【K-Beautyの立役者コスマックスジャパン×ベイコスメティックス社長対談】次はJ-Beautyが世界へ

株式会社ベイコスメティックスのプレスリリース

創業以来、年平均30%成長を続ける世界最大級の化粧品ODM・コスマックス。その日本法人コスマックスジャパンを率いる魚在善社長と、「売れるものから逆算する」提案型OEMとして急成長を続けるベイコスメティックスの早瀬本基社長が対談しました。Kビューティーの躍進を支えた構造、日本市場の壁、そしてJビューティーが世界へ出ていくために製造業が変わるべきこととは。

「製造の世界は1円、5円の原価を削る世界。マーケティングの世界は数千万、数億円。この感覚の違いを越えられるメーカーが、これからの市場を動かしていくと思います」(魚社長)

対談者プロフィール

魚 在善

COSMAX JAPAN株式会社 代表取締役社長。

韓国の化粧品メーカー出身。韓国コスマックスグループの日本法人として、日本のブランドへの処方・剤形提案を手がける。

早瀬 本基

株式会社ベイコスメティックス 社長執行役員CEO。

スキンケア・ヘアケアのOEM/ODMとして、安定性試験済みのバルクストックを起点にした提案型の製品開発を展開。国内に工場を構え、12月には大阪で5か所目の工場が完成予定。

※「――」は早瀬(ベイコスメティックス)の発言です。

創業以来、年平均30%成長。その裏にあった「3つの波」

――まず、コスマックス本体の現在地から伺いたいです。売上はいまどのくらいなんでしょうか。

昨年が日本円で約4,000億円弱。今年は約4,800億円規模になる見込みです。生産キャパシティが追いつかないくらいの状況ですね。

――5年ほど前は2,000億円くらいのイメージでした。この伸びの要因はどう分析されていますか。

創業以来、平均するとほぼ毎年30%成長です。大きく分けて「3つのチャンス」がありました。

1つ目は2000年代以降、韓国で1つのブランドだけを扱う路面店、いわゆるワンブランドショップが一気に広がった時代です。新しいブランドが次々に生まれましたが、自社ですぐに商品は作れない。そこで弊社に依頼が集まり、多くのブランドの立ち上げをお手伝いしました。

2つ目は、中国で韓国化粧品が売れた時代です。韓国メーカーが次々に中国へ進出し、中国と韓国の両拠点で受注が大きく増えました。中国法人は設立から20年ほどで、一時は日本円で800億円規模まで成長しています。

3つ目が、まさに今のKビューティーブームです。日本だけでなくアメリカや東南アジア、ヨーロッパでも広がるこの波を、製造面で支えられていることが現在の成長につながっています。

なぜ韓国からは、ブランドが次々と生まれるのか

――韓国でK-Beautyのスタートアップが次々と生まれているのは私たちも実感しています。何がきっかけで、ここまで参入しやすい環境ができたのでしょうか。

法制度の面もありますし、化粧品を作りやすい土台がもともとありました。そこにEC市場の急拡大が重なったんです。日本の化粧品はEC比率が1割程度だと思いますが、韓国はオンラインが約6割、オフラインが約4割です。

――オンラインが6割ですか。それはかなり珍しいですね。

Coupang(クーパン)、11番街、NAVER、MUSINSAのストアなど、オフラインがなくても十分に売れる市場ができあがっています。

少ない資本で参入し、製造はODMに任せ、あとは自分たちのマーケティング力さえあれば売れる。そこにanuaやmedicubeのような成功事例が出てきて、若い世代が「自分にもできる」と次々に挑戦しているんです。

――製造側のプレイヤーはどのくらいいるんですか。

化粧品OEMの業界団体だけでを15,000社ほど。町工場のような規模から中堅まで幅広くあります。そのなかで、弊社や韓国コルマー、コスメカコリアなど上位の数社が市場の大きな部分を占めている構造です。

――それだけの数があると、内需だけでは成り立たないですよね。

無理ですね。韓国は化粧品に限らず内需市場が小さいので、製造も含めて最初から海外市場を念頭に置いてビジネスをするのが当たり前なんです。

「提案は喜ばれる。でも、その先が続かない」日本市場の壁

――ベイコスメティックスはいま4期目で、工場を増やしているところです。コスマックスジャパンも4期目と、弊社と同じくらいの歩みだと思いますが、日本市場をどうとらえていますか。

振り返ると、最初は「韓国のやり方をそのまま持ってくればうまくいく」と考えていました。実際には韓国で製造したものを、日本のお客様にひたすら提案する形で3年ほどやってきたんです。

日本にない剤形や原料の提案は、皆さんにすごく喜ばれます。入り口としては強い。ただ、その次にいくつもハードルがありました。

――たとえばどんなハードルですか。

品質基準の違いです。韓国本社の品質マニュアルはしっかりしていて、米国FDAの監査にも対応しています。それでも、韓国では市場で問題にならないレベルの細かな点が、日本では指摘の対象になる。日本に届いてから追加の検査が必要になるケースもありました。

――日本のお客様は要求が細かく、基準も厳しいですからね。やはり日本国内に、自分たちでコントロールできる生産体制があるかどうかは、外資の企業として経営上かなり重要なポイントになるという事ですね。

おっしゃる通りです。良い提案でお客様を獲得し、満足していただき、リピートしてもらい、一緒に大きくなっていく。そのシナリオを日本で実現するには、国内で品質と納期をコントロールできることが欠かせないと痛感しています。

北米、欧州、中東。いま世界でJビューティーに「入る隙」が生まれている

――K-Beautyの拡大をみていると、内需だけではなく、そもそも海外に向けた商品開発が必須のように思います。その上で北米は今後も大きな市場になると思います。世界の化粧品市場をどう見立てていますか。

北米では、韓国勢の一時の勢いは少し落ち着いています。市場が大きいので一度当たれば売上は一気に伸びますが、そもそも話題を作るためのマーケティング費用が非常に大きい。

すでにマーケティング投資ができているブランドは、TikTokで話題になり、Amazonで売れて、その後にオフラインへ入っていく。きれいな構造ができています。一方で体力のないブランドは、Amazon止まりになってしまったりと全てのブランドが成功しているわけではありません。

――北米のオフラインというと、どのあたりになりますか。

Costco、Ulta、Sephora、最近ではTargetなどです。

小売側はK-Beautyをもっと入れたいけれど、まず話題を作ってもらわないと店頭では売れない。しかし既存の体力のある有名なK-Beautyメーカーは、すでに出店済み。そこでJ-Beautyの話が上がることがあります。「韓国だけでなく、J-Beautyもあるのでは」という動きが北米で出てきています。

その動きが半年ほど遅れてヨーロッパにも来ています。ヨーロッパは中東の方も多く、中東でもいまK-Beautyがブームです。彼らのあいだでも「同じアジアのJ-Beautyもいいのでは」という流れが生まれていて、私たちも日本の商品を海外につなぐソーシングの体制づくりを進めているところです。

――世界的に見て、J-Beautyが入っていく余地は今後もあると私も思っています。

絶対にあると思います。

――そこはぜひ、一緒に開拓していきたいですね。

弊社でも「BAYBRIDGE PROJECT(ベイブリッジプロジェクト)」という海外輸出の取り組みを始めています。

最初は自分たちのブランドで試しました。シャンプーの「emplir(アンプリール)」は、台湾最大手のECモール「momo購物網」のシャンプーカテゴリで、発売から2か月で売上ランキング1位を取りました。美容液の「CAPSULE SERUM」も、momoの美容液カテゴリで1位になっています。

やってみてわかったのは、日本のブランドが海外に出られないのは商品力が足りないからではない、ということです。

国ごとの規制に合わせた処方、薬事申請、現地向けのパッケージ、そして売り場の商談及び確保。越えなければいけない壁が多すぎるんです。そこで、処方開発と製造は弊社の国内工場で、現地の薬事やパッケージ、売り場の開拓は提携先と一緒に、まとめて引き受ける形にしました。

いまは台湾から始めて、香港や東南アジア、その先の北米まで広げていくつもりです。

「いいものを作れば売れる」の限界。製造とマーケティングの間にある溝

――これまでの日本のOEMは、お客様に「これを作ってください」と言われたものを実現する、いわば純粋な工場でした。韓国は提案型で、面白いものを自分たちで作り、マーケティングまで支援しているイメージがあります。

私たちベイコスメティックスでも、売れるものから逆算して提案し、売れれば次の発注につながる。その好循環を作ることを大事にしています。

まさにこれからOEMが進むべき道だと思います。K-Beautyがここまで伸びた背景には、マーケティングに強い意識を持った会社が生き残ってきたことがあります。

弊社にもOBM(Original Brand Manufacturing)という部署があり、ブランドコンセプトや世界観、キービジュアルをサポートする体制を整えています。ただ、商品が売れる仕組みまで作る部隊は、正直まだ強くありません。

――それは意外です。てっきりそれも整えているから、多くのK-Beautyが世界中に伸びているのかと思っていました。

製造業とマーケティングでは、DNAが違うんです。

製造の世界は、原価を10円、5円、1円単位で下げていく世界。一方でマーケティングの世界は、数千万、数億円の投資をする。製造畑が長い人ほど「なぜそこにそんなにお金をかけるのか。いいものを作れば売れるのでは」と考えてしまう。

私自身はもともとブランド側のメーカーにいたので、マーケティングの重要性はよくわかっているつもりです。その考えを持って、働けることは非常に有利な点になっていると思います。

――日本は特にその考え方が根強いと思っています。もちろん、品質にこだわることやいいものを作ることは大前提です。そのうえでマーケティングで認知やプレファレンスを獲得しない限り、人に使ってもらえず、評価もされない。

その通りです。私たちがお手伝いできるのは、この商品がなぜいいのか、なぜ今この剤形なのか、市場のどこが空いているのか、という根拠をデータとしてお渡しすること。どう訴求すればお客様に見てもらい、買ってもらえるのか。

実は、私が本当にやりたい方向性は、まさにベイコスメティックスさんがやっている方向性なんですよ。

――ありがとうございます。「どうやったら売れますか」というのが、お客様の一番の悩みですからね。そこに課題意識を持って提案することを、私たちは一番大事にしています。

韓国のスピードの正体は「意思決定」「品質基準」「研究開発」

――韓国は企画から生産までのサイクルが非常に速いと感じています。日本との明確な違いはどこにあると思いますか。

大きくは、お客様自身の意思決定の速さと、品質基準の考え方です。

日本の大手メーカーだと意思決定の段階が多く、商品開発が「これはいい」と思っても、品質部門の基準や稟議で何度も調整が入ります。インディーブランドは、オーナーが「これでいく」と決めたら一気に進む。自分の世界観で、確信を持ってマーケティングしていくんです。

品質基準で一番大きいのは安定性です。日本では3年保証をどう担保するかが基本で、加速試験にも半年ほどかかります。韓国では、作った段階から1か月見て問題がなければ開発を進め、発売直前までに3か月見て問題がなければ進める、というスピード感です。

――大きくスピードが異なりますよね。私たちもその体制を実装していて、そこが他社と違う一番のポイントだと思っています。

私たちは安定性試験も容器テストも済ませたバルクを常に100個ほどストックしていて、それを提案しています。採用されたら他社には出さない。だから採用決定から納品までが圧倒的に速いんです。

韓国の大手も同じで、事前準備で速さを作っています。さらに、その処方がどの国の規制までカバーできるかを原料段階からデータで持っている。世界で売る前提だからです。

――新しい処方がたくさん出てくると思っていて、ジェルの中にクリームの粒が浮かんでいるような、日本からはなかなか出てこない剤形も、韓国からはどんどん生まれますよね。

弊社は研究員が世界で約1,300人、韓国だけで400人以上います。年間で一定数以上の処方を作るKPIがあり、特許を取れば評価にもつながる。

毎月、会長と全役員の前で研究員が剤形のアイデアを発表する「新商品戦略会議」があって、面白いものはそこから安定性試験に進みます。会長が創業時から研究開発を重んじてきた文化が土台にあります。

――研究員同士が競い合う仕組みがあるんですね。私たちも研究体制を大きく強化していて、毎週月曜日に研究から新しい処方が上がってくる体制で企画開発を回しています。

「業界を変えたい」。日韓の作り手が描く協業のかたち

――私たちはスキンケアとヘアケアが中心で、メイクは自社工場を持っていません。クライアント様から「韓国ならできますか」という相談もよくいただくので、アクセスできる先があればと思っています。

私もぜひ組みたいと思っています。特に、日本で医薬部外品をやりたい韓国のメーカーさんは多い。部外品の知見を持ち、なぜ売れるかもわかっている御社をご紹介できればと思っています。逆に、私たちが獲得したお仕事を一緒に作っていただくパターンもありえますね。

――部外品はいま特に力を入れています。誰でも使える汎用処方ではなく、1社と組んでオリジナルの処方を作っていく。研究員も増員し、原料メーカーと組んだチームも立ち上げています。今後部外品のスピード開発事業に投資していきます。

韓国でいま売れているブランドの代表を見ると、ほとんどが30代の創業者です。一方で、韓国も日本も製造メーカーはパブリックカンパニーが少なく。昔ながらの「いいものを作れば売れる」というプロダクトアウトの考え方に偏りがちです。日本の製造メーカーも同じ構図だと思います。

御社のような会社が出てきて、お客様が喜び、市場が動けば、業界全体も変わらざるを得なくなる。そこまで一緒に持っていきたいですね。

――化粧品業界は、まだまだ変えられると思っています。私たちのような会社が新しいことをやって、業界に波を立てる存在でありたい。

品質基準についても、グローバル基準のようなものをcosmaxとベイコスメティックスが示し、多くのOEMに賛同してもらって、それを武器に世界へ出ていく。そうやって日本のブランドを、もっともっと世界に届けたいと思っています。

いま、ちょうど国も業界を変えようと動いています。いい風が吹いていると思うんです。そこをぜひ、ご一緒できればと思います。

実は、本社の副会長にも御社のことを紹介したいと思っているんです。

――ありがとうございます。近々弊社のメンバーと韓国に伺わせてください。副会長はじめ本社の皆様とにお会いして、今日伺った研究開発の仕組みや新商品戦略会議のような場が生まれる現場を見させてもらい、弊社と御社の研究チームで意見交換できればと思います。

もちろんです。お待ちしています。

――その前に、12月には大阪で5か所目の工場が完成します。竣工式にはぜひいらしてください。

ぜひ伺います。

――本日はありがとうございました。

※記載の数値は取材当時のものです。

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