唇の新知見:加齢でボリュームが減ると同時に筋タンパク質が減少筋タンパク質を強化する唇独自の細胞間ネットワークを発見

ポーラのプレスリリース

ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:釘丸和也)は、加齢とともにボリュームが減ってしまう唇について研究し、以下の3点を明らかにしました。
① 加齢によって、唇の筋線維を構成するタンパク質が減少する
② 唇由来の線維芽細胞と筋細胞のネットワーク※1を活性化することで筋線維を構成するタンパク質が増える
③ セージエキスとオオバナサルスベリエキスの組合せは細胞間ネットワーク活性化に関わるRNAを増やす
今回の発見を活用することで、加齢とともにボリュームが減る唇の筋肉に厚みをもたせ、立体的でふっくらした唇を実現できると期待できます。この知見は今後、ポーラ・オルビスグループの商品やサービスに活用します。
※1 情報伝達物質などを介した細胞同士の相互関係

  • 加齢で唇の筋線維のタンパク質が減っていた

年をとるにつれ、唇のボリュームが減ってしまうことが知られています。唇の中で大きな体積を占める、口を動かす筋肉※2の変化を調べたところ、加齢とともに筋線維の占める割合が減ってしまうことを発見しました(補足資料1)。さらに筋線維を構成するタンパク質※3の量も加齢とともに減ることを発見(図1)。唇のボリュームが減る一因として、筋線維を構成するタンパク質が減り、筋線維がやせてしまうことが考えられました。そこで筋線維状態の改善につながる方法を探ることとしました。
※2 口輪筋
※3 ミオシン重鎖タンパク2 (MYH2)

  • 細胞間ネットワークの活性化が、筋線維のタンパク質を増やす

これまでの研究から、皮膚では真皮に存在する線維芽細胞が周囲の組織にさまざまな影響を与えることが分かっています。また、唇は真皮と筋肉が隣り合う特徴的な構造をしています。これらのことから、唇の真皮に存在する線維芽細胞が筋肉に影響を与えている可能性が考えられました。
実際に唇由来の線維芽細胞を使った実験で確かめると、線維芽細胞の働きによって筋線維を構成するタンパク質が筋細胞で増えることを発見(図2、補足資料2の図4)。
さらに、タンパク質を増やす効果は線維芽細胞でRNAの一種であるLINC00942※4の発現量を増やすことで、より高まることが分かりました(補足資料2の図5)。このことから、唇由来の線維芽細胞に働きかけてLINC00942を増やすと、唇の筋肉の増加につながると考えられます。
※4 「ジャンク」と呼ばれるDNA領域から作られるRNAの一種。このRNAが多い線維芽細胞は周りの細胞の機能を高める
「『がらくた』と考えられていたジャンクDNA に宝」(2020年6月30日)
http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20200630_03.pdf
 

  • 唇由来の線維芽細胞に働きかけてLINC00942を増やすエキスを発見

LINC00942の発現量を増やすエキスを探索したところ、セージエキスとオオバナサルスベリエキスを組み合わせたものに効果を見出しました(補足資料3)。これらのエキスを使用した化粧品は、筋肉の厚みを増し、立体的でふっくらした唇を実現すると期待できます。
 

  • 【補足資料1】 唇の筋線維の加齢変化

さまざまな年齢の女性の唇を対象に、筋線維が占める割合と年齢の相関を分析し、加齢とともに筋線維が占める割合が減少することを明らかにしました(図3)※5。
※5 Int J Cosmet Sci. 2020 42(4):359-368 より改変

 

  • 【補足資料2】 唇由来の線維芽細胞が筋線維を構成するタンパク質の産生に及ぼす影響

唇由来の線維芽細胞の影響により、筋細胞における筋線維を構成するタンパク質MYH2の遺伝子発現は約1.3倍に増加しました(図4)。また、線維芽細胞のLINC00942を増やした場合、その作用は約1.6倍に高まりました(図5)。このことから、唇由来の線維芽細胞が筋細胞に働きかけ、筋線維を構成するタンパク質を増やすこと、またその作用にはLINC00942が関わっていることが示唆されました。
 

  • 【補足資料3】 セージエキスとオオバナサルスベリエキスの作用

セージエキスとオオバナサルスベリエキスを混ぜて唇由来の線維芽細胞に添加し、LINC00942の遺伝子発現量の変化を調べた結果、約2.2倍にまで増加することを見出しました(図6)。
このことから、これらのエキスには線維芽細胞を介して筋線維を構成するタンパク質を増加させる作用が期待できます。

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