資する新たな科学的エビデンスの取得を目指します。また、インフルエンザをはじめとする感染症への備えとして、従来から提唱されている「手洗い・うがい」に加え、「口腔衛生」の重要性についても、研究成果に基づいて広くお伝えし、新たな習慣の創出に繋げてまいります。

【第5回日本唾液ケア科学会学術集会】

〇会期   2026年11月29日

〇場所   東京工科大学蒲田キャンパス

〇演題   歯みがきによる唾液中の抗インフルエンザウイルスIgAの増加

〇発表者 ライオン株式会社 久保裕亮、小原幹太、岩本拓、物井則幸、牧利一

神奈川歯科大学 槻木 恵一

【関連情報】

・統合レポート

「オーラルヘルスケアの成長加速」

「ライオンの研究開発・知財戦略」

・ニュースリリース

「世界初、歯みがき行動で唾液のインフルエンザウイルス不活化能が向上することを確認」

2025年10月28日

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